気候変動への対応

気候変動への対応

  • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 13 気候変動に具体的な対策を

方針・考え方

気候変動への対応は、材料の調達から施設の運用に至るサプライチェーンのCO2排出を抑制することが重要です。そのため、さまざまなステークホルダーと情報共有しながら対策を進める必要があります。特に建物運用時の排出の影響が大きいことから、ZEBやZEH-Mなどの省エネ関連技術の提案に努めるとともに、再生可能エネルギー事業の立ち上げに主体的に取り組んでいます。顧客への再生可能エネルギーの提案に加え、グループ企業の利活用の推進についても検討を進めます。社会課題である気候変動対策のインフラ整備を多様なネットワークの中で解決するため、イノベーションを加速させるための複合施設であるICIを開設しました。新たな価値創造の実現とその社会実装に取り組んでまいります。
気候変動情報の開示に関しては、インフロニア・ホールディングスとともに、前田建設としてのCDPによる開示を行っています。気候危機が深刻化するなか、2050年実質ゼロを実現するため、2030年の目標値を見直しました。2019年に取得したSBT認証については、ホールディングス化を契機に更新を進めています。

SBT

※SBT:Science Based Targetsの略称で、世界の平均気温の上昇をパリ協定で目標としている「2℃未満」に抑えるために、企業に対して科学的な根拠に基づくCO2削減目標を設定するよう求めるイニシアチブ

マネジメント

取締役会における気候関連課題の責任者は、代表取締役社長となっています。
中期環境計画('22-'24)では、2021年度の実績に対し、3カ年の削減目標を決めて取り組んでいます。
安全環境担当者役員は、建築部門、土木部門、調達部門、技術部門における中期環境計画の実施状況を取りまとめ、四半期ごとに取締役会に報告しています。作業所での取り組みは、建築部・土木部と、四半期に一度WGを開催し対策について検討します。作業所での実施状況は、環境情報のポータルサイトに入力することで情報の共有と、集計の効率化を図っています。2016年より作業所における環境負荷低減のための取り組みを評価・推進するため、ポータルサイトに登録した取り組みの「経済的価値」をランキング表示することで取り組みを“見える化”しました。また、環境価値金額換算値を、社内の環境活動表彰の評価項目としています。

※環境価値金額換算値は、例えば建設副産物の排出削減による業績面の削減コストに加え、CO2の削減量を炭素価格により評価した環境価値を加算することで、環境取組を推進するために設定した社内評価指標

目標と実績

2019年度からは、新しい中長期経営計画である中長期改革プラン「NEXT10」に基づく事業計画の見直しを実施しています。そこで、その内容に沿った形で、SBTの認定基準に準じた中長期CO2削減目標の見直しを行い、中期環境計画('22-'24)を策定しています。
2015年のパリ協定に基づき、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、当社もこれらの実現に向けCO2排出削減目標を「2050年実質ゼロ」に見直しました。また、2019年に取得したSBT認証については、2021年10月のホールディングス化を契機に更新し、目標達成に向けグループ会社との連携および取り組みを強化します。

また、2022年5月にインフロニアHDとしてRE100に加盟し、再生可能エネルギーの利用推進にも取り組みます。

前田グループの温室効果ガスの中長期削減目標(総排出量)

※横スクロールにて全体をご確認いただけます。

※◎:100%達成 ○:95%達成
 △:90%以上達成 ×:未達成

主な取り組み内容 取組に
関するKPI
2022年度の実績 達成度
評価
2023年度
目標

気候変動への対応

建物運用段階におけるCO2排出量削減

推定削減率

○○%

-

-

施工段階におけるCO2排出

※下段:
電力使用分を非化石証書でオフセットした排出量および排出原単位

排出量

94,286(t-CO2

×

76,189(t-CO2)以下

73,718(t-CO2

排出原単位

24.8(t-CO2/億円)

×

20.4(t-CO2/億円)以下

19.4(t-CO2/億円)

オフィスにおける電力使用量によるCO2排出

※下段:
電力使用分を非化石証書でオフセットした排出量および排出原単位

排出量

3,034(t-CO2

×

2,388(t-CO2)以下

678(t-CO2

排出原単位

6.04(kg-CO2/人・日)

5.2(kg-CO2/人・日)以下

1.3(kg-CO2/人・日)

