前田建設ファンタジー営業部

PROJECT 08 前田建設ファンタジー営業部 「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編 PROJECT 08  前田建設ファンタジー営業部  「劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいのか」編

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第3回:出撃! 山田さんって正しいですか!?(後編)

前回までで、山田さんの案である「水」から「土」の方が、防御力の確保として正しいことが証明されたってことで良いんですよね。
「JSOLファンタジー営業部」の力をまざまざと見せつけられたね。
しかし、「土」の部分ではもう少し、我々の方でも検討をしてみたいな。JSOLさんのお邪魔にならない範囲で。
JSOLさんの解析能力と、前田の「土」のセンス、そろそろミックスせなな。
ま、センスだけじゃなくて、学問の裏付もあるわけだけどね・・・。今日はやけに強気じゃないか。
じゃ、まずはJSOLさんの、今回の解析における「土」の考え方を教えてください。
「土」をどないなモデルにして計算しはったか、っちゅうこっちゃね。山口さん、今回もお手柔らかにたのんます。
JSOL山口さん
今回はどのような種類の「土」が衝撃を一番吸収するのか、それを検証した方法を説明したいと思います。まず下の図を見て下さい。

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JSOL山口さん
ここにあるように「土」の種類を、質量や密度、粒子の直径や形状の数値を変えることで表現しています。ところが、これら要素≒パラメータは、我々の持っている計算ソフトでは直接的に扱うことができません。そこでソフトで受け付けられるパラメータの中で、「摩擦」や「動きに対する収まり具合」の係数に目をつけ、これらの数値を入力したんです。
なるほど。摩擦係数という代替数値を変えることにより、異なる「土」を表現したんですね。
例えば、「B主任がいかに気前のよい男か」を直接的に数値化することができないので、飲み会で「これまでたくさんDにおごった金額」を入力するのと同じやな。
それ、おごった金額から、僕に借りていてまだ返してない各種金額も引くなりしてもらわないと、正確じゃないですねぇ。
JSOL山口さん
(少し遠い眼差しで)ま、そんな感じです・・・で、「土」の粒子径を変えると、土の粒子と粒子の間にできる空間に差が出るんですが、上の図でイメージできますか?
わかりますよ。当然、大きい土粒子は大きな隙間ができてしまいますよね。
JSOL山口さん
そうなんです。となると仮に同じ数の土粒子を集めても、集まった「土」の体積は・・・。
異なりますよね!
そりゃ、あの3人を、それぞれ同じ数だけ並べた絵を想像すりゃ、何となくわかりますわ。

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この3人が複数、集まった図ですか
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOL山口さん
そうなんです。粒径を変えて計算する場合、容量に差が出ないようにしないと評価が難しくなりますから、異なる粒径の「土」における計算前の高さが一緒になるよう、全て約4.3mに統一してあります。
げ、芸が細かい・・・。
確かに、比べる「土」が同じ高さでないと、実験結果に影響が出そうですもんね。
JSOL山口さん
あと、「土」の配置も少しやっかいでした。「土」の粒がきれいに整列しているなんて自然界ではありえませんから、幾何的に配置しなければなりません。
自然っぽく見せるようにでっしゃろ?
テストのとき、あてずっぽうで選択肢を書くにも、わざと非規則的に記号書くやんか。あれと一緒やね。
JSOL山口さん
さらに計算開始直後、わずかな時間に「土」は下に移動して積もるのですが、移動した時の重力や格納庫から受ける反力のため、「土」の粒がリバウンドしてしまったんです。
何も設定していない状態だど、土粒子がスーパーボールのように跳ねたと?
ピョンピョンしてしまうと?
JSOL山口さん
そんなピョンピョンはしないですけどね(笑)。現実の世界のスーパーボールが時間とともにバウンドしなくなるのと同じ効果を、減衰係数として、今回の場合は0.9をコンピュータに与え、30秒後には「土」が落ち着く≒止まるようにしました。ここをうまく設定しないと、衝撃を受けた時の格納庫床面の反力計算ができなくなってしまいますから。難しくまとめるとこんな風です。

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しかし、ガラダK7の角が与える巨大なエネルギーを、僅か4.3m厚の土で受け止めるわけですから、「土」全体が30秒間も上下に振動するのも解る気がしますな。
「攻撃を受けとめるための土粒子の空隙の有り様」なんて、普通の土木じゃまず聞かんですわ。
「土の締固め度合」で調整するんだろうね・・・。
JSOL山口さん
「土」は我々の専門分野ではないので、この辺りは「土」の専門家である前田さんの意見も聞きたいところです(笑)。
今、うちの専門家をホバーパイルダーで急ぎこっちに向かわせますんで(笑)、少々待っとってください。

