2018年05月24日独自の混合セメントによる低炭素型のコンクリートを新技術研究所に適用~一般的なコンクリートプラントでの製造・出荷を実現~

<概要>

 前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治)は、つくばコンクリートサービス株式会社(本社:茨城県つくば市、社長:中山敬之助)、BASFジャパン株式会社(本社:東京都港区、社長:石田博基)、及びポゾリスソリューションズ株式会社(本社:神奈川県茅ケ崎市、社長:吉沢祐史)の協力により、混合セメントを使用した低炭素型のコンクリートを開発し、茨城県取手市で建設中の当社新技術研究所、総合実験棟の床スラブの一部(施工数量:68m3)に本格的に適用しました。プレミックスした独自の混合セメントを使用することで、一般的なプラントの製造設備で通常のコンクリートと同様の出荷を可能としました。

 

<詳細>

 低炭素型のコンクリートは、セメントの大部分を高炉スラグ微粉末やフライアッシュの混和材で置き換えたコンクリートであり、二酸化炭素排出量を大幅に削減できることから、地球温暖化防止対策のひとつとして注目されています。また、セメントの使用量が少ないため、コンクリートの発熱温度を抑制でき、マスコンクリートなどの温度ひび割れ対策に有効です。一方、低炭素型のコンクリートは、結合材が多成分の材料から構成されるため、製造設備によって出荷できる工場が制限されることや、各材料を直接手投入する場合には一日の製造量が限定されるなど制約条件が多いことが課題となっています。

 前田建設工業は、低炭素型のコンクリートを実工事へ適用するにあたり、各材料を予めプレミックスした独自開発の混合セメントを使用することでこれらの課題に対応し、一般的なプラントと同様の製造設備で出荷することを可能としました。

 この混合セメントは、多成分の材料で構成されることから、製造過程における各材料の計量誤差や混合方法などによる品質のばらつきが懸念されます。そのため、混合セメントの製造にはバッチ式の混合方法を適用し、モルタルによる基礎的な試験を行い品質のばらつきが小さいことを確認しています。

 また、低炭素型のコンクリートは、セメントの使用量が少ないため、一般のコンクリートに比べて凝結が遅延して仕上げが遅れるといった課題も挙げられます。今回は冬季施工であったことから、打込み後のコンクリートの凝結が大幅に遅れることや、長時間にわたるブリーディング水の発生などが懸念されました。そこで、これらの課題を解決するため、C-S-H系早強剤(以下、硬化促進剤)を添加した結果、無添加の低炭素型のコンクリートと比較して、終結時間は約2時間短縮でき、ブリーディング量は約80%もの大幅な削減となりました。強度発現については、無添加の低炭素型のコンクリートにおいて、管理材齢28日時点で所定の強度を十分に満足しており、硬化促進剤の添加により材齢初期で約20%程度の強度増進を得られています。施工後の経過観察においても、有害なひび割れなどは発生しておらず良好な状態です。

 今後、土木学会から「混和材を大量に使用したコンクリート構造物の設計・施工指針(案)」が発刊される予定であり、土木構造物も含め低炭素型のコンクリートの更なる普及、利用拡大が進むものと予想されます。

 前田建設工業は、今回開発した技術により、これらのニーズに応えてまいります。

 

<問い合わせ先>

前田建設工業株式会社 総合企画部 広報グループ

電話:03-5276-5132

 

【参考資料】

 

【公開資料】

1) 国立研究開発法人土木研究所、一般社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会、株式会社大林組、大成建設株式会社、前田建設工業株式会社、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、鐵鋼スラグ協会、電源開発株式会社:低炭素型セメント結合材の利用技術に関する共同研空報告書(Ⅰ)低炭素型セメント結合材を用いたコンクリート構造物の設計・施工ガイドライン(案)、共同研究報告書、第471号、平成28年1月
2) 国立研究開発法人土木研究所、大成建設株式会社、前田建設工業株式会社:低炭素型セメント結合材の利用技術に関する共同研空報告書(Ⅳ)多成分からなる結合材を用いた低炭素型のコンクリートの設計・施工マニュアル(案)、共同研究報告書、第474号、平成28年1月

 

独自の混合セメントによる低炭素型のコンクリートを新技術研究所に適用

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