前田ファンタジー営業部 前田ファンタジー営業部
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PROJECT04 世界初、民間国際ロボット救助隊を創ろう編 パート1:現実世界での初仕事
ロボットを中心とした救助隊を創るという機会を与えてくださった方々と
それに無償ながら手を上げてくださった方々と
こうして、このホームページをお読みいただいている方々に感謝すると共に、
このWeb上の「仮想だが現実に即した試み」が、
今後、不幸にして災害にあわれてしまった方々の被害軽減はもちろんのこと、
日々、命をかけて救助に携わっている方々の安全にも少しでも繋がればと、
ささやかながら、
しかし強く、願っております。
Project04は拒否?
梅雨空の飯田橋はもうすぐ昼だというのにどんよりと暗く、たまに行く鮮やかな色の傘だけが目を引いている。お堀端の桜並木沿いに立つ前田建設はファンタジー営業部でも、外から聞こえる雨特有の車の音と、学生さんの笑い声と、そしてキーボードを叩く音以外は聞こえない静けさであった。
ところでファンタジー営業部とは何かをご存じない方も多いと思われるので説明すると、厳しい建設業界で唯一手付かずの新市場が、毎週のように構造物が壊されては再建されるという「アニメ・マンガの中の世界」であると気付いた弊社が2003年2月に新設*1した、ちょっと変わった営業部である。部員は4名。
 突然、電話の音が静寂を打ち破り、受話器をいち早く取ったのが、いつもの新入社員でなく、なぜか最年長のA部長だったのは、それが新しい、大きな仕事の幕開けであることを暗示していたのかもしれない・・・ところで、その受話器をとったA部長の様子が変である。
A部長 A部長: はい、前田建設ファンタジー営業部で・・・エ、エ、エ、エート。ウ、ウエイトプリーズ。
B主任 B主任: どないしたんや。「ウエイトプリーズ」て、今時の中学生からも、なかなか聞かれへんで。
C主任 C主任: 海外からダイレクトインかな?うちではめずらしい・・・いや、初めての事だね。
D職員 D職員: しかもアジアからならわかりそうなもん*2だけど、英語圏らしいし。
C主任 C主任: いやアジアの国でも案外電話は英語だよ。お互いブロークンの。
A部長 A部長: ・・・お、おいすまないが、国際支店にこの電話、急いで転送したいんだけど、何番?
電話を受けた国際支店の職員によると、電話は「知る人ぞ知る」とある世界的大富豪からのもので、その用件は「日本をベースに民間の国際救助隊を組織したいので、その初期費用と出来ればランニングコストを算出してほしい」という内容であった。当然、なぜ日本で、なぜ前田なのかの議論になった。
A部長 A部長: そこはその依頼者、案外クリアでね、日本なのは「ロボット」を中心にした国際救助隊にしたいからなんだそうだ。でだ、ウチに話が来たのは「ロボット&格納庫建設」でWeb検索かけたら、2番目にウチの名前が出たと・・・。
B主任 B主任: ほんまですか。よーう外国の方がわざわざ日本語で、しかも日本の検索エンジンで検索してくましたな。
D職員 D職員: 嬉しいといえばその通りですが、一方ではProject01で「ウチはマジンガー本体を作れないから、基地を作るんです」ってさんざん説明してきたつもりだったんですがねぇ。
B主任 B主任: あー、可愛げのないやっちゃ。ええやないか。あの長—い本文はな、日本の方でも「読むのキツイでっせ」て、しょっちゅう言われるんやで。それを目の青い方にまで期待してはいかん。感謝せな。
A部長 A部長: 目が青いかどうかは国際支店で確認中だが、彼はその非常に漠然とした、自由度の大きい依頼の中で、幾つかは制約条件をつけているそうだ。まず隊に配備するロボット。それに関しては向こうがすでにご指名をしてきている。
C主任 C主任: 実は海外でひそかに「二足歩行巨大ロボットを完成させているメーカーがある」なんてストーリーですか。
A部長 A部長: うん。私も今の仕事柄、マジンガーなどの二足歩行型をすぐ思い浮かべてしまったんだが、もっと現実的だった。より実践的、目的に特化したロボットをご指名だよ。日本にあるNPOに「国際レスキューシステム研究機構:略称IRS」というのがあるそうだ。文部科学省が「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」という、大都市圏において阪神・淡路大震災級の大地震が発生した際の被害軽減を目的に立ち上げた研究プロジェクトがあって、その中の「災害対応戦略研究」におけるコア組織なのだと。
