東京、文京地区の本郷通り沿いの新築ビルを特殊な工夫で施工していると聞き、現場に伺いました。工事現場を、一見してもその工夫はまだわからず、現場を田邉所長と畠中副所長に案内していただくと、その工夫を目の当たりにすることとなりました。「このビルは、1階から4階の角の一部にピロティ部があり、さらにその空間の角先端部分には肝心の柱が全く無いビルとなります。そのために、工事方法を綿密に検討して施工している現場です」とのこと。なにやら難しそうな気配です。現場は本郷通りに面した約半分は商業地域ですが、裏側半分は住居地域なので、建築物の高さや容積率の制限が異なります。しかも都心なので現場敷地には余裕が無く、それだけでも複雑でかなり難しそうです。「ビルの空間になる予定の角先端部分に、まず地下約32mの節杭を打ち、その上に空間部分の高さの仮設柱を建てて、空間上部の施工の支えとして使用します」とのこと。なるほど、この支柱は鉄骨工事期間中の主役ですね。完成前には取り払われるので少し心配ですが、全社的な技術支援のもと、建物の変形解析などで厳密に検討された賜物だそう。すごいですね!現場に伺った時は、主役の仮設柱にちょうど最初の横梁を設置していました。実はこの横梁は先端方面に約30㎜ほど微妙にせり上がる計画で設置しているとのこと。見た目には全くわかりませんが仮設柱を外した時に水平になる計算だそう。うわ、これもすごい!実はこの仮設柱は通常、山留め工事用に横向きで使用される部材なのだそうですが、この現場ではそれを縦向きに仮設柱として活用しているそうです。この思いも寄らぬ応用アイディアがすばらしい。また、狭い現場なので奥からの建て逃げ方式で工事をしていて、施工中にクレーンの大きさを変える工夫もあるそうです。確かにクレーンが敷地ギリギリで動いています。このビルのピロティ部は、発注者の「ここ文京の地に、日本の未来を切り拓く、有能なイノベーション企業と共存し、新たな創造拠点をつくりたい」という想いを象徴しているそうです。前代未聞の挑戦に、あらゆる努力と経験で立ち向かう姿はまさにヒーローの集団ですね。ザ現場検SHOw向丘2丁目ビル作業所 所長 田邉浩司(右) 副所長 畠中雅英(左) 1111完成予想図工事名/新興出版社啓林館 東京支社新築工事発注 者/株式会社 新興出版社啓林館工事場所/東京都文京区向丘2丁目3−10工 期/2022.3〜2023.7設計・監理/安藤忠雄建築研究所工事規模/用途:事務所 規模:地上10階、地下1階、塔屋1階 主要構造:鉄骨造 一部 CFT造建建設設現現場場ににみみるるふふししぎぎなな真真実実、、意意外外なな種種明明かかしし・・・・イラスト&テキスト モリナガ・ヨウ1966年東京生まれ。イラストレーター、画文家。早稲田大学教育学部卒(地理歴史専修)、漫画研究会出身。主な著書に『モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた』『図解絵本東京スカイツリー』『築地市場 絵でみる魚市場の一日(第63回産経児童出版文化賞大賞受賞)』■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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