※電力使用によるCO2排出量はトラッキング付非化石証書により全量オフセット

事業活動におけるCO2排出量および原単位

2022年度より施工活動およびオフィス活動事業で使用する全ての電力をトラッキング付き非化石証書を利用してオフセットしました。これにより当社の電力使用によるCO2排出量はゼロとなり、再生可能エネルギー利用率は100%となります。今後も引き続き省エネ活動に取り組み、電力使用量削減を推進します。

【施工活動】

2022年度CO2排出量は電力使用分を非化石証書でオフセット後73,718t-CO2、またCO2排出量原単位(施工高1億円あたりのCO2排出量)は、19.4t-CO2 / 億円となり、2022年度目標を達成しました。

【オフィス活動】

オフィス活動の電力使用量によるCO2排出量は電力使用分を非化石証書でオフセット後678t-CO2となり、2022年度目標を達成しました。

CO2(施工活動)の推移
CO2(オフィス活動)の推移
2021年度の作業所における省燃費運転活動実施状況

設計段階での取り組み

建築基準法や、省エネ法などさまざまな法令を遵守し、発注者の要求を満たした上で、さらに、設計段階から環境負荷低減に配慮した、各種省エネ提案やシミュレーションを行っています。また、環境配慮設計推進のため、全物件において評価を行っています。ZEBに関してはZEBリーディングオーナー、ZEBプランナーにも登録しており、設計およびコンサルティング、施工まで行う総合省エネプランナーとして引き続き取り組んでいます。当社は、新築および改修の「W ZEB」(ダブル・ゼブ)により、ZEBのリーディング企業をめざします。

建築物運用段階におけるCO2発生抑制に関する推移

環境配慮設備の推進としてのCASBEE評価

「建築物環境総合性能評価システム(CASBEE)」を業務フローに組み込んでいます。本評価は基本設計時および実施設計時に行うこととし、目標としてはBEE値1.2以上の達成率100%としています。

BEE値1.0以上は「B+ランク(良い)」、1.5以上は「Aランク(大変良い)」となります。2022年度竣工物件では8物件について評価を行い、BEE値1.2以上については100%の達成率となりました。内2物件についてはBEE値1.5以上となっています。

省エネ法対象物件におけるCO2推定排出削減量

建築物運用段階におけるCO2排出量抑制のため、省エネ法上の一次エネルギー消費量の削減に努めています。2022年度の対象物件(設計物件)では、一次エネルギーの削減量は13.8%となり、また推定されるCO2排出削減量は1,372tとなりました。

  • ※推定されるCO2排出削減量の算出は、「省エネルギー計画書&CASBEE評価シート」による

東京藝術大学国際交流棟 Hisao & Hiroko TAKIPLAZA

木造+鉄骨造のハイブリット構造による建築資材のCO2排出量削減

鉄骨と木のハイブリッド構造とすることで両者の特性を生かした建築としています。様々な技術を用いることでデザインや環境配慮、安全性といった各要素を高めた、これまでにない新しい建築を実現しました。

東京藝術大学国際交流棟 Hisao & Hiroko TAKIPLAZA
東京藝術大学国際交流棟 Hisao & Hiroko TAKIPLAZA

一般的な鉄骨造と比較し今回の木造+鉄⾻造のハイブリッド構造ではCO2排出量を約28%削減しました。さらに建物に使用されている木材に含まれる炭素により、約175t分のCO2を建物が固定していると言えます。(One Click LCAによる前田建設の算出)
運用時の省エネ性能(オペレーショナルカーボン)とともに、建設資材等の建設時のCO2排出量(エンボディードカーボン)を算出し、ライフサイクルで算出・提示できる体制を整えている。

東京藝術大学国際交流棟 Hisao & Hiroko TAKIPLAZA

ZEH デベロッパーに登録

当社では、得意とする集合住宅建築において、快適な居住環境を実現する開発技術 集合住宅向け「床チャンバー空調システム」を軸にZEH-M(ゼッチ・マンション)の設計・施工を推進するなか、一般社団法人 環境共創イニシアチブが公募する、ZEH-M普及の中心的な役割を担う「ZEHデベロッパー」(C登録)に登録認定されました。
政府目標として掲げられた2050年度のカーボンゼロ達成に向け、積極的にZEH-Mの提案から設計・施工に結び付け、その普及に取り組んでまいります。