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何人まで乗れるかが問題ですね、この場合
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOL山口さん
そしてこれが今回、粒子径や粒子形状を変えて検証した4種類の「土」になります。

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JSOL山口さん
あまり多く分けても仕方がないかと割り切ってます。
そりゃそうや。土の組み合わせなんで無限にあるからね。ニューフロンティアよね。
JSOL山口さん
まず基準となるケース1は、粒子半径を50mm、粒子の大きさは均一で、ゴツゴツした形状と設定します。
あ、「半径」なんですね・・・我々の業界だとまず直径なので、新鮮です。
かつ、デカいわな(笑)粒子が。でも、ようやってくださったわ。
JSOL山口さん
で、ケース2は粒子半径を基準の倍の100mmとしたもので、それ以外はケース1と一緒です。ケース3では粒子半径を25-75mmとバラバラな大きさに変えて、大きさを均一ではなく、不均一の状態としました。最後のケース4は、基準と同じ大きさですが、形状がゴツゴツではなく、理想的な球体にした場合としています。
すいません。この形状「ゴツゴツ」というのは、実際に一個一個、粒のモデルをゴツゴツの形にさせたってわけじゃないですよね?
JSOL山口さん
仰る通り、この「ゴツゴツ」というのは、あくまでも数値上の話になります。「土」の粒子、一つ一つのカタチを入力したら大変ですから。
いや、JSOLさんなら「やりかねん」と期待してましたわ(笑)
JSOL山口さん
いやいやいや・・・摩擦係数を変更することで、形状の違いを表しています。それが一番シンプルでやりやすかったんです。
僕とA部長の摩擦係数も「ツルツル」に変えられないかな・・・。
若いうちから、いきなり河口の石みたいに丸いのも(B主任に目配せし)、ねえ。
「ゴツゴツ」で行かんかい! 上司とぶつかり合って、鍛えられながら丸うなるんや・・・。若いのにいきなり、大福のように丸うて噛みやすく、イチゴまで入ってるような奴が多すぎるんや!

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この二人の摩擦係数もすごそうです。ぜひDVDをご覧ください
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

ケース2の粒子半径100mmだと、もはや岩を積み重ねた城壁みたいな感じだね。
JSOL山口さん
実はあまり小さいサイズにしていないのにも理由があります。「DEM」での計算は、ある程度粒子の大きさが無いと、時間や手間が大きく増えてしまうんです。
そりゃそうやな。細かければ細かい程、計算に時間や手間が掛かって当然や。
本業の合間にやっていただいてるんで、全く問題無いです。B主任の本業より素晴らしいぐらいですから。
アホやなお前は・・・俺は「働き方改革」を、誰も手を付けていない「業務の質を落としてみる」から始めるっちゅう、偉大な挑戦をしてるんや。
・・・それ笑い事じゃなくて、日本においては案外本質だったりして・・・。
JSOL山口さん
では、それぞれのケースによる衝突状況の変化について、実際にシミュレーションしてみたアニメーションをご覧ください。まずは、基準のケース1とケース2を比べたものです。
前回の「水」と同じように、今回も非常に分かりやすいね。
ケース2は、基準よりも回転が止まっている。粒子径が一番大きいからかな。やっぱり粒子径がある程度大きいほうが、衝撃を吸収してくれるのか。
JSOL山口さん
次に、基準とケース3、大きさが不均一のものを比べてみます。
JSOL山口さん
この結果で面白いのが、このケース3です。私も意外だったんですが、粒子が不揃いだと衝撃を吸収しきれずに、角ブーメランが結構回転しちゃったんです。
ほんとうだ。イメージだと、不均一の方が大きな土の粒子の間に、小さな土の粒子が入って密になっている分、しっかり止まってくれそうでしたけど違うんですね。
密でしっかりしているからこそ堅くなり、角は刺さらずに回転してしまっている。
堅くて刺さらんから力が吸収されず、上で跳ねる感じやな。
このような動きを付けてもらえると、細かい部分も良く分かるね。
・・・ほら、あーたのような上の立場の方がそないに『動き、分かりやすい』とか気楽に言うてまうと、以降の社内プレゼン資料が全て動画になりまっせ! それを変えないかんから、質を落としてますのや・・・。
いつも思うけど・・・Bのこじつけ力は天才的だね。
JSOL山口さん
最後は、基準とケース4になります。
JSOL山口さん
これら見た目では、さほど違いが分からないかもしれませんが、格納庫の底面が受ける反力で違いがわかります。それでは、角ブーメランが刺さった時の、格納庫床面の反力もご覧ください。