D職員 D職員: う。まぶしいというか難しいというか・・・。
A部長 A部長: RoboCup」というイベントの名前は聞いたことがあるだろう。私はロボットでサッカーし競う競技と思っていたが、それ以外にも小学生から簡単に参加できる「ロボカップジュニア」と、そして大規模災害を想定したロボット競技「ロボカップレスキュー」があるんだそうだ。そのレスキューリーグのまとめ役をしている組織でもある。
C主任 C主任: 具体的にどういう方が集まっているのですか。
A部長 A部長: 実質的な中心は有名な大学の先生や研究者だね。中でもロボット、それもそういった目的に特化したロボットを専門にした。でも民間の方も参加されているから文字通り、産官学連携の組織ではあるようだ。
C主任 C主任: ということは、彼らはロボットの専門家集団ということですね。
A部長 A部長: そうだ。だから我々は、足りない部分を含めて、救助隊というパッケージをつくらなければいけないということだ。
D職員 D職員: ・・・うーん。今回ばかりは残念ですけど、お断りすべき仕事なのかもしれませんよ。ロボットは彼らが、そして基地はウチでどうにかなるとしても、国際救助隊だから例えば「飛行機」も検討しなきゃいけないし、またかっこいい「制服」も必須です。さらに難しいのは、それを可愛く着こなす、華のある女性隊員も最低1人、最近の傾向では2人位いるのが、こういったチームのお約束ですから。
B主任 B主任: 汗かきの太った隊員も一人くらいな・・・って、お前はどないしても、そういう発想*3やな。
C主任 C主任: 女性隊員は僕がなんとかするとして、確かに飛行機や制服は問題ですね。
B主任 B主任: (小声で)おい、聞いたか?なんか余裕の発言やな。モデル事務所の社長かいな。
D職員 D職員: (小声で)知らないんですか?C主任って凄いもてるらしいですよ。
C主任 C主任: ただ建設ってプロジェクトマネジメントそのものですから、異業種を束ねるという点では適任かもしれませんね。しかも建設業って災害救助にも縁が深いから・・・この辺は土木の二人のほうが詳しいでしょうが、案外、最適解なのかもしれないよ。
D職員 D職員: え、ウチも災害救助に出動したりするんですか?
弊社、というより建設業というべきかも知れないが、実は我々、災害救助とはかなり縁が深い。すでにProject01のPart06でも「遠隔操作による無人施工機械」についてご紹介したが、例えばこれは、まだ皆様の記憶に新しい中越地震の復旧(人命救助)の際に2次災害防止のため、実際に現場へ赴き作業させていただいた。(詳しくは弊社CSR報告書、19ページをご覧いただきたい。) その他にも当社現場が災害地から最も近い場合、弊社施工物件で技術的造詣が深い場合、あるいは弊社特有の技術が有用な場合など、様々に「出動」を行っている。機会があればいずれ、このトピックスも詳しくご紹介させて頂きたく思う。 また建設工業新聞6月18日の記事によると、消防庁でも地域の防災・防犯活動に対して支援する「地域安全安心ステーション整備モデル事業」を本格実施する方針を最近決めたばかりだが、これまでのモデル事業において地域の建設業者が主体となった組織形成が進んでいるというが、このように建設と災害救助は縁が深いのである。 それにしても国際救助隊となればスケールが大きく、果たして弊社で検討できるのか。議論は白熱した。部屋の空気がよどみ、さすがに疲れ、皆から言葉が出なくなったその瞬間、A部長が決断した。
A部長 A部長: 受けようじゃないか・・・我々だけではとても無理だが、我々がプロデューサー的役割を担い、他社さんのお力を借りれば何とかなるだろう。今までだってそうしてきたんだ。通常のミッションと全く異なる一つの目標に向かって、全く縁の無かった異業種の方と検討する過程は、またとないいい勉強の機会になるはずだ・・・私の部下になったのを不幸とあきらめ、早速手分けして、どのような会社にお手伝いいただくべきかリストアップしてくれ。
D職員 D職員: (小声で)今日の部長は、何かが違って見えますね・・・
B主任 B主任: (小声で)毎回の検討で、一度はキラリと光る、いい事言うんよね。
A部長 A部長: この手で、女房も手に入れた。
B主任 B主任: (慌てながら)本音はクライアントが「世界的大富豪」いうのに惹かれてるんちゃいます?
