北陸新幹線 足羽川橋りょう他#2

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関西まで延伸する北陸新幹線の福井県の入口

場所打ち杭施行状況

 大阪に向けて延伸を続けている北陸新幹線。東京から金沢まで繋がっている同路線を、現在、福井県の敦賀まで延伸する工事が進められており、その一角を当社が担っています。
 すでに工事が完了している福井駅の終点側から、駅周辺の市街地を通り抜け、桜の名所としても知られる足羽川を渡って住宅街を通過し、その先にある貨物駅の手前までの約1.4kmが、「北陸新幹線、足羽川橋りょう他」の工区となっています。
 主な工事の内容は、軌道を敷設するための高架橋と橋脚、それらを繋ぐ調整桁、そして橋りょうの施工です。それらの基礎部分については、場所打ち杭、鋼管ソイルセメント杭、そして2カ所のオープンケーソン基礎の3種類が選定されています。特に住宅街の近接区域などの用地の制約を受ける場所では、鋼管ソイルセメント杭が採用されています。
 基礎杭の工事はほぼ終了しており、順次、躯体を立ち上げていく段階です。ここからの作業の中心となるのが、福井市のシンボルのひとつにもなっている足羽川の橋りょう工事です。

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鋼管ソイルセメント杭 施工状況

外面にリブ(突起)が付いた鋼管を、地盤に造成したソイルセメント柱に挿入して一体化させます。大型の機械が必要であり、狭あい地での施工なので、その配置等については特に工夫が必要になります。

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足羽川への環境配慮

足羽川の現場では粗面仕上げできるテクスチャ付きの型枠シートを使用することで、コンクリートの打継処理に硬化遅延剤や高圧洗浄水が不要になり、高アルカリの洗浄水の流下を防いでいます。

新幹線足羽川作業所副所長 米原 大吾

新幹線足羽川作業所
副所長

米原 大吾

2018年から現場に入ったのですが、足羽川の橋りょうの工期の短さが大きな課題でした。スーパー桟橋を提案して立て直しましたが、現在の課題は、物資や人材の不足です。各所の北陸新幹線の工事の影響で、コンクリートや骨材、クレーンなども不足しています。工事が滞らないように、各所の協力を得て、日々調整しながら進めています。

河川の通年工事を可能にしたスーパー桟橋

スーパー桟橋完成直後

 この工区の特徴のひとつは、全線が北陸本線と併走しており、営業線近接工事となっていることです。列車の運行に支障になるようなことはもちろん、架線に異物を飛ばすようなことはあってはなりません。また、駅の周辺ということで非常に狭く、進入路や工事スペースの確保が厳しくなります。さらに、近隣に住居もあるので、騒音や振動などにも気を遣わなければなりません。そして足羽川に渡す橋りょうの工事においては、環境に対するさまざまな配慮が必要になります。
 このように厳しい条件が課せられた状況の中、大雪などの影響で工事の遅延が発生していました。しかしながら、開業時期は決まっており、工期を短縮する必要がありました。 そのためのさまざまなアイデアの中で、工期短縮を実現したのが「スーパー桟橋」の建造でした。
 足羽川での工事は従来、10月中旬から6月中旬までの非出水期のみとされていました。橋りょうの工事の際に設置する桟橋には支持杭が多数必要で、水の流れを妨げるため、河川が増水しやすい出水期はリスクがあるからです。そのため、6月中旬までには桟橋を解体し、10月中旬にまた組み上げる必要がありました。
 スーパー桟橋は、堤防をまたいで設置され、幅も12mと広く、作業用桟橋としてはかなり大型です。工事車両を堤防の外から直接現場に入れることが可能で、大型のクレーンを配置しても作業スペースが確保できます。また、支持杭に一般的なH鋼ではなく、より丈夫な鋼管を採用することで通常よりも広い間隔で支持杭を配置可能になり、水の流れを妨げない構造になっています。
 このスーパー桟橋によって、橋りょうの通年工事を実現し、大幅な工期短縮が可能になりました。

オープンケーソン基礎

オープンケーソン基礎

施工区間に2カ所のオープンケーソン基礎施工があります。ケーソンの傾斜計測や沈下計測の自動化を図り、高品質のケーソン施工を実現しました。

新幹線足羽川作業所工事係 加藤 楓

新幹線足羽川作業所
工事係

加藤 楓

入社5年目で、足羽川が初めての現場です。スーパー桟橋の設置から橋りょうの工事全般を担当しています。矢板から水が漏れたりと、河川での工事の大変さを体験しました。また、さまざまな職種の方と仕事を進める中で、現場の雰囲気の大切さも学びました。完成した橋りょうが、新しい福井の風景として溶け込んでくれたらと思っています。

モバイル通報状況

風力計設置情報

災害予知風速計

足羽川橋りょうの現場では、風で作業が左右される場合があります。強風時には設置された風速計から自動的にメールで通知されるようになっており、作業の安全性を高めています。

張出架設工法にさらにひと工夫

JR福井駅工事始点での高架橋型枠工事施工状況

 工期短縮のための工夫はほかにもあります。
 足羽川の橋りょうは、橋長192mで、4本の橋脚で支えられた3径間連続PC箱桁橋です。現在、橋脚上部の柱頭部の施工中ですが、河川上ので作業となるので、橋桁の施工には地面からの型枠支保工設置ができません。そこで、橋桁の施工には張出架設工法を採用する予定です。移動式の作業車を左右に設置して、橋脚を中心にバランスを取りながらヤジロベエの腕を伸ばしていくように橋桁を施工する工法です。ただし、この橋りょうの橋脚は、並行して走る在来線の橋脚に位置を合わせた結果、中央に比べて左右の側径間が約47mと極めて長くなっています。通常、張出架設完了後に側径間を施工しますが、長い分だけ多くの時間を要します。そこで、張出架設と側径間の大部分を同時施工し、張出架設完了後に残りの側径間を施工して、更なる工期短縮を図ります。
 このような工夫を重ね、福井での北陸新幹線開業に向けて、この先の建築工事や軌道設備工事に繋いでいきます。

施行中の足羽川橋りょう柱頭部

ミストシャワー

ミストシャワー

夏期施工期間には、作業員の熱中症予防のため、工事フェンスにミストシャワーを設置し、予防を図っています。

花火大会

花火大会

地元の福井フェニックス花火大会に協賛し、地域との結びつきを高めています。

 

新幹線足羽川作業所所長 益田 竜太

新幹線足羽川作業所
所長

益田 竜太

前田建設の発祥地で作品として誇れる仕事を

 新幹線の工事、特に駅の周辺などは多数の関係者が関わる大事業になります。土木工事の途中にも、建築工事などの関連工事が入ってきますし、自分たちの工事だけでなく、外部の動きもよく見ながら工程のことを考えていく必要があります。
 私が新幹線の現場を担当するのはここで3回目になりますが、新幹線の駅部での工事は初めてです。まだ完成は先ですが、高架橋などが目に見える形になり、駅のデザインなどが公開されると、近隣の人々の期待も感じるようになり、大きな励みになると同時に責任も感じます。
 福井は前田建設の発祥の地でもあります。福井の玄関口となるこの場所を前田建設のひとつの作品としても誇れるような、品質のいい仕事を残したいと思っています。

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