※ZEHデベロッパー
「ZEH-M普及に向けた取組計画」「その進捗状況」「ZEH-M導入計画」「ZEH-M導入実績」を一般に公表し、ZEH-Mの案件形成の中心的な役割を担う建築主や建築請負会社のことです。ZEHデベロッパーには、「マンションデベロッパー」(D登録)と、「建築請負会社」(C登録)の2種類があります。

●ZEH-M 実施事例

名  称:プラウドタワー亀戸クロス

発  注  者:野村不動産株式会社
三菱地所レジデンス株式会社

所  在  地:東京都江東区

住  戸  数:全934戸

竣  工:2022年3月

プラウドタワー亀戸クロス

建物運用時のCO2排出量削減:中規模事務所ビルのZEB化改修

当社はZEBを推進するにあたり、ZEBリーディングオーナー、ZEBプランナーに登録し、設計・施工およびコンサルティングまで行う総合省エネプランナーとしての取り組みを進めています。
特に、既存建築物におけるZEB化改修は新築に比べて実施例が少ないなか、中規模事務所ビルであるMKD名古屋ビル(愛知県名古屋市)、一口坂中央ビル(東京都千代田区)において、断熱や日射遮蔽等の外皮性能の向上により熱負荷を削減した上で、空調の再設計を実施しました。さらに汎用的な省エネ技術を組み合わせることにより、両ビルともにZEB Readyを実現しています。
今後も、新築および改修の「W ZEB」(ダブル・ゼブ)に取り組むことにより、ZEBのリーディング企業を目指します。

一口坂中央ビル
一口坂中央ビル

施工段階での取り組み

建設業界では、CO2排出量の約7割を占める軽油使用量を削減するため、省燃費運転を推進しています。当社では、省燃費運転教育をCO2排出量の削減に効果的な手段の一つと位置づけ、座学教育、実技教育、アイドリングストップの徹底、定期検査の実施の4項目について着実な実施を推進しています。2022年度は座学教育実施率60%、実技教育実施率44%、アイドリングストップ79%、重機などの定期検査実施率78%となり、この活動により約4300t-CO2相当の削減に寄与しました。今後も継続的に取り組んでいきます。

省燃費運転教育

温室効果ガス排出量(スコープ3)

温室効果ガス(以下、GHG)の排出量について、当社では事業活動を行う際に消費する「燃料の燃焼による直接的な排出量(スコープ1)」と「電力使用による間接的な排出量(スコープ2)」に加え、事業活動の上下流において間接的に排出されるGHG排出量(スコープ3)を把握し、開示しています。
当社は「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省・経産省)」に基づき、スコープ3を算定しています。2022年度における排出量の詳細は、以下のとおりです。

気候変動に対する取り組み:【KPI】事業活動の上下流において排出される間接的な排出量(スコープ3)

SBTによるGHG削減目標の達成に向けた取り組み

2022年度のスコープ1+スコープ2のGHG排出実績は、81,807t-CO2となり、2022年度目標値※198,787t-CO2以下を達成しました。前田建設工業単体のスコープ2(電力使用によるCO2排出量)についてはトラッキング付き非化石証書により全使用量分をオフセットし、RE100を達成しています。
スコープ3のよるGHG排出実績は2,497,393t-CO2となり、2022年度目標値※26,363,431t-CO2以下を達成しました。
なお、スコープ3目標値はカテゴリー11の集計範囲および集計方法を変更したことにより見直しが必要なため、ホールディングス化によるグループ集計範囲の見直しとともに目標値を更新予定です。

※1:スコープ1+スコープ2の目標値:2018年度の実績を基準値とし、約1.7% / 年度削減

※2:スコープ3の目標値:2018年度の実績を基準値とし、約2.5% / 年度削減

2030年目標:
スコープ1+スコープ2のGHG排出量を20%削減(2018年度比)
スコープ3のGHG排出量を30%削減(2018年度比)
※カテゴリー11:当社が施行した建造物の使用に伴うGHG排出量
集計範囲:
前田建設工業(株)、(株)エフビーエス、フジミ工研(株)、(株)JM、光が丘興産(株)、(株)ジェイシティ

2022年度の取り組み状況

スコープ1+スコープ2(前田グループ全体)
スコープ1+スコープ2(前田グループ全体)
スコープ3
スコープ3