A部長 A部長: そういう考えで結婚すると、まず失敗する。
C主任 C主任: 体験談かどうかは、聞かない方がよろしいですか?
A部長 A部長: そうしてくれ。
営 業 情 報 速 報
入手日 2006.6.30
支店名 本店 ファンタジー営業部 担当者:A部長
発注者 謎の世界的大富豪(国際支店にて詳細調査中)
顧客区分 民間 業種:大金持ち
工事名 民間国際ロボット救助隊実現検討調査(コンサルタント業務)
工事場所 ——————
工事目的 日本に基地を置き、日本のロボット(「国際レスキューシステム研究機構:略称IRS」の所属/開発中の機体中心)を使用した、純民間で組織・運営する国際救助隊はどのようなものになるか概要の検討を行う
工種 プロジェクトマネジメントノウハウを流用したコンサルタント業務
設計者 ——————
入札区分 特命・随意契約
リストアップの上、ファンタジー営業部からご協力をお願いしたいと考えた企業様は以下の通り。
1. 全日本空輸様(救助隊の移動手段他について)
2. オンワード樫山様(救助隊の作業服および制服について)
3. コマツ様(機動性の高い救助作業車やその他機器について)
A部長 A部長: いや・・・見事なまでに凄い会社ばかりだね。そう都合よくご協力いただけるとは思えないが、動かなければ始まらない。熱意でぶつかってきてくれ。
B主任 B主任: おやDさん。華のある女性隊員確保用に、モデル事務所とか入れんでええのですか?
D職員 D職員: 救助隊には明るく華やかな「ひまわり」が必要ですよね。苦しい時に隊員を励まし、苦難の時には意志の強さを発揮する素敵な女性が合うんです。個人的にもそういう方が好みです。
B主任 B主任: お前は救助隊評論家かぃ・・・けど、あるかもしれんで「ひまわり」専門の事務所・・・。
A部長 A部長: はいはい。個人的趣味の披露は後にして全員出動〜!頑張ってきてくれよ。
そしてその結果、熱意だけの拙いプレゼンテーションにも関わらず、全く本当に有り難い事に、打診した各社様全てに本企画への協力をご快諾いただいた。ここで重ねて御礼を申し上げたい。
これに
4. NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS:レスキューロボットの開発・製造・運用)
5. 前田建設工業(救助隊基地の検討)
6. 前田製作所(機動性の高い救助作業車やその他機器について)
が参加し、実現検討を開始する。
なおIRSには日本を代表するキラ星の如き優秀な大学の先生や学生さんの他に、ボランティアベースで現場経験3年以上の現役消防士さんを中心とした関係組織「国際レスキューシステムユニット(IRS−U)」が存在し、「現場第一線の立場」からロボット救助隊について、こちらの方々にもご協力をいただけるという。
これだけの才能と能力をまとめていくというその重大な責任に、いよいよ気を引き締めるファンタジー営業部員達であった。
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情報収集に集中する訳
検討を開始するにあたり、まずはともかく「災害救助とは何か」を把握しなければ、全てが始まらない。ファンタジー営業部では早速、「インターナショナルレスキューシステムユニット(IRS−U)」のリーダー、小田原市消防署の真壁賢一氏にお話を伺うべく、リーダー非番の日にあわせてC主任とD職員を小田原に送り込んだ。電車の中で阪神大震災の報告書や現在IRSにて開発中のロボットに関する資料を頭に叩き込み、いざインタビューに望む二人であった。
東京消防庁、消防救助機動部隊内 立川訓練場にて
2006年4月23日、東京消防庁、消防救助機動部隊内 立川訓練場にて「レスキューロボット実証実験及び想定訓練」実施の際に
©IRS
D職員 D職員: 僕、本物の消防員の方とお話しするの初めてでドキドキしてますが、あの・・・やっぱり緊急出動の時とかにはテレビでよく見る「あのすべり棒」でドーッと下りて、消防車に飛び乗っているんですか?
