ストーンカッターズ斜張橋工事#2

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高さ298m、天を目指して美しいフォルムの主塔を建てる
主塔基礎工

 東西両岸に配置された高さ298mの主塔は、杭径2.8m、平均長さ70mの場所打ち杭で支えている。
 まず、東側主塔の基礎工事に着手した。覚悟はしていたが、やはり南シナ海との闘いだった。水際からわずか7mのところで50m×40m×12m深度の大規模掘削が必要であった。掘削が進むにつれ、海水の湧水量がどんどん増してきた。想定以上の湧水量だった。通常の表面排水では到底対応しきれない。掘削を一時中断し、掘削ゾーン内に急遽、深井戸を増設し水位を一気に低下させ急場をしのいだ。
 基礎杭上のフーチング(基礎コンクリート1万3,000m3)の施工は工程を回復させるためにも、水際での地下工事を素早く完了させるためにも、既成概念にとらわれない工夫が求められた。山留めの切梁を埋め殺すように躯体をどんどん先に造り、作業効率を高めた。もし通常施工を行っていたら、更なるリスクにさらされていたであろう。「当時の判断が本当に正しかった」と前田スタッフは、胸を張って語った。
 西側主塔は湧水は少なかったが、地層の傾斜により、最も長い杭は長さ117mに達した。こうして、次々に発生する問題を、1つひとつ解決しながら、基礎工事を進めていった。

主塔上部

 主塔の断面は独特な構造である。下部は長辺24m・短辺18mの楕円形。これを上に行くにつれて絞り込み、橋桁部の高さで直径14mの円形断面にし、最上部は直径7mまで断面を絞り込んだ。
 主塔上部175mから293mは、外側を20mm厚のステンレススティール板で覆われた鉄筋コンクリート複合構造物である(ステンレススキン部)。
 その内部には斜材のガイドパイプ及び斜材の定着用鋼製アンカーボックスが組み込まれている。
 ステンレススキンの製作は中国本土の中山の工場で生産した。全体を32段に分け、各々を半円状の形に分けて製作した。その3次元形状の高い製作精度を確保するため、工場にて3段ずつ地組みしてその精度を確認したうえで、香港へ出荷するという形式をとった。 ステンレススキン部の施工にあたり、前田JVは何度も発注者との綿密な打ち合わせを繰り返し、着実に工事を進めていった。
 今、主塔内部で設備工事が進んでいる。その最終段階で、ステンレススキン部の上に高さ5mのガラス製建屋を載せ、その中に照明設備を設置する。

ストーンカッターズ橋
Chief Engineer(工事主任)

Artie Wong

 主塔の建設にかかわる予算、工事手順、資材・機械・人材の手配など、すべてを担当しています。工期を短縮するために、タワークレーンの用途や使用時間を細かく設定し、鉄筋の作業は夜間に回すなど、さまざまな工夫をしています。
 日本の建設業は土木と建築に分かれているようですが、香港は世界標準ですから土木と建築の区別をしていません。私はカナダの大学で都市工学と建築の構造設計を学び、ロサンゼルスの構造設計会社で12年間デザインエンジニアとして勤務していました。そのときの経験が、主塔の建設や仮設構造物の構造計算に役立っています。

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