切り替えながら、段階の異なる作業を並行して進めることにしました。一部でまだ躯体工事をしているときに、別の区画では鉄骨を建てているといった具合です。なお、それらの複雑な工程の中に、プールの部材の搬入も影響しました。今回はコンクリートプールではなくステンレスプールとなっており、部材がかなり大きなものになっています。ステンレスパネルなどの大型部材をどのタイミングでどこから搬入するか、仮設開口の計画をしっかりと立てる必要もありました。トラスのスライド工法は、道路を挟んで建物の東にある駐車場用地に大型クレーンを設置し、建物の東端に大きなステージを組んでそこで1スパン分の鉄骨を組み、建物の西側からウインチで曳行します。屋根の鉄骨は「ダイヤモンドトラス」という特殊な立体構造の鉄骨になっていて、本来はすべて一気に組み上げないと変形してしまいます。そこで変形防止の部材を入れ、組み立ての際も支柱となる仮設ベントを入れて作業をしました。スライド工法の採用で、ヤードのえいこう確保以外にもいくつかのメリットが生まれました。トラスに組み込む空調配管ダクトや配線ラックも鉄骨と一緒に組んで、1スパンずつ進めたので、大がかりな足場を組む必要がなくなりました。また、屋根ぶきもスライド工法に合わせたチャレンジをしています。スライド工法の採用自体で直接的にコストが下がるわけではありませんが、これらのメリットを最大限に生かすことで、総合的なコストダウンにつながっています。 PFI事業ということで、建設だけでなく先々の事業について、事業会社として、仲間といっしょに考えるという場面が多くあります。SPC(特別目的会社)の組織のひとりとして参加することを常に意識するようにしています。また、この現場では現場をサポートする当社内勤部門「工務センター」もうまく機能しています。現場説明資料や教育資料、配筋写真用の黒板作成など、コア業務以外の作業に対応してくれるので、若手が雑務に追われることが減りました。 工事が進むにつれて、水泳関係者の方々の大きな期待がより強く伝わってくるようになりました。その期待にしっかりと応えたいと思います。スライド工法で生まれたメリットを生かす全国の水泳関係者の期待に応える施設に(所長談)TheDocumentof Maeda'sSite(仮称)草津市立プール整備・運営事業に係る建設業務草津プール作業所所長 西條弘之外観全景西面(2023/12/20)観客席段床のPCa施工50mプールに併設された観客席の段床には、PCa工法を採用。PCa部材を搬入して屋根の鉄骨スライド工法の実施と並行して施工し、工期短縮を図った。プール棟屋内施工状況(2023/6/3)屋内空間音響を整える特殊屋根材ステンレスプール50mプールはイタリア製の装置を使った可動壁、可動床を備えるステンレスプール。ステンレスパネルを立ててからシートで防水し、装置を設置する。↓屋根材施工鉄骨のスライド工法に合わせて、屋根材もスライドしながら組み上げる。成形機から屋根材を横移動するための大がかりな足場が不要となった。草津プール作業所副所長 福光哲郎スポーツ施設の建設は、アスリートにとっての目標となる場所を生み出すということでもあり、身の引き締まる思いです。当社はPFI事業としても関わっており、対外交渉などの場面が非常に多い現場です。周囲の要望などを伺いつつも、事業として成立させる点も意識しています。関係者が誇れる施設になるよう努力していきます。1O BIMの活用→BI屋根の鉄骨には「ダイヤモンドトラス」と呼ばれる立体構造を採用。複雑に入り組んだ鉄骨の製作や、ダクトなどの内部設備との取り合いの検討にBIMを活用。
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