前田建設ファンタジー営業部

PROJECT 09 前田建設ファンタジー営業部 「ロケットパンチ」編 PROJECT 09  前田建設ファンタジー営業部  「ロケットパンチ」編

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第1回:発射! ロケットパンチ!

心配やな。
何がですが?
良かれと思って連載した『土質屋山田』編、やはり読者の皆さん、完全に置いていってしまったようや。
映画的に言えば『宇宙に連れてっちゃった』と。
(D職員を指さして)お前がいかんのやで。お前が今回の連載のコンセプトを「映画はマジンガーや建設を知らない方でも十分楽しめる内容なので、本家Web版F営業部では16年前の本分である『わかっていただける人にだけ強い炎をともすようなものにしましょう』なんてゆうからや。
でも、今回の連載も、我々とJSOLさんの間では大降り上がりですから!
・・・映画を見るべきか、見ないでおくべきか、参考にするため本サイトを訪ねていただいた皆様。こちらWeb版はある意味『プロ仕様』でして、今後の日本の技術を担っていただく学生さんへのエールを送る内容となっております。
ですので、映画は間口広いですから、安心して劇場へお越しください。
・・・でも、こんな告知をさせていただけるということ自体にやっぱり感動しちゃいますよね。
本当やねぇ・・・ありがたいこっちゃ。
さて、本題に入りますよ。今回いよいよロケットパンチの検証ということですね!
ロケットパンチ的な武器はその後のアニメでも事欠かないからねぇ、検証結果によっては全アニメファンの皆様を敵に回してしまうのではないかと心配だけども。
大丈夫やて。JSOLさんはその辺もようわかってらっしゃるから・・・。
JSOL山口さん
はい。マジンガーZの代表的武器ロケットパンチを検証することで、マジンガーの材料である「超合金Z」の強度を明らかにしたいと思います。
いやぁ!これ以上ない『ど真ん中』な解析ですよね。ワクワクします!
俺はさっき言った通り、ドキドキに一票だけどな笑
そもそも、今回の映画のタイトルもど真ん中やないか。『前田建設ファンタジー営業部』やで!?ウチの現場事務所にF営業部の映画のポスター貼っておいたら「うわー凝ったPRポスターで素敵ですね。映画のパロディですね?」って言われたらしいで・・・。
・・・全力で否定してくれたんですよね、その現場のウチの職員?
どれだけの予算使えば、こんな豪華なキャストさんをポスターだけに使えるんでしょうね?
ファンタジー営業部もまだまだ知名度低いってこっちゃ。
その点JSOLさんの『バーチャル実験2課数値解析班』は伸び盛りやからね・・・(JSOL山口さんの方を見て)持ち上げてますよー!
ちなみにマジンガー初心者の皆様のために説明すると、「超合金Z」とは、『日本の富士裾野にしか存在しないジャパニウムという架空の鉱物から生成される金属で、金属結晶の原子の並び方の乱れ、すなわち格子欠陥のない金属(現実にはミリサイズしか存在しない)で、極めて堅牢な金属』ということです。(引用:「超合金Z」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』
Dがウィキペディアから引用なんて珍しいな。いつもならアニメに占領された脳みそDBからペラペラ引用するのに。
アニメ解説でも読者の皆さんを宇宙に連れて行かないように、中立な方が良いかと思いまして。
