2020年03月06日フランスの彫刻作品を日本の木造ロボットで実体化~芸術とデジタルファブリケーションの共創が美術館へ~

<概要>

 前田建設工業株式会社(東京都千代田区、社長:前田操治)は、ICI総合センターにて開発中の大規模木造用ロボット加工機(https://www.maeda.co.jp/news/2018/12/14/4918.html)を用いて、日比野克彦氏(東京藝術大学 美術学部長)監修のもと、Tara Océan財団が所有し運営する科学探査スクーナー船タラ号に、「タラ号太平洋プロジェクト」の際、乗船したアーティストであるニコラ・フロック氏の作品「珪藻」「ディノフラゲラート」の2点を制作し、岐阜県美術館で開催されている円空大賞展に出展しました。フロック氏は、共焦点レーザー走査顕微鏡から得られる3Dデータを、S. Colin氏、Plancton Planet、CNRS Roscoffの協力・提供により制作。珪藻ならではの表面を覆う微細な多くの穴など、人の手でも加工が難しい彫刻を、ICI総合センターではロボットのみで忠実に実体化しました。世界でも稀と思われる芸術とデジタルファブリケーション※の共創を一早く実現いたしました。

 

<詳細>

 大規模木造用ロボット加工機は、前田建設と千葉大学で共同開発中の木造新生産システムから生まれた、BIM(Building Information Modeling:建築3次元モデル)のデータから木材を自動加工することができる機器です。精密加工や曲線加工も可能な特性を生かし、伝統建築における装飾なども再現することが可能です。

 今回、本ロボット加工機の性能に注目した日比野氏およびTara Océan財団からICI総合センターが依頼を受け、ニコラ・フロック氏の芸術作品を実体化し、岐阜県美術館で開催中の第10回円空大賞展に出展しました。

 円空大賞展へフロック氏の作品を出展するにあたり、フランスにあるオリジナル作品は石造であるため、輸送が困難という課題がありました。ICI総合センターへ現地制作された作品のオリジナル3Dデータを送信してもらい、それを本ロボット加工機に入力することで、離れた場所において短期間に作品を制作することができました。今後、デジタルファブリケーションを適用できれば、輸送に頼らない新しい展示の方法が可能となります。「珪藻」という作品では、表面を覆う無数の微細な穴の再現が重要でしたが、本ロボット加工機が人の手の様にツール(切削用刃物)を持ち変え、段階を踏みながら一つ一つを丁寧かつ高精度に加工することで実現できました。切削作業は特殊な技術を持った人手を必要とせず、省人化および高効率化も実現しています。具体的な制作(加工)プロセスは、下に添付します。

 今回の共創について日比野氏は「芸術家の目の付け所をデータからロボットで忠実に再現するというのは、彫刻家にとっても新たな世界が広がる。」と言います。

 前田建設も今回の共創の成功により芸術がより身近なもの、つまり誰もが芸術家になれたり、芸術がビジネスとして社会実装されたりする、豊かな暮らしに近づけたと考えております。また建築分野においては本ロボット加工機で、職人の技を使える「人工技能」の実現を目指してまいります。

 

デジタルファブリケーション

コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、デジタルデータをさまざまな素材から切り出し、成形する技術のこと。

 

 

 

<開催概要>

タイトル 第10回円空大賞展 -希求、未来への創造-
会期 2020年1月30日(木)~3月8日(日)
会場 岐阜県美術館
公式WEBサイト https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/events/10th-enku/

 

<問い合わせ先>

前田建設工業株式会社 経営革新本部 広報部

電話:03-5276-5132

 

フランスの彫刻作品を日本の木造ロボットで実体化

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