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ファンタジー営業部の人間は30代も半ばを超えた人間が中心のはずだが、今日ばかりは修学旅行生のごとくウキウキ大騒ぎしながらモノレールに揺られ羽田に向かう。お待ちいただいていたのは、こちらのお二人。
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ANA 客室本部 品質サポート推進室 品質企画部 主席部員 浅井 一郎 氏(右) ANA 客室本部 品質サポート推進室 品質企画部 大澤 典子 氏(左) |
©ANA |
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D職員: |
いや、今回は思いがけずもCAさんとお打ち合わせできることになり光栄です。 |
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B主任: |
うそや。お前、最初から言うてたやないか。「今回のプロジェクトはそれだけが楽しみ」て。 |
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C主任: |
しかし国際救助隊でも民間便である以上、CAさんに乗っていただく必要があるんですね。 |
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浅井氏: |
客室乗務員の搭乗人数(編成数)に関する取扱いは、国土交通省航空局発行の「運航規定審査要領細則」に基づき、飛行機の型式毎に一定の基準に従い適切に定めることとなっています。当社における国際線運航が可能な機材は、現在全て50席以上を有していますので、2階席がない機種であれば、いくつか考慮すべき点はあるものの「客席数を50で除した数(端数切り上げ)」が客室乗務員数の必要数になります。言い換えれば、「飛行機の客席数50席毎に1人の客室乗務員を乗務させること」が基準となります。 |
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B主任: |
「こんな客少ない便なら、スチュワーデス減らして、金安うせいよ」なんて文句言う、わかってない酔客とかいて大変でっしゃろ? |
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D職員: |
あ、それ、自分のことでしょ? |
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大澤氏: |
(無言でニコニコしている) |
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浅井氏: |
ところが今回はチャーター便扱いですよね。するとその場合は「客席数」を「搭乗旅客数」と読み替えることが出来ますので、お客様50人に対して1人の客室乗務員が乗務すればいいんです。 |
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C主任: |
搭乗旅客が1人だけの場合でも、CAさん1人必要ということですか。 |
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浅井氏: |
そうなります。ただし「運航規定審査要領細則」に基づいた社内規定にて「貨物のみを輸送する場合の取り扱い」として、社用航空券を有する者のみで、搭乗者数9名以下の場合は、客室乗務員は不要と定めています。 |
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B主任: |
てことは、ロボットや資機材だけをANAさん関係者に運んでもらう場合は、CAさんがいらん場合もあると? |
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浅井氏: |
そうですね。まとめますと救援物資などを輸送する目的での貨物チャーター便に、社用航空券を所持した者のみが搭乗するのであれば、搭乗者9名までは客室乗務員0名、10〜50名までなら1名、以降搭乗者が50の倍数を超える毎に1名追加で運航は可能です。 |
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D職員: |
各レスキューロボット1台に2人は必要な印象でしたね。搭乗者9名以下とは考えにくいかな。 |
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C主任: |
機長さんは機種ごとに資格が必要と教えていただきましたが、CAさんでも同様ですか。 |
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大澤氏: |
国が認めた社内基準が機種ごとにあって、それをパスしないと乗務できませんね。 |
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C主任: |
その理由は、主に緊急時の誘導などですか? |
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大澤氏: |
そうですね、ドア操作も異なりますし。 |
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D職員: |
あの、何て言うんでしょう、「食事作る場所」も違う感じですよね。 |
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大澤氏: |
そうですね。ギャレーと呼びますが、あそこも違いますよ。 |
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D職員: |
大澤さんはどのくらいの機種に乗れるんですか? |
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大澤氏: |
今、ANAで飛んでる飛行機は全て*6です。 |
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C主任: |
CAさんの雇用体系も以前とはずいぶん異なっていると聞きますが。 |
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大澤氏: |
当社の場合ですが、まず契約社員で3年、4年目に長期社員となります。よくドラマなんかに出てきますけど、ペーパー試験や実技訓練センターでの試験もありますね。国内線と国際線の差は主にサービス訓練になります。分かりやすいところでは「英語」ですよね。 |
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B主任: |
そういや、よく「この中にお医者様いらっしゃいませんか」てなシーンがドラマにでてますけども・・・ |
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大澤氏: |
結構お医者様が搭乗されているケースは多いですね。 |
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B主任: |
ほんじゃ機内でオペとか出産立会いとかのご経験がお有りでっか? |
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大澤氏: |
それはないですけど、鹿児島から北海道への乗務の時、急病の方がいらっしゃって、名古屋空港にダイバート*7したことはあります。 |
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C主任: |
お医者さんがいなかった場合は大変ですね。 |
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大澤氏: |
航空機には主に客室乗務員が使用するMedical Kitや簡易薬品などのほか、医師が使用する注射器などを含むDoctor’s Kitや医療器具が入っているResuscitation Kitが搭載されていますが、お医者様でなければ最後の2点は使用できません。 |
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D職員: |
CAさんが通常されているこういった関係の訓練はどのようなものですか。 |
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大澤氏: |
心肺蘇生とAED(自動体外式除細動器)*8ですね。 |
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B主任: |
うちの現場といっしょやな。今、思いつんたんですけれども看護師資格をお持ちのCAさんていらっしゃるんですかね。 |
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大澤氏: |
いると思いますよ。社として教育しているわけではありませんが、転職で入社した者や個人ベースで取っている者がいる可能性はあります。 |
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C主任: |
その方は国際救助隊の隊員決定ですね。 |