まぁ、ものすごく固い金属っちゅうことやね、「超合金Z」。そもそも、ロケットパンチにも、斧の刃を付けて敵を切り裂くアイアンカッターとか・・・
斧って・・・マジンガーファンの皆さん、納得していただけますかね?
(気にせず続けて)高速で腕を振り回す遠心力により貫通力を増大させた大車輪ロケットパンチとか、いろいろなバージョンあるしな、やること一杯や・・・。
JSOL山口さん
そこまで色々できるかは自信ないですが・・・というのも実はこのロケットパンチの検証、「土質屋山田」編の前に着手してたんですけど、これから説明するケースだけでも時間が掛かってしまいましたので。
そうですよ!働き方改革の時代ですからね。むやみに仕事増やしちゃいかんですよ。
JSOL山口さん
今回は『バーチャル実験2課数値解析班』のタキと一緒解説をさせていただきます。
JSOLタキさん
よろしくお願いします。今回の目的は、ロケットパンチの解析を通じて、「超合金Z」の材料物性値、すなわち、どれぐらいの剛性、強度を持っているのかを明らかにすることです。お見せはできませんが、こんな動画まで作成しちゃってます。
(秘密の動画を見て)こ、ここまで・・・マジンガーへの愛情が伝わりますねぇ。
これや。こういった熱気がファンタジー営業部の原動力なんや。権利的にはNGやけど(笑)。
読者のみなさんには、心の中で、想像して楽しんでいただきましょう。
ロケットパンチだけは、解析結果を示す上でも必要だから、誠実にお願いしてみよう。。
JSOLタキさん
ちなみにこれは「土質屋山田」編で汚水処理場のCGを作った人間が作りました。なぜ、ここまでのモデル化が必要になってくるのかは、後々明かしますので。
今回もモデルからは逃れられないんですね。
そりゃそうだよ。モデルがなかったら解析できないじゃないか。
JSOLタキさん
解析では、まず攻撃を受ける側=機械獣ほかを「一般的に使われている鋼材の強度」としました。
怒るでぇ、ドクターヘル。「一般の鋼材とは何事や!」って。
ドクターヘル、大阪弁じゃないでしょう?
JSOLタキさん
鋼板にロケットパンチをぶつけた際の衝突計算を「超合金Z」の強さを変えながら行い、ロケットパンチの変形度合を見ながら「超合金Z」の剛性、強度を想定するんです。
変形度合ってのが難しそうやね。
クシャとしたロケットパンチ、見たくないですもんね。
JSOL山口さん
そうです、その考え方がこの後のキーになりますよ。
???
ちなみにJSOLさんでは、本業でも材料強度の逆解析をやられたりするんですか?
JSOL山口さん
ほとんど無いですね。一応、高分子樹脂等の複合材の強度を探るのに、材料物性を探ることはしますが、金属については初めての経験です。
確かに必要性がないよね。使用する金属の強度なんて既に解ってるから設計できるんだし。計算した後に、必要な強度の金属を開発することってないよな笑 メーカーも困るだろうしね。
JSOLタキさん
解析に使うソフトは前回の格納庫と同様、汎用の有限要素解析ソフト「LS-DYNA」を使います。解法自体も陽解法の「FEM」ですから、
・・・あ、読者が離れていく様子が見える・・・
自分が解らんのを、読者のせいにしょったな。
JSOL山口さん
要するに「土質屋山田」編の格納庫のFEMと同じ解析になるということです。そしてこれが、実際に解析に使用したロケットパンチのモデルです。