真壁氏 真壁氏: ああ、あれはですね。今、全国的になくなりつつあるんです。
D職員 D職員: ええっ、それは意外・・・あれが目的で消防士になる方もいらっしゃると思うんですが。
C主任 C主任: (首をかしげている)
真壁氏 真壁氏: 仮眠してますでしょ。そこへ出動のアラーム・・・この音は全国で様々な種類があるのですが、まぁそれはさておき・・・で我々訓練されてますから飛び起きるわけです。でも人間だから若干眠さも残ることがあって、つまり寝ぼけて落ちる事例が少なくなかったんです。こういった小さい改善が積み重なり、隊員の安全確保につながっているんです。
C主任 C主任: 一瞬笑いそうになりましたが、良く考えれば小さくない、笑えない話ですものね。
真壁氏 真壁氏: 全国的にもすべり棒はもう少数派だと思います。今は階段で、しかも「飛び降り禁止」とかルールを決めて厳密に行動しているはずです。
D職員 D職員: そうですか。僕の中で大事な何かが失われた気がします・・・。
C主任 C主任: (首をかしげながら)さて本題に入らせて下さい。建設会社的発想かもしれませんが、現在IRSで開発中のロボットが「情報収集目的」に集中しているのが意外でした。つまり、なんというか、瓦礫の下に埋まっている人をドンドン助けていくような力強く大きなロボットを勝手に想像していたもので。
真壁氏 真壁氏: 現場を経験している我々からすると、情報収集が難しいんですね。
D職員 D職員: 災害救助における「情報」というと、どんなものになるんでしょうか。
これに対する真壁リーダーの回答は次のようなものであった。救助開始以前に必要な情報としては、
1. 要救助者の有無(および要救助者の程度、など)
2. 災害の種類(例えば、閉じ込められか、圧迫か、など)
3. 2次災害の危険性(隣接構造物への燃え移り、など)
また、救助実施中にも
4. 隊員が安全に活動できる空間の有無
5. 要救助者の状態(人数・場所・程度)
6. 可燃性ガスの有無
7. 酸素の有無
などがあるという。
特になぜ「要救助者の人数、場所そして程度」という情報が繰り返されているのか。
災害現場という極限状態においては、現実問題として救助隊の人数、装備そして時間は限定されてしまう。その中で出来る限り多くの人命救助を実現するためには、数多くの傷病者の容態を「正確に把握」し「搬送および治療順序をつける」必要がある。この選択を「トリアージ」と呼ぶ。実際に傷病者につける、これ専用の札「トリアージタグ」というものが全国の消防機関に配備されている。
トリアージタグ
トリアージタグ
©IRS
非常に厳しい作業であり、その順序判断のミスをゼロにするのが理想である。IRSのメンバーはこの重要性をよく把握しており、まずは「情報収集フェーズ」にロボットを投入するべく鋭意開発中というわけである。
ちなみに、同じトリアージという言葉が災害救助に限らず、通常の救急搬送業務を語る中でも使われている。災害救助における「トリアージ」が「複数の傷病者」がおり、彼らの処置順位をつけることを指すのに対し、救急搬送業務においては「単独の傷病者」に対しての「トリアージ」が議論されている。
これは例えば、ある市町村の中で消防署、救急ヘリ、救急車、救急隊員などの数は現実問題として限られており、その中で市民の全体の人命を最大限救助するためには、各傷病者に最も適した処置を行い無駄を無くすことが必須である。この最も適した処置を判断する作業が「トリアージ」というわけである。傷病者実際の容態より悪く見積もって搬送なり対応することをオーバートリアージ、また実際の容態より軽く見積もってしまうことをアンダートリアージ(当然こちらの方が傷病者の悪化・危険につながる)と呼ぶ。 「救急車はタクシーではありません」というポスターを見たことを思い出し、そのコピーの意味をより深く噛み締める、D職員であった。

