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PROJECT04 世界初、民間国際ロボット救助隊を創ろう編 パート6:これがロボット救助隊の姿だ(前編) page02
ロボット救助隊の「腕」と「脚」
以前ご説明した通り、各大学のレスキューロボットは要救助者の「探索」を主眼に開発されており、発見後の救助作業そのものは<レスキューチーム>の腕次第となるが、そこで建設機械が大変な戦力になることは、例えば東京消防庁さんが現在も真っ赤な建機を保有されていることからも明らかである。
しかし我々が難しいのは建機を飛行機に搭載できるとしても、現地空港から被災地までの搬送問題である。そこでコマツさんが提案してくださったのが、このスケッチのような8輪車タイプの専用重機であった。
公開後この機械に対する反応は大きく、F営業部員達自身もその後の設計検討について大変楽しみにしていた。待ちきれない思いで久しぶり荒川、石橋の両氏を、コマツさん本社に訪ねた。
C主任 C主任: 前回の専用重機のスケッチは大変反響があったのですが、その後、どうなりましたか?
石橋氏 石橋氏: あのスケッチを基本に、大きな方向修正も無く、検討を進めてきましたよ。
荒川氏 荒川氏: バリエーションがちょっと増えましたがね・・・これが図面になります。
高速移動時
こちらは高速移動時。アームをコンパクトに格納し、移動しています。
©コマツ
現場作業中
こちらは現場作業中。アウトリガを張り出し、アームを展開した姿です。
©コマツ
D職員 D職員: まずこの「タイヤ式8輪」がどういう経緯で決定されたか聞かせて下さい。
荒川氏 荒川氏: 空港から被災地までいかに高速に移動できるかという要素に加え、不整地での走破性をも併せ持たせる、ということですね。レスキューロボットでもおなじみのクローラではスピードが出ません。かと言って4輪では泥濘を走れなかったり、トラクション伝達においても不利ですからね。
B主任 B主任: すると、私みたいなアマノジャクな素人は「6輪でもええやないですか」と考えたくなりますのやけれども。
荒川氏 荒川氏: 過酷な状況ですからね。場合によっては2〜3輪程度のパンクも覚悟すべきと思いましてね。この車両はノーパンクタイヤを装備するので、ちょっと矛盾するようですが。
D職員 D職員: なるほど、そういう利点があるんですね。
石橋氏 石橋氏: 不整地でも8輪各々の伸縮ストロークを大きく取れば、クローラ式には及ばないまでも、向上させられますからね。
B主任 B主任: なぜクローラ式ではいかんのでっか?戦車なんか結構速い聞きますけど。
石橋氏 石橋氏: 乗り心地が悪いなど、長距離移動に向かないんです。道路へのダメージも少なくないですからね。今回、設計においては高速道路での移動を考慮しています。
C主任 C主任: なるほどよく分かりました。ところでこの車の操舵なんですが、前2軸が動くということでよろしいのですか?
石橋氏 石橋氏: いえ、全輪操舵です。
D職員 D職員: それは同位相ですか?逆位相ですか?
同位相  逆位相
同位相 逆位相
©前田建設
石橋氏 石橋氏: どちらも考えています。だから平行移動も可能ですし、大柄な車体の割に転回も楽になります。
荒川氏 荒川氏: どちらの機能も、特に災害地では重宝すると思います。
B主任 B主任: それはその通りやな。カニのような横歩き*1もできるし、逆位相では狭い場所での転回が楽や。
石橋氏 石橋氏: もちろん高速時の安定性にも考慮しますよ。
C主任 C主任: さっき伸縮ストロークというお話が出ましたが、これも油圧ですか?
このあたり若干難しくなるのだが、このマシンでは各輪に油圧式の独立サスを採用し、ストロークを大きくとる。この必要値については詳細設計が必要だそうだが、例えば15cm〜30cmといった範囲であれば問題なく実現できるとのこと。
サスペンションのロックが可能な作業機付マシン用サスペンション
サスペンションのロックが可能な作業機付マシン用サスペンション
©コマツ
そして「車高調整機能」も備えさせる予定だそうだ。この機能は単なる車高の上下だけでなく、不整地走行において車体を極力フラットに、かつ一定高さに保つという機能であり、被災者搬送時に大きな威力を発揮するだろう。もちろん隊員の疲労軽減にも役立つ。