画像

指や手首の関節はモデル化していません。一体となっています。

JSOLタキさん
今回、マジンガーZの右腕の前腕部分をモデル化対象にしており、「FEM」のメッシュモデルを作成しました。内部も、本来であれば光子力エンジンなどメカを再現するべきだったのでしょうが・・・
まあマジンガーファンの数だけ、内部メカも異なるでしょうから、
今回は密実なものにしたと、そういう訳ですね?
JSOLタキさん
はい。フォローありがとうございます。中身もメッシュ化していますから、解析結果を確認することはできます。

画像

これは指先までぎっしり、金属で詰まっているということですよね? 中空ではなく。
JSOL山口さん
そうです。今回の検証では、間接などの稼働部は考慮せず、一体型になっている想定で行っています。可動部分を考え出してしまうと、本業以上のコストが掛かってしまいそうですので(笑)。
原作でもガツンと効きそうな、こんなロケットパンチもありますし、ガツンと一体化で行きましょう!

画像

とにかく凄そうだというのは伝わります
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOLタキさん
モデルは簡略化しましたが、その他は原作に忠実に解析しています。その1つが速度。ロケットパンチは「マッハ2」で飛ぶという設定ですから、前腕が常に「マッハ2」に保たれるよう、強制速度を定義して検証を行います。
なるほど、ロケットパンチは「マッハ2」で飛び、半径2kmの範囲なら自由に誘導できるっていう設定があったはずですから、それに忠実にあれということですね。
JSOLタキさん
速度の次は、攻撃対象の強度ですね。
これは先ほど教えていただいた通りに「一般の鋼材」とした?
JSOLタキさん
そうです。今回ベースとした鋼材は「SS400」という、ポピュラーなもの。「鋼材」と聞いて最初に思いつくものですね。使用される分野も自動車だけでなく、橋などの土木ほか、多岐に渡ります。
「SS400」の機械獣・・・
なんか違和感あるけどね:苦笑
JSOLタキさん
はい、色々思うところはおありでしょうが・・・鋼板の厚さは30cmにしています。
30cm定規1つ分・・・結構厚いですね。
JSOLタキさん
世の中にある厚い鋼板を使っているモノは何かと考えると、戦車や艦船が思い付くのですが、その厚さがだいたい30cmだったので、それを採用してみました。
JSOL山口さん
ミサイル等、当たった瞬間に爆発する兵器は多いですよね。でもロケットパンチは爆発しない。ロケットパンチという固い金属の塊がぶつかり、運動エネルギーのみで相手にダメージを与えるということで、第二次大戦頃の砲弾をイメージした感じですね。ちなみに戦艦大和の特別厚い装甲でも50cmぐらいらしいですよ。
当時最大級の大和でも50cmだから、30cmを貫通できれば問題無いってことですね。機械獣の大きさ的にも、厚さ30cmぐらいが妥当な気もします。
JSOLタキさん
鋼板のサイズは6m×6m、厚さは先程の30cm。解析に際して、4つの辺は完全に動かない状態と設定し、この板の中心にロケットパンチを当てていきます。なお、鋼板の物性は「SS400」のままで、パンチ側をどんどん硬くしていく流れですが、鋼板にロケットパンチが当たった際、鋼板におおよそ23%程度のひずみ量が発生すると、貫通を模すため、鋼板に穴が空くという設定も入れてあります。

画像

JSOLタキさん
ロケットパンチの材料物性値(強度)の変更方法ですが、まずはこのグラフを見てください。

画像

JSOLタキさん
横軸が応力を、縦軸がひずみ率を表しています。グラフのヤング率と降伏応力をスケール倍していくことで、強度を上げていきます。
・・・あ、また読者がページを離れていくクリック音が・・・
つまり、このグラフの直線部分をドンドン増やしていくことで、超合金Zの強度を考えていくということですよね?
JSOLタキさん
そうです。最初の直線の部分、この傾きを「ヤング率」と言って、降伏点に至るまでの傾きになるんです。要するに、ここまでが「弾性域」という範囲になり、この間で変形する分には「永久変形」が残らない領域になります。
ここまでに収まる変形であれば、金属が元の形に戻ることが出来る。その範囲が「弾性域」ということでしょうか?
JSOL山口さん
そうなります。この「弾性域」までなら問題ありませんが、ここから降伏応力を超えて変形を始めると、「塑性域」に入ってしまうので、自力で元には戻れない「永久変形」が残った状態になってしまうということです。
そうか・・・さっきD君が言った「クシャとしたロケットパンチ、見たくないですもんね」というのは、図らずもロケットパンチが使用後も変形しないよう、機械獣に当たっても「弾性域」にとどまるような金属にしないといけない、と指摘してたんですね?
JSOLタキさん
そういうことです。解析を繰り返して、クシャっとならないスーパーSS400、つまり「超合金Z」を見つけていこう、その際の「スケール倍」が「超合金Z」の物性を示すということです!
ロケットパンチは1回使って終わりじゃないやろうし、毎回変形したら困るやろうから、「永久変形」が残らん方がいいに決まってるがな。
打った後、ちゃんと元の場所に戻ってくる場面も多いですしね。使う度に弓教授が「マジンガー、これが新しいパンチだ!」って投げ付けてくれるわけないですしね。
それ・・・アンパンマンの顔やがな(笑)。
JSOLタキさん
はい(笑)。ですから、ロケットパンチの変形は「弾性域」内に収める必要があると思っています。最初は「SS400」と同じ特性で計算を始め、それでロケットパンチが「永久変形」してしまうようであれば10倍、100倍というように、スケールの倍率をどんどん上げていく形で検証を進めます。
検証の仕方はだいたいわかったで。ほんなら次回、実際の検証結果を見させてもらうとしますか!
楽しみですねえ。
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