VIVOVA VOL.121 2023 WINTER
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歴史ある発電所の改修工事発電所の現場を知り尽くす見座発電所は、同じ高原川の上   ↑流に位置する■山発電所と共に、1954年に運転を開始しました。構造・機械類の更新時期が近づいていました。また、取水口のひとつである双六ダムは、ゲート4門を備え、出水時のゲート操作やパトロールなどで職員が24時間常駐する必要がありました。ダム管理と設備保守に多大なコストがかかることから、長らくダム管理の効率化が懸案となっていました。そこで今回の改修に合わせて、双六ダムをゲートレス化することにしました。なお、今回の改修工事による発電再開後は、国の固定価格買取制度(FIT)を活用することとしています。この見座発電所の工事は、水車発電機2台の取り替え、発電所につながる水圧鉄管の取り替え、ダムから水槽までの導水路の改修、そして双六ダムの改修となります。ダムの改修には、沈砂池や水路の新設、そしてダム周辺の道路の付け替えなど大規模かつ複雑な付帯工事が集中しています。また、斜度が49度の鉄管の取り替えは直下に国道が通っていることもあり、安全確保面で難易度の高い工事になります。さらに、河川内の工事は高原川の遊漁期間を避けて、11月から3月の冬季に限定される影響で、ダム改修がクリティカル工程となっています。そして、高原川はエメラルドグリーンの美しい流れで知られる清流で、流域の方々も誇りにしている川です。工事中の環境保全対策の中でも特に河川の水質には細心の注意を払っていく必要があります。大規模で難易度が高く、工期的にも非常に厳しい条件がある中、われわれの要望に応えられるプランを提案してくれたのが前田建設さんでした。2018年に発注を内示してから約3年にわたって、入念に設計計画を練りました。導水路の補強工法や、急勾配の水圧管路へのイ※ンクラインや構台の設置など、多くの技術提案をしていただきました。提案資料は工法によるコストや工期の比較など要点が簡潔にまとめてあり、感心させられました。広範な現場ですが、各工区には所長クラスの方々が配置されており、水力の現場経験が豊富な人材が多い印象です。このため、現場でのやりとりもスムーズで、地元とのお付き合いを含め適切に対応していただける安心感があります。加えて、本社設計部門のフォローも手厚く、工事内容の変更には対応が早く丁寧です。施工と設計がしっかり連携してやれることは、水力改修を多く手掛けてきた前田建設さんの強みであり心強く思います。この先も難しく工期の厳しい工事が続きます。安全最優先と施工品質の確保を徹底して、発電所の改修が立派に完成し運開を迎えられるよう期待しています。そして、地域社会と脱炭素化に寄与すべく、次の70年に引き継いでいきたいと考えています。長く活躍してきた再生可能エネルギー施設が施工前 双六ダム(2021/4)施工前 双六ダム(2021/4)施工前 水槽・水圧管路(2021/4)施工前 水槽・水圧管路(2021/4)建設当時の様子(双六ダム)建設当時の様子(双六ダム)建設当時の様子(発電所・水圧管路)建設当時の様子(発電所・水圧管路)建設当時の完成状況建設当時の完成状況双六川上流富山共同自家発電株式会社見座■山発電所工事所長渡邉 茂氏※傾斜面にレールを敷き、動力で台車を動かして資機材などを運ぶ装置。70年近くが経過し、老朽化した鋼70年の時を経て生まれ変わります

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