乗り心地重視の輸送専用マシン用サスペンション
乗り心地重視の輸送専用マシン用サスペンション
©コマツ
現在でもコマツさんでは様々なタイプのサスペンションを開発、実装させており、この機械においても、これらサス技術を発展させて装備させる予定とのこと。
D職員 D職員: つまり乗用車的に説明するなら「油圧アクティブサスペンション付8WD」ということですね。
荒川氏 荒川氏: 細かいところに目をつぶれば、まあそういう言い方もできますかね。
石橋氏 石橋氏: 正確には8輪独立懸架ハイドロニューマチックサスペンションです。
B主任 B主任: 各輪への「動力伝達」は乗用車のようにシャフトでっか?
石橋氏 石橋氏: HST*2、でやろうかと思っています。ドライブシャフトが不要になるため、タイヤ下のクリアランスが大きく取れる点ですね。
ドライブシャフトとディファレンシャルギア HST
©前田建設
C主任 C主任: エンジンについては直列6気筒水冷式インタークーラーターボとありましたが・・・
石橋氏 石橋氏: 既存のラインナップから選んでいます。当社のエンジンは[ecot3](エコットスリー)という最先端テクノロジーを投入していまして。
ecot3
エコロジー・エコノミー・テクノロジーからの造語です。
©コマツ
荒川氏 荒川氏: トラックなんかのエンジンに比べて建設機械用エンジンは高回転・高出力領域における排出ガスの低減が求められるんですね。そのための技術が投入されている*3んですね。
石橋氏 石橋氏: 今回は出力330kw(450ps)級、排気量15.2Lタイプの採用を考えています。
出力330kw(450ps)級、排気量15.2Lタイプ (イメージ図)
こちらはイメージ図(CG)であり、正式に今回採用するエンジンとは異なる
©コマツ
D職員 D職員: 大きなエンジンですね。するとマシンへの搭載位置が難しいのではないですか?
石橋氏 石橋氏: その面はありますね。
D職員 D職員: 例えば一部の自動車で行っている水平搭載とかは?
荒川氏 荒川氏: 確かに鉄道車両で直6を横(水平)積みしているものがありますから。技術的に対応は可能ですが。救助隊で使うわけですから、荷質も広く取りたいですからね。
石橋氏 石橋氏: しかし、いくら設計を詰めていっても、荷質の広さには限界がありまして、前回お話したとおり、運転者1名、作業機オペレータ1名のほかに6名しか載せられないんです。そこで基本は同じにしながら運搬専用のマシンも設計しました。「バリエーションが増えた」とはこのことです。
荒川氏 荒川氏: 前回、ANAさんも747貨物専用機のFタイプと同じく747の貨物乗客併用のコンビタイプと2機体制ということでしたから、それを参考にさせていただきました。
石橋氏 石橋氏: これですとロボット等の積載余裕をみて、3人×4列シートで12名(運転手含む)まで乗せることができますから、機動性はかなり上がります。ロボットの運搬および充電基地としても考えています。
輸送専用タイプ8輪車
こちらが輸送専用タイプ8輪車
©コマツ
C主任 C主任: オリジナルというか、作業機付は、コックピットが二つありますけど、これは?
石橋氏 石橋氏: 進行方向に向かって右が運転席、左が作業機運転席という設計です。ご要望とあらば、逆でもかまいませんが(笑)。
進行方向右側運転席のイメージ図
こちらは進行方向右側運転席のイメージ図
©コマツ
左側の作業機運転席のイメージ図
こちらは左側の作業機運転席のイメージ図
©コマツ
D職員 D職員: この作業機のアームは走行時かなりコンパクトに収納されるんですね。
荒川氏 荒川氏: そこはこの石橋が苦労して、リンクをダブル、シリンダーもダブルのとした多関節機構にしてますから。
多関節機構
ここが細かく折れる工夫
©コマツ
荒川・石橋の両氏がアームとアタッチメントに施した工夫はこれだけではない。災害現場での迅速なアタッチメント交換を実現するために、本作業機は象の水浴びのごとくアームを背中の収納庫へ伸ばし、脱着をそこで直接行うことができる設計になっている。ゆえに3つのアタッチメントは若干ながら扇状に収納されていることになる。
扇状の収納により、アームを伸ばすだけで着脱が短時間で可能になっている
扇状の収納により、アームを伸ばすだけで着脱が短時間で可能になっている
