トップメッセージ

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社会課題の解決に貢献する「総合インフラサービス企業」として変革を果たし、持続的成長をめざします

 建設業をめぐる構造変化が進むなか、新型コロナウイルスによる衝撃も加わって、2020年は激動の年となりました。

 一方、前田建設工業は前田道路、前田製作所とともに新ホールディングスの設立を決定し、2021年10月より新たなスタートを切ります。変革期を乗り越え、社会から信頼され続ける会社となるため、当社がめざしていく方向性を前田建設工業代表取締役社長・前田操治が語ります。

新型コロナウイルスがもたらした影響

 2020年度には、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、人々の暮らしや社会・経済に大きな影響をもたらしました。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表すとともに、罹患されている方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

 前田建設工業では、内勤者については早期からテレワークを拡大して運用し、対策を取ってきました。私自身もテレワークを実践することで、予想以上の生産性の向上や、100人規模のコミュニケーションでの有効性を実感し、働き方改革の推進につながったと感じます。一方で、請負事業で現場を担う社員には出勤を求めざるを得ない状況があり、こうした事態に関しては、業界のガイドラインを見直していくきっかけとなりました。

 業績面では、コロナ禍の影響は想定よりも軽微だったといえます。特に、数十年単位の長期契約となるインフラ運営事業(コンセッション)では、感染症の発生は自然災害と同じように想定しうる不可抗力のリスクとして当初から契約等に織り込んだものです。また、安定顧客からの受注拡大や設計施工比率の向上など、安定した収益確保に向けてこれまで進めてきた改革が形となり、結果として2020年度はグループ連結で増収増益となりました。

「脱請負」で変化に挑み、社会課題への対応力を高める

 当社は長い歴史の中、品質と工期を守り、暮らしに不可欠なインフラを支えることで社会に貢献してきました。しかし、人々の価値観が変化し、インフラに求められるものが多様化していくなかで、請負事業に徹するだけでは社会の期待に応えることはできません。当社は事業主目線から社会課題への理解を深め、提案力を磨いていくとともに、2011年には「脱請負」を掲げ、官民連携のコンセッションや再生可能エネルギー事業で実績を築いてきました。これは、「請負」と「脱請負」の両輪で取り組むことによる、外部環境に左右されにくい安定収益基盤の構築にもつながると考えています。

 「脱請負」の根底にあるのは、本業を通して社会課題を解決し、社会とともに成長をめざすCSV※1の考え方です。近年、世界的に注目が高まるSDGs※2は、当社にとってはこれまでの取り組みの延長線上にあり、親和性が高いものと考えています。グローバルな潮流と足並みを揃えていくため、2021年7月には国連グローバル・コンパクトに署名しました。

 気候変動への対応では、2019年にSBT※3認証を取得するなど取り組みを強化する最中にあります。サプライチェーンやライフサイクルでのCO2を管理・削減していくためにも、「脱請負」により開発・設計から参画することは重要です。また開発中のバイオマス発電事業では、原料となる木質ペレットの供給元に対し、違法伐採はもちろん、児童労働や強制労働がないことを確認するため、FSCのCoC認証※4取得を条件としたことは言うまでもありません。さらに、建設業で多く活躍する外国人技能実習生の方々を直接受けいれている協力会社に人権配慮の意識を強めてもらう取り組みも欠かせません。

新ホールディングスの設立へ

 2021年、当社は前田道路、前田製作所とともに持株会社の設立を決定しました。人口減や少子高齢化、社会インフラの老朽化、担い手不足、デジタル化の流れといった大きな環境変化に対応し、強固な経営基盤を築いていくため、極めて重要な決断だったと考えます。

 3社それぞれ事業領域は異なりますが、インフラ整備を通して社会課題を解決していくという基本理念は共通するものです。各社の本業を軸にバリューチェーンの川上から川下までを結び、「総合インフラサービス企業」としてインフラの企画提案から運営・維持管理まで、ワンストップでのマネジメントを実現します。3社で検討を重ねて決定した新会社名「インフロニア・ホールディングス」には、インフラに対して新たな挑戦を続けるパイオニアになるという決意が込められています。

