VIVOVA VOL.125 2025 SUMMER
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山陽新幹線山陽本線呉線三原駅三原港糸崎港須波駅佐木港須波港佐木島佐木島重井西港向田港因島三原市因島生口島生口島島根県広島県山口県瀬戸内海愛媛県鳥取県岡山県香川県徳島県T h e D o c u m e n t o f M a e d a 's S i t e N O T A H O T E L S E T O U C H I 新 築 工 事  360 完 成 イメ ージ180 完 成 イメ ージ90 完 成イ メ ージASSOCIATE小池 良平 氏ARCHITECT星 衛 氏が、実際に佐木島に立ったとき、目の前に広がっていたのは、思い描いていた以上の魅力ある風景でした。その魅力を損なわず、地形に沿って建物を配置する──それが私たちの設計案の起点でした。 ヴィラは3棟、それぞれの視界の広がりに合わせて「360」「270」「180」と名付け、風景とo8BIG (Bjarke Ingels Group)完成予想図360佐木島の地形に寄り添いながら日本と北欧のデザインを融合する1809027090180270360270 完成イメージロケ ーシ ョン完成 イメ ージ 瀬戸内には特別な思いがあります。2012年にBIGのメンバーで社員旅行として日本を訪れた際、瀬戸内海の直島や豊島に立ち寄り、その風景の美しさに心を打たれました。以来、瀬戸内は特別な場所として心に残っていました。 ちょうどNOT A HOTEL SETOUCHIが計画中とのことでお話をいただいたのです建築の関係性を表現しました。この“キャラ付け”は、プロジェクト全体にメリハリを与える上でも重要でした。 設計思想の軸にあったのは、日本と北欧の文化の“対話”です。私たちはこの考え方を「ジャパンディ(Japandi)」と呼んでいます。日本のコンテキストを踏まえつつ、デンマークの設計で解釈し、最新のテクノロジーで実現していくようなイメージです。例えば、屋根には日本の瓦屋根に着想を得たリズム感を持たせつつ、それをモジュール化して太陽光パネルとして活用する。屋外と屋内のつながりを表現する障子の機能性を、現代の技術でガラスのスクリーンとして再解釈する。また、ここでしかできないものとして、佐木島の土を使った「ラムドアース」を採用しました。前例がなく難易度も高い挑戦でしたが、前田建設さんが、確かな技術と粘り強さでかたちにしてくれました。初めての試みを、現場の方々とICI総合センター(技術研究所)が連携して実現可能な状態にまで引き上げてくださる姿勢には、深く感謝しています。 毎回現場に訪れるたびに、描いていた理想に一歩ずつ近づいている実感があります。この地でしか生まれない建築を、訪れる人の記憶に残る体験として届けられるよう、最後まで丁寧に向き合っていきたいと思います。

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