筑紫トンネル#2

月進120m。切羽を開いて突き進む。

 前田JVは、筑紫トンネル河内工区を担当。平成14年1月、他工区より1年早く着工した。
 まず、全長738m、勾配8.5%、地上との垂直高低差約55mの斜路を掘削し、斜路から本坑へ、角度60度で掘り進んだ。坑口から約55mの高低差のある坑内に万が一、水が出たときは、最も低い交差部分が水没する恐れがある。
 現在この現場の湧水量は、1200m当たり毎分2.3t。この水は、この地域の大切な水源なので、トンネルを掘ったことで水を枯らすわけにはいかない。
 坑内には、坑外から工事用水を引くために送水管、坑内から出た清水と濁水を搬出するための排水管、計3本の配管を設置している。清水と濁水は、一旦それぞれの水槽に貯め、通常毎分10~12tの湧水をポンプアップして坑外に排出できる設備を整えた。清水はそのまま放流する。濁水は、濁水プラントに貯めて炭酸ガスで中和し、土砂を分離し、清水にして放流する。こうして工事で出た水を自然に帰す。

 切羽では、昼夜2交代制、掘削作業は6~7名編成で、大型重機車両を駆使して掘削している。
 脊振(せふり)山地は、2種類の花崗岩でできている。行く手には、2本並んだ大きな断層が待ち受け、トンネル上部には安良川が流れている。切羽から100mずつ水平にボーリングして地山の地質を調査し、穿孔時の油圧データを取り込んで、岩盤の強度や水脈をキャッチして掘削する。副所長の星野は「地山が私たちに何を物語っているかを、きちんと読まなければなりません。それが一番難しいですね」と語った。
 切羽には1~2m2に1個ずつダイナマイトを装填して破砕し、吹付けコンクリートを吹き付けて崩落を防ぐ。そのあとH型鋼(支保工)を取り付け、ネット状に組んだ金網を入れ込み、吹付けコンクリートを吹く。3~4mのロックボルトを地山に垂直に打ち込んで地山の緩みを受け止め、トンネルをしっかりと支えている。

 新幹線のトンネルは、幅が狭く、高さがある。幅の狭いヤードの中で、大型機械をスムーズに入れ替えて次の作業に移す。星野は「私の仕事は、14名の部下の調整と、発注者との協議です。安全を確保してトンネルの進行をあげ、年4回の検査をクリアし、品質の良いトンネルを提供することが目標です」と締めくくった。

 5月から、インバート(トンネル下部)を掘りコンクリートを打設する作業が始まる。8月からは、トンネル内部に防水のためにビニールシートを張り、その上にコンクリートを巻く仕上げ工事に取り掛かる。
 同時に、到達地点に向かって掘削作業も進行する。今期の目標として、月進120mを掲げている。

副所長 星野孝則

副所長 星野孝則

 

※切羽(きりは):トンネルの最先端の掘削面

所長 上村正人

新幹線筑紫作業所
所長 上村正人

 協力会社のみなさんには「トンネル掘削工事は地質変化により様々な問題が発生する可能性があるが、どのような状況の中でも淡々と掘り進むことができる技術力と精神力を備えてほしい」、職員には「九州で最長のトンネルを掘削しているという自覚を持って、協力会社の人たちと一緒に品質の高いトンネルを作ってほしい」と話しています。
 3年以上にわたり安全に掘り進めるために、指差呼称や重機車両移動前の合図を徹底し注意を促すなど、基本をしっかり身に付けて、仕組みを形骸化させることのないように、安全管理を徹底しています。
 さらに、センス良くモノを造ることを心がけています。坑口を躍動感のあるデザインで彩り、作業基地の松や滝のある景色も大切にして、潤いのある作業環境を整えました。

■前のページへ