©コマツ
また当然ながら本機械はラジコンでも操作できるようになっており、被災者の近傍で目視確認を行いながら、アタッチメントを確実に操作可能なのは述べるまでも無い。 (*搭乗操作・遠隔操作を状況に合わせて選択できる仕様とする。)
仮想現実技術により、こんなオペレーションも可能な日が来るか。
仮想現実技術により、こんなオペレーションも可能な日が来るか。
©コマツ
B主任 B主任: このメガネとグローブで遠くにおっても作業できれば、危険なとこで、ええですなぁ。ロボットのオペレーションにも使える技術や。
D職員 D職員: そうそう、未だに理解できないのは油圧および空気圧の供給という項目ですね。油圧は全ての系統が同じ圧力で送られるわけですよね。
石橋氏 石橋氏: それはそうです。「油圧の接続口は3つ装備しましたよ、ただし、同時に3つ使用するとなると、更なる検討が必要になりますよ」ということですね。
B主任 B主任: 油圧を一方的に送るだけで、その先につける機器は問題なく動くんやろか。
石橋氏 石橋氏: バルブによって油圧がON/OFFできること、および機器側で正転/逆転/止めができれば、問題ないですね。
C主任 C主任: オンワードさんの制服検討時に「クーリングスーツ」という、隊員さんの熱策として服の中に保冷材を仕込んだり、冷却水をパイプで循環させるといった事も議題となったのですが。
荒川氏 荒川氏: やろうと思えばできますよ。冷却水の供給ですよね。水温、流量などをどうすればいいかだけお教えいただければ。ただケーブルが数多くつながったままで、隊員さんが救助しやすいか否かは個人的に疑問だな。
その後、コマツさんから本救助隊の神経系統に関する提案がなされた。それはKOMTRAX(コムトラックス)。
車両にGPS、通信器が装備されており、稼動位置・稼働状況・コンディションなどの車両情報を、お客様ご自身がインターネット経由で管理できる建機稼動管理システムである。車両の情報をインターネット経由で管理するため、定期整備部品のタイムリーな交換や、万一の異常発生時にも迅速・的確な処置を可能とするものである。
Webで建機の場所・稼働状態が一目で分かるKOMTRAX
Webで建機の場所・稼働状態が一目で分かるKOMTRAX
©コマツ
本ロボット救助隊ではこれを発展させ、
1. IRSの各ロボットや、隊員、果てはANAさんの飛行機までの状況を一元管理(総合オペレーションセンターは747Fコンビ内か?)
2.被災者発見後の位置データおよびトリアージ作業に基づく搬送の効率化
などが実現できる。さらにはANAさんのOCC(オペレーションコントロールセンター)と統合すれば、国際ロボット救助隊にふさわしいシステムとなろう。なお、最終的なカラーリングについてはANAさんの専用機に合わせたいとのお二人のご要望もあり、来月公開させていただこうと考えている。

最後にコマツさんが、既にこのロボット救助隊のコンセプトに合致した活動をされているので、それをご紹介したい。

「人を守るためなら、機械だけが、行けばいい」

こういうビジョンの会社に属する二人の技術者だからこそ、今回のご尽力につながったのだと確信するF営業部員達であった。来月はANAさんの専用機、オンワードさんの基地内制服、日本における基地の概要など、盛りだくさんでフィナーレを迎えます。

次回ファンタジー営業部 国際民間ロボット救助隊編「Part06 これがロボット救助隊の姿だ(後編)」12月25日(月)クリスマスの公開。どうぞお楽しみに。
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カニのような横歩き:*1
正確にはサスペンションの構造上、「真横」には移動できない。「斜め」である。
HST:*2
Hydro Static Transmissionの略。油圧ポンプと油圧モータを組合わせた油圧駆動の走行方式。エンジンで油圧ポンプを駆動させ、その油圧により油圧モータで走行させる。走行負荷に応じて、けん引力と車速を無段階に変え、エンジンパワーを最大限に引き出すことができる。
そのための技術:*3
詳しくはコマツさんホームページへどうぞ。
 
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