VIVOVA VOL.125 2025 SUMMER
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挑戦が続く現場で関係者すべての力を集め一歩ずつ進めていく(所長談)うな揺らぎ」を持たせる必要があり、職人と共に感覚を擦り合わせながら仕上げていきました。締め固めの強度と美観のバランスにも気を使いました。バイブレーターを多用すると表面が滑らかになりすぎ、逆に締め固めが足りないと構造的な問題が出てしまいます。※ ワンオフ : 「one-off」は、一度きり、あるいは一回限りのオーダーメイドのこと。その見極めは職人の経験に頼る部分が大きかったです。屋根の鉄骨工事では、すべての※    部材がワンオフで、段差のある曲面の形状のため、設計図を基にCADで立体化し、BIMを活用して干渉や収まりの確認を徹底的に行いました。空間の取り合いも非常に複雑で、施工図を描く段階で、設計者の意図を読み解く力が強く求められました。「360」の屋根は上下が重なる部分があって空間が狭く、通常の手順では施工が不可能だったため、地上で組み上げてから組み込むという特殊な手法を計画しています。佐木島は、フェリーでしか行くことができません。人員はもちろん、資材や重機などもすべてフェリーで運搬する必要がありました。そのため、運航ダイヤや積載量に合わせて毎日の搬入計画を綿密に立てていきました。25トンのクレーンが必要だったのですが、そのままでは運搬できないため、一部を分解してフェリーで運搬し、メーカーの立ち会いの下、現場で組み立てるといった工夫もしました。フェリーや道路は、島民の方々の大切な生活路線です。フェリーを利用する時間帯などを含めて、島民の日常に支障が出ないように配慮しました。この現場は離島にあり、資材運搬のルートや車両の重量制限だけでなく、未整備の道路など、移動だけでも慎重さが求められる場所です。そして若手社員が多い現場ですから、安全面の教育や、職人さんとのコミュニケーションも大切です。東京の大規模再開発とは異なり、ここでは職員が全工程を見ながら学べるよさもあります。しかし、その分負担も大きなものになります。初めての工法など、さまざまな挑戦が必要なこういった現場は、ひとつのチームだけでどうにかなるものではありません。本社や支店、設計、協力会社すべての力を引き出して初めて動くものです。だからここでの私の役目は、足りないモノを指摘して力を集め、現場を動かすことです。そうやって全員の力を借りながら、何とか前に進めているところです。生活路線に配慮した離島での施工T h e D o c u m e n t o f M a e d a 's S i t e N O T A H O T E L S E T O U C H I 新 築 工 事  三原NOT A HOTEL作業所所長  尾崎 公一 1O打設後ラムドアース「360」と「270」を担当しています。建物が三次元的な形状で通常の測量機器が使えず、すべて座標で位置を出しました。図面を見ただけでは職人さんが理解できないことが多く、ずっと張り付きで指示しています。ラムドアースの施工も試行錯誤が続き、型枠や鉄筋の組み方も特殊と“初めて尽くし”。現場でのコミュニケーションを密にして、乗り越えています。27090佐木島ではフェリーで現場に入ります。しかし、25トンのクレーンはそのままでは運 搬できません。そのため、クレーンを分解し、現場で組み立てて使用しました。現場全景(2025/4/26)三原NOT A HOTEL作業所金子 晃地盤改良急な斜面という不安定な場所で、地盤が思いのほか固く、さらに大きな岩が多く出てきたため掘削に時間を要しました。重機の積み替え桟橋補強島内の現場に続くルートには、いくつかの橋が架かっています。補強と幅の拡張工事を行い、重機が通過できるように処理しました。180360

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