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D職員: |
(ナース資格を持つCAさんか・・・マニアな人にはたまらんだろうな) |
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大澤氏: |
それから当社は国際線においてはMedLinkを導入してまして、機内で急病人が発生した場合、必要に応じて米国のMedAire社から、無線などを通じてご病気の方への医療アドバイスを24時間受けられるようになってるんです。 |
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B主任: |
そりゃ、まんま国際救助隊に導入してもいいくらいやね。 |
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C主任: |
ところで、国際線で楽しみな「機内食」なんですがね、あれは、そのギャレーで作るわけですか。 |
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大澤氏: |
そうですね。機種によっても異なりますけど、オーブンで焼く場合もありますし、あるいは通路でお客様にお配りする「カート」の中で予め温めることのできる「ヒーティングカート」というものを使うときもあります。 |
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B主任: |
ヒーティングカートは便利そうやね。 |
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大澤氏: |
ただそういった機能が付いていることもあって、カート自体に結構な重量があります。 |
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D職員: |
重い? |
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大澤氏: |
そうなんです。特に機種や条件にもよりますが、基本的に飛行機は水平飛行時でも若干機首を上げて飛行していますので、となると延々と登り坂を押しながらサービスすることになります。 |
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C主任: |
ハードワークですね。 |
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B主任: |
食事でたまーにやけど「チキン」いうても「ビーフしかありません」って言われたりしてがっかりすることありますなぁ。 |
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D職員: |
あ、やっぱり典型的「感じの悪い客」だ。 |
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大澤氏: |
申し訳ありません。 |
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浅井氏: |
路線毎にどのような配分で食事が選ばれたかという傾向は把握しているのですが、なかなかお客様の嗜好ですので難しい面もありまして。 |
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大澤氏: |
やっぱり外地発は和食が多いとか、そういうノウハウの蓄積も進んでるのですが。それは申し訳ありませんでした。 |
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B主任: |
いえいえ。皆さんの苦労もよーう分かった。海外旅行やと、たとえエコノミーでもこっちは奮発しとるさかいに、ついついCAさんにもムッとした態度、とってまう時ありますな。反省や。 |
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大澤氏: |
機内食の話で言えば、機内に出張等で社員が搭乗してたりすると、その分をバッファ(緩衝器)としてより多くのお客様のお好みに応えることが出来ますね。 |
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(ここで今回のANAさん側インタビューの全体コーディネーターであるANA総研の堀口さんが口をはさむ。)
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すべてのインタビューにお付き合いいただいた堀口さん(左端) |
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堀口氏: |
そう。もう社員なんてね、機内食選べない。「これでいいでしょ!」「はいっ」の世界。
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大澤氏: |
(笑いながら)そうですよね。当然お客様最優先ですから。 |
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堀口氏: |
俺、隣のお客様に心配されたことあるもの。「あんた、何かしたの?」って。 |
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(一同爆笑) |
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B主任: |
いやいや、ご苦労でんな。 |
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C主任: |
被災地で、このギャレーを利用して被災者や隊員や暖かい食事を供給することは可能ですか。 |
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浅井氏: |
(検疫上の問題をクリアしたと仮定して)搭載する機内食には品質保持期限がありますので、その期限内であれば可能です。あくまでお配りする方が空港のすぐ近くにいらっしゃるというのであれば。もっていくまでに多少冷めるとは思いますけれども・・・。 |
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大澤氏: |
量的にも座席数×2が最大ですね。 |
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C主任: |
そうか、あまりいいアイデアじゃなかったか・・・。 |
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D職員: |
いや、でもANAさんの機内食、エコノミーでもおいしいから場面によっては喜ばれますよ。 |
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B主任: |
そやな。疲れた隊員さんたちにはええ気分転換になるかもしれんし。ま、ANAさんお得意の「お湯」も段取りしてもらってやな。 |
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一通りインタビューが終了すると、ANAさんのご厚意で、CAさんの控え室を見せていただけることとなった。喜びと緊張が入り混じり落ち着かなくなる部員達であったが、着いてみると目に入ってきたのは・・・
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どれが誰のだか、わからなくなっちゃったりしないんでしょうか |
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C主任: |
いや壮観ですねえ。かばんとCAさんだらけ。 |
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浅井氏: |
朝など便数がもっと多い時はこれより多いですよ。 |
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B主任: |
戦場やな。 |
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D職員: |
CAさんを一度にこれだけ大量に見たことがないもので、なんか落ち着きません。 |
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浅井氏: |
ここに配属される男性社員も、最初はみんなそう感じるようですよ。 |
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撮影中も、多くの人に声をかけられては、笑う様子が印象的でした |
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ANAさんでは常にお客様に顔を向ける企業グループでありたいとの思いから、常に太陽に顔をむける花「ひまわり」をシンボルに「ひまわりプロジェクト」を実施されている。よく見るとこの写真でも後ろにひまわりがあるのはそういう訳だ。浅井さんも大澤さんもまさにその通りだったなぁと、帰りのモノレールで確認し合うファンタジー営業部員達であった。
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