ストーンカッターズ斜張橋工事#1

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コンクリート桁239m、空体積約150万m3で支える

 「ストーンカッターズ橋」は、幅900mのランブラー海峡を跨ぐ道路橋である。全長1,596m、中央径間1,018m(斜張橋としては世界第2位)、幅員は片側3車線で53.3m。大型コンテナ船が航行できるよう桁下空間を73.5mとり、主塔の高さは298mに達する。
 橋のデザインは、発注者である香港特別行政区政府路政署が2000年に実施した、世界的な設計コンペティションにより選ばれた。前田建設工業(株)、日立造船(株)、(株)横河ブリッジ、新昌営造廠有限公司の共同企業体は、2004年4月に建設工事を受注し着工した。

コンテナターミナルCT8
側径間支保工全景

コンテナターミナルCT8
側径間支保工とコンクリート桁上部工全景

側径間下部工

 側径間289mの下部工の建設にあたり、前田建設は大規模な仮設支保工の開発に力を注いだ。支保工の高さは約60m、空体積は約150万m3。この大空間の上部工を支える仮設支保工を自社開発することが、作業効率の向上、品質の確保、コストの削減につながる、と考えたからである。
 本仮設支保工のコンセプトは、施工も撤去も簡単で、架設時に溶接やボルトが不要、横梁を支持する支保工は2年ほど使い、型枠支保工部分は転用可能であること。この条件をクリアするために、「プレキャストブロック支保工(コンクリートブロック)」を開発した。
 コンクリートブロックの下部に凹、上部に凸をつくり、凹凸を組み合わせて横ズレを防ぎ、プレストレスト工法で固定した。さらに、水平方向に動かないようにするために、鋼製のトラス構造ブレース材(筋交い)を設計・製作した。ブレース材は大きいもので1辺が37mもある。鋼材を高所で組み立てる作業は危険を伴うため、地組みしてクレーンで吊り上げ設置した。これにより、高所作業を大幅に削減して安全性を確保すると同時に、作業効率を高めた。
 仮設支保工は、上部工にケーブルを設置したあと、解体する。
 このコンクリート側径間の大規模仮設支保工の開発設計は、世界的にも珍しい工法として注目されており、2008年に日本土木学会で発表することが決まっている。

プレスコンクリート桁

 側径間の上部工は、PC(プレストレストコンクリート)造である。PC桁は、柱頭部と横梁の間を埋める形で施工した。横梁コンクリートを打設し、橋軸方向トラスを架設したあと、桁コンクリートを構築し、橋脚間の3本の横梁の間の上部工を構築した。コンクリートは、70mの鉛直配管で地上からポンプ圧送し、クレーンをほかの作業に使えるようにして、作業効率を高めた。
 コンクリート桁構築完了後、上り線・下り線の軸力が均等になるようバランスをとりながら、プレストレスト工を行った。このとき、桁の変異を吸収させるために仮設支柱と横梁の間に積層ゴム支承を設置し、その下に砂ジャッキを設置した。これは、仮設支保工の解体を容易にするための工夫である。

ストーンカッターズ橋 技術部
エンジニアリングマネージャー(技術課長)

山根 薫

 前田建設は香港で「青衣北大橋」と「カプスイモン大橋」を建設しました。この現場にはその経験が生きています。とは言うものの、「カプスイモン大橋」を建設したのは1992~97年。それから約10年を経て、ここでは品質も安全性もより高いレベルを要求されています。
 この現場では、コンクリート系の技術者として側径間仮設支保工を開発し、約2年間、技術を担当しながら現場をサポートしました。コンクリート系の仕事が完了してからは、鋼桁のセグメントの形状管理を担当し、品質管理を徹底しています。さらに技術を磨き、今後の仕事に役立てたいと考えています。

プレキャストブロック支保工のメリット
1.架設工および撤去工が簡易にできる
2.現場での接合作業を削減し、
  品質を保つことができる
3.製作する仮設備材の数量を最小限に
  抑えることができる

汲水門(カプスイモン)大橋・
馬灣(マーワン)高架橋
施工:前田JV
竣工:1997年
発注者:香港政庁1997年、優れた特色
を有する橋梁に与えられる土木学会田中
賞を受賞。

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