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JSOL山口さん
基準のケース1=青い線がそれぞれに表示されていて、各々のケースとの違いを確認できます。左上の「土無し」の黒線は、何も入っていない場合と考えてください。
それぞれ、基準となる青い線よりも黒い線が大きければ、それだけ格納庫床面に力が掛かっているということか。
JSOL山口さん
そうです。例えば「土無し」の場合、グラフが跳ね上がっている0.4秒辺りで角ブーメランがプール下に直撃し、反力が極めて大きく発生していることが分かります。それに比べ、ケース2はぶつかった衝撃を基準よりも早めに、かつ、やんわり受け止めていく印象です。
ケース3は、基準とほとんど一緒ですが、少しだけ早く反力が伝わっているんですね。
JSOL山口さん
粒子が不均一になると、粒子自体の動きが鈍くなるので、その分、床面に衝撃が早く伝わり、反力も少し早く発生しています。最後のケース4は、角ブーメランがぶつかった瞬間、球体の「土」がギュッと堅くなってしまい、反力が基準よりも高くなる、というところでしょうか。ここでは反力の大きさだけでなく、それぞれの粒子の形状によって、力の伝達速度も変わってくることに着目してほしいと思います。
ほら! 思うた通りや! 会社は丸いヤツばかりじゃ、イカンのや。
有難いことに今回の映画に関する書き込みでも、「部員たちがそれぞれ個性的で良い」なんて感想が多いんだよ。
映画館では前の席を蹴るなど、ゴツゴツせんと皆で仲良くギュウギュウ詰めで見てください。見るのは一人百回くらいでお願いしますよ。
JSOL山口さん
では、最後に分かりやすいよう、ケース1からケース4を並べて表示させてみましょう。
アニメーションと反力の結果を見る限り、ケース2が一番良い結果ということですよね? それなら、ケース2よりもっと粒子径を大きな物にすれば、衝撃吸収力も強くなるんでしょうか?
JSOL山口さん
粒子が大きすぎると、今度は衝撃による「割れ」等が発生する可能性が生まれてしまうので、かなり計算が面倒なことになってしまいます。現状、粒子の形状の変化は摩擦係数の違いでしか表しておらず、あくまで粒子径による間隙の違いのみを扱っているんです。
確かにそこまで考えて計算するんやったら、それこそ長〜い時間が必要になりそうや。あくまで、今回の仮説・設定に基づく範囲、っちゅうことですね。
土の「DEM」はとにかく手間がかかると聞いてる。その辺はウチの専門家に聞いてみよう。
JSOL山口さん
あと、先程の裏付的なデータになりますが、角ブーメランが飛んできたときの加速度応答を評価したものが、こちらになります。

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ん? これは何の加速度応答ですか?
そりゃ角ブーメランやろう・・・。
JSOL山口さん
先程と同じく、基準のケース1が青線で、そこに重ねて黒く表示してあります。ケース2やケース4は、加速度応答が大きい=角ブーメランが刺さって急激に止まっているのが読み取れますから、先程の反力の少なさも含めれば、ケース2が一番衝撃を吸収するという結果になりますね。
角を急激に止めてるのに、格納庫床面の反力も小さい、ケース2が最も優秀! ということで決定ですね。
JSOL山口さん
そういうことです。ここで、検証結果をまとめてみましょう。

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JSOL山口さん
以上が検証で分かったことです。とはいえ、先ほども申した通り、我々は「土」の専門家ではありませんので、「DEM」の適用についても前田さんがいろいろノウハウお持ちでしょうから情報交換して技術を高め合いたいですね。
・・・おい、こっちに向かっているっちゅうアドバイス要員は一体どうしたんや。ようやくウチの見せ場みたいやぞ。
もしかしたら、途中で厄介な仕事を拾っちゃったのかもしれませんよ。

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かなり厄介そうな仕事ですね
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

すんません、ちょっとウチの専門家が厄介な件に巻き込まれたみたいやから、続きは次回っちゅうことで!
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