HOTELSETOUCHNOTの計画地は、島の岬になっている部分で、細い農道があるだけの丘陵地でした。最初に苦労したのは、測量による建物の位置出しです。地形には起伏があり、作業スペースもなかったため、レーザー測量機を据える場所や視認性の確保に工夫が求められました。建設するのは、頂上部の「360」、そこから下がって三方を見渡せる「270」、半島の先端にある「180」という3つの宿泊施設と、海に面したテラス「90」です。英国の著名な設計事務所が手掛ける独創的な意匠は建築現場にとってチャレンジングなものでした。特に「360」は、うねった屋根や壁の曲線など、ひとつとして同じパーツがない構造です。元々は工事の終盤に作業予定でしたが、設計申請のスケジュールの関係で、最も複雑な「360」から着手することになりました。基礎工事に入ると、まずその複雑な形状に悩まされました。通常ならば長方形の建物に対して、図面を元に職人さんに伝えれば済むのですが、今回は特殊な形状のため、図面を理解してもらうために、現場に張り付きで常に打ち合わせや説明が必要でした。形状に加え、今回の建物を特徴付けているのが、「ラムドアース」という土壁です。土を型枠の中に積層し、圧縮して壁を形成していく伝統的かつ特殊な工法ですが、当社での施工事例がほとんどない初めての挑戦だったので、試作から始めました。島の土を使うというコンセプトがあったため、まず課題となったのは土探しです。必要なのは、強度を備えつつ、外観として設計者が求める色味や質感を持つ土でした。現場周辺の土を集め、配合や水分量、セメントの比率を変えながら計5回の試作を実施しました。ようやく理想の色と質感が得られ、それを基に本施工へ移行しました。施工にも手間がかかりました。コンクリートのようにポンプで圧送することができないため、すべての工程が手作業です。混合した土をバケツや一輪車で運び、型枠内に締め固めていきます。1日に施工できる高さは15〜20㎝ほどで、壁一周を仕上げるだけでも数日かかる工程でした。型枠は曲面形状に合わせた特注品を60㎝幅で3段用意し、下段から順に打設しては型枠を外して上に回す作業を、繰り返しました。また、壁には意図的に「波打つよAI施 試作を繰り返したラムドアースの施工複雑な地形の中に曲面で構成された基礎2690 施工状況(2025/4/26)90 施工状況(2025/4/26)990 施工状況(2025/4/26)26270 予定地270 予定地2270 予定地予定地180 予定地180 予定地1180 予定地36060 予定地予定地360 予定地360 予定地90 予定地予定地予定90 予定地90 予定地270 施工状況(2025/4/26)270 施工状況(2025/4/26)00 施工施工状状況況 022025/4 2626270700 施施工施 状況(状況(2022025/45/4/26/26))180 施工状況(2025/4/26)180 施工状況(2025/4/26)181800 施工状施 況況(2025/4/2 )6)25360 施工状況(2025/4/26)360 施工状況(2025/4/26)00 施工工状況状況 2025/4 )3636060600 施施工 (状況(状況(2025/4/4/26/26)26初期施工状況初期施工状況(2024/6/17)(2024/6/17)三原NOT A HOTEL作業所 課長前田 高志という特殊な建設現場です。そこには発注者のこだわりと設計者の夢が詰まっています。その理想を実現し、前例のない建築を現実にするため、何度も計画を見直し、知恵を絞って前に進んでいます。条件を満たしながら、コストと施工性を見極める力も問われる現場で、多くの学びがあります。o9ラムドアースの試験施工島の土を使ったラムドアースの施工では、色味の違いで積層を織りなしながら、風合いのある手触りを残し、同時に強度を保つ必要があります。土の種類や処理方法などの条件を変えながら、5回にわたる試験施工を行いました。ラムドアース 施工状況(2025/4/3)ラムドアース 施工状況(2025/4/3)
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