さて、IRSによると当然ながらこの「情報収集フェーズ」でのロボット開発に目処が付けば、将来的にはC主任が想像したような「救助ロボット」にも取り組むつもりであったとのことで、今回の救助隊実現構想を推進する中で、そのあたりを一部先取りする可能性がある。
真壁氏 真壁氏: 情報収集に関する現状の装備ではセンサー類が強化されてますね。高度救助資器材と呼ばれるもので、温度に反応する「サーモビジョン」、電磁波で生体反応を見る「シリウス」、それから棒につけたカメラ「ボーカメ」などがそれです。
D職員 D職員: その「ボーカメ」というのは
真壁氏 真壁氏: 文字通り「棒の先にカメラをつけた遠隔監視装置」です。
ボーカメ
ボーカメ
©IRS
D職員 D職員: それでは曲がったところは見づらいですね。
真壁氏 真壁氏: それが欠点ですね。
C主任 C主任: じゃ「ボーカメ」、というかカメラをロボットに搭載できれば・・・
真壁氏 真壁氏: すでに幾つかは搭載してますよ。まだ改善が必要な部分はありますね。それと「シリウス」にしても人間だけでなく小動物など生体反応を全て拾ってしまったり・・・。
D職員 D職員: なるほど。センサーだけでもまだまだ課題は多いわけですね。そしてこの情報収集を如何に完璧に近づけられるか、それを実現するロボットを開発できるかが、当面の目標になるわけですね。
ご承知の方も多いと思うが、阪神・淡路大震災で不幸にして有名になってしまったものにクラッシュシンドローム(挫滅症候群)がある。瓦礫にはさまれるなど身体の一部が長時間にわたり圧迫されると筋組織が壊死してしまう。筋細胞が壊死を起こすと、中からミオグロビン、カリウム、リン酸が出てくる。やがて救出され圧迫部分が開放されると、傷害された筋細胞の膜はカルシウムを取り込むように働き、血清カルシウム値は低下する。血清中のカルシウムの低下とカリウムの上昇は、心静止を引き起こす可能性がある。また、血中に流出したミオグロビンは腎臓に毒性を及ぼし、急性腎不全の原因になり時間を置いてから最悪の場合死に至るというものである。救出直後は元気で笑顔を見せているのに、気付くと亡くなってしまっているため「スマイル・デス(Smile Death)」という別名でも呼ばれる。この知識が無かった故のアンダートリアージが多数発生したわけである。
危険なこの症候群を克服するには、壊死部を切断するか、救出後直ちに血液透析を行わなければならない。
D職員 D職員: これは・・・不勉強で僕も全く知りませんでしたが、我々建設会社職員も必ず知っておくべき情報じゃないですか。残念ですが、事故が発生した場合、こういう状況になりやすい条件が建設現場には多いですからね。
C主任 C主任: いや、全くそうだ。これは部に帰って早速報告しよう・・・ところで思いついたんですが、ということは、救助隊の飛行機にコンテナに詰めた大量の透析器を準備して、被災地まですぐ運べればいいですね。
D職員 D職員: それ、いいアイデアですね。
真壁氏 真壁氏: CSMという言葉がありましてね、Confined Space Medicineの略ですが、「瓦礫の下の医療」と訳されています。トリアージにしろ、クラッシュシンドロームにしろ、災害現場では文字通り瓦礫の下で医師と消防官と連携を取った救出活動の必要があるわけです。全身固定、低体温対応、粉塵吸引対応、気道確保・・・
C主任 C主任: そういった事を瓦礫の下で危険にさらされながら、行わなくてはいけない・・・なるほど。そういった面でも、ロボットが大きな役割を果たしてくれれば良いわけですね。