 透明性あるガバナンスと意思決定の迅速化のため、新会社は経営の監督と執行を分離し、取締役会の過半数を社外取締役とする指名委員会等設置会社としました。取締役と執行役は、3社の社外の取締役・監査役からなる暫定指名委員会で候補者一人ひとりを面談して選出し、そのプロセス自体が「グループ全体を中長期で見通す視点」を養うものになったと考えています。

 また、ホールディングス化により社員の活躍の場はさらに広がります。既に当社内でも従来の部門の壁を超えた人事改革を進めていますが、新会社では個々人が持つ能力を最大限に活かして働けるよう、いっそう柔軟で自由度の高い人事制度を整えていきます。

MAEDAの次の10年(NEXT10)、次の100年(NEXT100)でめざす姿
MAEDAの次の10年(NEXT10)、次の100年(NEXT100)でめざす姿

社員とともに次の100年の成長に向けて

 前田建設工業は、先人たちのさまざまな功績により創業100年を超える歴史を築いてきました。それに深く感謝しながら、今度は私たちが主役としての責任を全うし、次の100年を切り拓いていかなければなりません。多様化、複雑化する社会に価値を提供していくには、機能や品質以上の、社会的、文化的、芸術的価値や感性といったものも求められています。そして、人を引きつけ、動かしていくのは、新たな変革にも果敢に挑戦する姿勢であると考えます。

 新体制のもと、グループはもとより、業界全体、さらには業種を超えたパートナーシップ(SDGsのゴール17)を深めていきます。外部から新たな知見を得て技術開発を加速させていくため、2019年に開設したICI※5総合センター(茨城県取手市)は、当社のオープンイノベーションの思想を象徴するものです。開設以来、ここを起点に、既に約45件の共創プロジェクトが進んでいます。

 事業における付加価値利益を高め、利益の向上とともに重要なステークホルダーである社員に対して給与も連動して上がっていくことや教育の機会を提供していくことも欠かせません。当社だけが良ければ良いのでは当然なく、前友会(協力会社のうち、主要な約500社)をはじめとする多くの協力会社が抱える課題にともに取り組み、一緒に成長していくことを重視します。

 社員の皆さんには、今私たちが大きな変革の真っ只中にいることに十分に意識を高めてほしいと思います。ホールディングスという新たな器が誕生する今、その中身をつくっていくのは事業を支える社員一人ひとりです。受け継いできた前田建設工業の精神を大事にしながらも、自己否定を恐れず変化に挑み、ともに一丸となって次の100年に誇れる会社をつくっていきましょう。

代表取締役社長 前田操治
  • ※1 CSV:Creating Shared Value(共有価値の創造)の略称。アメリカの経済学者であるマイケル・ポーター氏を中心に提唱された概念で、企業が社会課題へ取り組むことで経済的価値と社会的価値を同時に創造しようとするアプローチのこと。
  • ※2 SDGs:2015年の国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、2030年までに持続可能な世界を実現するための国際目標。17の目標と169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。
  • ※3 SBT:Science Based Targetsの略称で、世界の平均気温の上昇をパリ協定で目標としている、「2℃目標(1.5℃目標)」に抑えるために、企業に対して科学的な根拠に基づく、CO2削減目標を設定するよう求めるイニシアチブ。
  • ※4 FSCのCoC認証:Forest Stewardship Council(森林管理協議会)が展開するChain of Custody(加工流通過程の管理)認証のこと。消費者の手に届くまでの加工・流通過程まで、FSCの責任ある森林管理の規格を満たした認証林から生産された木材であることを保証する認証。
  • ※5 ICI:Incubation(孵化)×Cultivation(育成)×Innovation(革新)