理由を理解して施工に当たることが重要BIMのメリットも実感(所長談)は、あえて隠さない仕様になっています。さらにパーツは、ひとつひとつの形状が異なったり、設置位置が徐々に変化しているものなど、こだわりのある意匠が多くありました。このようなこだわりある意匠設計に対しては、その実現に向けて常に一歩踏み込んで対応した結果、お互いのコミュニケーションが進み、高品質で納得できる施工ができました。大谷石は宇都宮市北西部で採掘される石材として、全国的に知られています。まさに同市を象徴する素材です。コンベンション施設では、主に西・南側の外壁に大和貼りという工法で使用しています。大谷石は強度がそれほど高くない石材のため、これほど大々的に外壁に用いられた実績はありません。そのため補強するための設置方法や耐久性の向上に関して、設計担当のAISと長期にわたる検証を行いました。また大谷石は、それぞれ採掘場が異なる5社のものを使っています。場所が異なると、当然強度なども違うのですが、検査はあえて、強度が比較的弱いもの2つを選んで行っています。試行錯誤の結果生まれたのが、大谷石の裏面をステンレスのプレートでカバーするという手法です。そして強度などの検査は、一般財団法人建材試験センターに依頼しました。 試験種類の検討からスタートし、検査を始めるまで8カ月。そして検査を行い結果をまとめるのに6カ月を費やしました。大型かつ公共性の高い建物ということで、入念な検証を実施しました。 結果、大谷石の外壁は条件を無事クリアし、施工が実現しました。 大谷の山並みを再現したかのようなファサードが、宇都宮の東口に出来上がろうとしています。 この現場には、着工前から関わっています。おそらく、生涯に一度しか関われないかもしれない規模のプロジェクトなので、非常にやりがいを感じています。 現場でよく話しているのは、「物事には必ず理由がある」「その理由を理解しながら進めよう」ということです。特に今回の現場では、期待やこだわりに応えるためにも重要なポイントとなりました。 実際の手法に関しては、BIMの有効性を再認識しました。最初の手間はありますが、トータルの負荷や作業時間で大きなメリットが生まれました。宇都宮を象徴する大谷石を大々的に使用The Document of Maeda's Site宇都宮駅東口地区整備事業コンベンション施設新築工事4階施工状況(2022/4/25撮影)(2022/4/25撮影)宇都宮東口コンベンション作業所宇都宮東シ作業所宇都宮東口交流広場作業所統括作業所長 大内 昇アートテックパネル大谷石裏面をステンレスのプレートでカバー施工中の3階屋上の交流広場宇都宮東口コンベンション作業所佐藤 駿ここが初めての現場で、現在は防水・シールの施工を担当しています。研修で学んだことでも、実際の現場では苦戦することもあります。慣れないことが多いと受け身になりがちでしたが、今では積極的に情報発信できるようになりました。現場を経験し、普段、建築物を見る目も変わったように思います。細部のこだわりデザインには細部までこだわりがあり、施工まで細心の注意が必要です。例えば、入り口の内側と外側で枠のサイズが異なり、戸口が外から見えない意匠。パーツサイズなども複雑です。BIMステップ計画図最初にBIMでステップ計画図を作成するので、クレーンの位置取りや建方施工順序など、作業員にもわかりやすく、作業の確実性と安全性を共有できます。トラス鉄骨地組上弦材、下弦材、束材、ブレースからなるトラス鉄骨。レベル管理によるむくり(上側に反った状態)の調整などに注意しました。使用したボルトは2万本。1O
元のページ ../index.html#11