東京消防庁、消防救助機動部隊内 立川訓練場にて
2006年4月23日、東京消防庁、消防救助機動部隊内 立川訓練場にて「レスキューロボット実証実験及び想定訓練」実施のヒトコマ
©IRS
 これまで、C主任およびD職員がインタビュー前に呼んだ報告書が阪神・淡路大震災のものであったため、震災を想定した内容に偏ってしまったが、ここで別のケースも考えてみよう。
例えば津波災害の場合では「目撃者が存在しない(皆、流される)」災害となるため、いよいよ現地での情報収集は難しく、しかも広範囲にわたる捜索が必要となるという。ゆえに津波災害ではヘリコプターが活躍するため「空から情報収集するロボット」「瓦礫の中を高速で走行しながら情報収集するロボット」などのニーズが挙がるわけである。
D職員 D職員: しかしテレビで災害救助犬というのを見たことがあります。あれはレスキューロボットの強力なライバルになるのではないですか。
真壁氏 真壁氏: 必ずしもそうとは言えません。外国、特にフランスでしたか、国際救助隊で活躍しているようですが、まず検査(検疫)の手続きで時間を取られることがあります。移動中の負荷により体調を崩し、信頼性が低下する場合もあります。
C主任 C主任: なるほど、なかなか難しいですね。
真壁氏 真壁氏: 彼らは鋭い嗅覚に頼って捜索をするわけですが、大規模災害で時間が経過すると、その嗅覚が逆にやられてしまうこともあるわけです、お亡くなりになった方が多い場合などは特に・・・。それから犬の、自分自身の受傷というリスクもあります。ただ、災害救助犬というものは人間にない鋭い感覚を持っていますのでライバルとかではなく、お互いに被災地でよいコミュニケーションが取れたらと思います。
D職員 D職員: そうですね。知りませんでした・・・そうか・・・あぁ、いいロボット、早く作らなくちゃ、ですね。
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救助の組織とメンバー
時間を忘れインタビューを進める二人。次に視点を変え、救助隊という「組織と人」に注目してインタビューを進めていく。
大災害などでは複数市町村の消防機関が被災地に駆けつけるが、あれは「市町村相互応援協定」「緊急消防援助隊に関する政令」に基づく出動だそうである。指揮は必ず地元に設置されている災害対策本部が取り、応援隊はその指揮下に入るが、その際の情報共有、指令伝達については無線チャンネルの「全国波」を全隊が利用することで行っている。
C主任 C主任: 阪神・淡路大震災のような大災害で、救助活動が長期間にわたる場合などは応援隊が重要ですね。
真壁氏 真壁氏: 隊員のバックアップ、これは大事です。今回我々が検討していく「民間」国際救助隊では、そのあたりも何か工夫してほしいところです。
D職員 D職員: 大災害では数多くの被災者が生死の境にあるのですから、救助隊は休む暇なく、寝る暇もなく救助を続けることになりますから、隊員の精神・体力面を考えた交代要員は大事ですよね。
数多くの国際救助隊、正確には「国際緊急援助隊」が日本から派遣されている。最近の産経新聞によれば、これは昭和62年に施行された「国際緊急援助隊派遣法」に基づき、被災国政府の要請を受け、外務省が関係省庁や防衛庁と協議して派遣を決定するとのこと。派遣にはJICA(国際協力機構)によるものと、自衛隊によるものの2種類がある。
JICAの援助隊には救助(警察官や消防士)・医療(医師のボランティア自主登録制)・専門家(インフラ復興や感染症対策)の3チームが存在。しかしながら大規模で長期間の支援となれば自衛隊が派遣されているという。
今回我々は「民間」のロボット国際救助隊の姿を模索するわけであるが、こういった既存の公的救助隊との法的整合性や活動可能範囲等、難しくなる話はあえて無視し、純粋に各組織の能力を結集すると何ができるかを検討させていただく予定である。

さて、話は変わるが大規模災害において、極限状態に置かれるのは被災者はもちろん、救助する隊員も同様であるらしい。災害地の救急隊は他所からの応援が来るまで、あるいは来てからもなお、本能的な義務感で休むことが出来ず、肉体的・身体的疲労に加え、凄惨な現場に直面することが重なり、PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)になる方もいらっしゃるようである。救助効率という言葉があるのなら、それを最大にするためにも、例えば長期にわたる救助・支援となればロボットの性能向上はもちろん、災害地における隊員の野営施設なども重要な検討項目であろうと考えている。
真壁氏 真壁氏: 災害の覚知という点では、案外メディアに頼らざるを得ない部分が多いんです。もちろん他の手段も確保しているんですが。例えば私のいる神奈川県の場合ですと、緊急援助隊は厚木に集合し、そこで事前の情報伝達が行われます。
C主任 C主任: そして現地では災害対策本部の指揮下に入ると。
真壁氏 真壁氏: そうですね。そこで先ほど話したトリアージに従事することもあるわけです。トリアージタグを被災者に取り付け、トリアージポイントに指定されたテントなどに搬送し、振り分けていくわけです。
D職員 D職員: しかし、振り分けるといっても皆さんは医者ではないわけですから、お医者さんには限りがあるのですよね。
真壁氏 真壁氏: そういう点ではどの病院が健在で、どの程度の被災者を受け入れ可能か、またそこまでの搬送ルートはどうなっているか、という情報も大事になります。
C主任 C主任: 我々の創ろうとしている救助隊は「民間」なわけで、ある程度自由度の大きい組織にもできるのかなと予測していますが・・・
真壁氏 真壁氏: 現場に行っている我々からすると、個人的には指揮系統は一本で、民間のロボット救助隊とはいえ、(消防局の救助隊と)同一歩調で活動する方がより効率的と考えますね。当然、情報収集能力は優れているのでしょうから、情報を共有させてほしいし、救助にあたっても、同様ですね。
C主任 C主任: 阪神大震災などでの、民間救助というのはどうなっていたんですか。
真壁氏 真壁氏: 非常に力を発揮したと聞いています。地域の消防団による自主防災はもちろん、住民の方の情報提供や傷病者搬送・・・個人の船で大阪までピストン輸送をしてくださった方もいらっしゃったようですし。皆さんのような建設業者の方にもずいぶんと貢献していただいたようです。
D職員 D職員: とすると、日頃からレスキューロボットを、消火器のように広く配置しておく方がよくありませんか。
C主任 C主任: それはそうだろうが、実際の予算もあるし、難しいところだろうね。
真壁氏 真壁氏: ちょっと話が外れるかも知れませんが、車のジャッキや鉄のスコップといった、ちょっとしたものが救助では威力を発揮したようです。
C主任 C主任: 隊員の方のための装備と言う観点では、長期支援の場合はやはり野営場所の環境も大事でしょうね。
真壁氏 真壁氏: 確かにそうですね。新隊員のバックアップシステムがしっかりしているは良いです。だから今回の民間国際ロボット救助隊の話を聞いたときに、もし飛行機が専用でもてるのなら、距離にもよりますでしょうけど、日本と被災国のピストン輸送などにも従事して欲しいと考えたんです。
D職員 D職員: 距離が遠ければ、現場宿舎を若干でも快適にしたいですね。これ、うちの会社の得意分野じゃないですか!
C主任 C主任: 飛行機で荷物を入れる「コンテナ」ってあるじゃない。あれを上手く改造できないかな。
D職員 D職員: 様々な機能を持つコンテナを積み替えて・・・あ!それって、まんまサンダー・・・あ、言わないほうがいいですね。
これまで情報収集について話を聞いてきたが、救助そのものとロボットの可能性についても聞いてみた。日本では必ず隊員が災害現場から安全に戻らなければいけない、というルールがある。その点でロボットに期待されることは多く、既に様々な高度資機材が投入されている。
しかしファンタジー営業部員が調べたところでは、例えばロボット的なものでも大きさが大きすぎたり、多数の機能をひとつにまとめていたりで、難点が多いようである。もしかしたら単機能の小型で敏捷なロボットを複数配備するほうがよいのかもしれない、と考える部員達であった。
救助のために例えば中古建設機械を地元に常備しておくというアイデアも浮かぶが、一般の方が取り扱いづらいという欠点があり、これの克服にはインターフェースの改良が必要であろう。その他にも燃料切れによる稼働時間制限も制約条件となるだろう。
今回、火災の話にはならなかったが、例えば隊員保護のための水に守られたケージ(鉄製のカゴ)が大型バックホウの先に付き、自在に救助活動ができる・・・がベストかどうかは別にして、様々なアイデアからまったく新たな救助機械につながる可能性も否定できない。
D職員 D職員: 最後に、この国際民間ロボット救助隊のメンバーになる人が持つべき能力ってなんでしょうか。
真壁氏 真壁氏: チームの一員としての自覚と、災害救助の知識は必須ですね。
C主任 C主任: それはそうですね。
真壁氏 真壁氏: 建設会社さんにも期待していますよ。やはり我々が持っていない資機材や重機は威力を発揮しますから。
小田原を離れる頃には東京行きのこだまも残り少ない時間になっていた。飛び乗った車内は乗客もまばらで、街の明かりだけが物凄いスピードで後ろに飛んでいく。
消防士と建設会社職員という、異なる仕事の人間が長時間にわたり熱い話し合いができたのは目的が明確だっただけでなく、やはりお互いの業務に少なくない共通点を見出したからではないかと、C主任は疲れた身体を座席に預けながら考えていた。「新たな発見も多く充実した時間だった。この無数の明かりの中で、今も消防署の方々は走っているのだろうな。」そしてC主任は目を閉じた。しかしその傍らには「もしA部長なら、やっぱり小田原からはロマンスカーの、それも展望席で*4新宿に帰るんだろうなぁ。すると車内メニューでお弁当とか買えたなあ」と小田原駅で弁当を買えず、おなかを空かせたままのD職員がいた。
直後の想いに違いはあれど、一致団結してよりよい救助隊を創るため、次はいよいよIRSで開発中のロボット達に会いに行くファンタジー営業部員達。その独創のテクノロジーに驚くと共に、素人だから気付く改良点なども見つかるなど、どたばたの検討模様を報告する。
次回ファンタジー営業部 国際民間ロボット救助隊編「Part02 戦うロボット達」
7月31日(月)公開予定。どうぞお楽しみに。
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バックナンバー
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PROJECT 04 CONTENTS
パート1:
現実世界での初仕事
パート2:
戦うロボット達 page01
戦うロボット達 page02
パート3:
ひまわりの、あたたかくも強い意志 page01
ひまわりの、あたたかくも強い意志 page02
パート4:
人と機械が手を結ぶということ page01
人と機械が手を結ぶということ page02
パート5:
ある日の救助隊基地
パート6:
これがロボット救助隊の姿だ(前編) page01
これがロボット救助隊の姿だ(前編) page02
新設*1
本コンテンツ中の「設定」であり、残念ながら本当には存在しておりません。(お時間がありましたら弊社組織図をご参照下さい)しかし夢のような難しい仕事の依頼はいつでも歓迎であります。その(架空の)設定についてはこちらをご覧下さい。
アジアならわかる*2
弊社の海外施工実績がアジアに集中していることから、こう言っている。
そういう発想*3
D職員は前田建設屈指のアニメ博士であり、ヒーロー物にも詳しい。ここでは彼が「ウルトラ警備隊」などを念頭に「女性隊員」の話をしたため、B主任がボケつつ、突っ込んでいる。
それも展望席で*4
A部長は若い頃、SLの写真を撮りまくっていた鉄道ファンである。これについてはこちらをご覧下さい。
 
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Maeda Corporation