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PROJECT 09 前田建設ファンタジー営業部 「ロケットパンチ」編 PROJECT 09  前田建設ファンタジー営業部  「ロケットパンチ」編

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第2回:激突! ロケットパンチvs鋼板

それでは解析結果の説明をお願いします。
JSOLタキさん
それでは、実際のロケットパンチの解析結果を説明していきたいと思います。前回説明した通り、最初はロケットパンチも鋼板も同じ金属、「SS400」で製作したとしてぶつけた結果です。
「くろがねの城」いうくらいやから、SS400からでマジンガーファンの皆さんには勘弁してもらいましょ。
あっ!見たくないシーン・・・
パンチ、潰れてますよ。
でも穴は空くんやで。立派なもんや。パンチ自体はペッシャンコやけど。
JSOLタキさん
なぜこのような結果になってしまったかというと、常に「マッハ2」の速度が保たれる設定にしてあるため、後ろから押されて、圧し潰すような形で手の部分が全て変形してしまったんです。
アニメ上の本物のロケットパンチから考えると、ジェット噴射で推進力が与えられてるわな?
ジェットエンジン・・・じゃない、光子力エンジンなんでしょうかね、そこからロケットパンチのエンジン懸架装置に対して力がかかり「マッハ2」を得ていると。
JSOL山口さん
はい、解析ではロケットパンチの中心部分にあるメッシュに「マッハ2」の速度を強制的に与えているイメージですね。だから拳に固さが足りなくても・・・
後ろから強制的に押されてしまっているから、穴は空くと?
JSOL山口さん
その通りです。
なるほど・・・ちなみに中心部分ではなく、切り離された肘の周辺に強制速度を与えるシミュレーションをしたら、どうなりますか?
パンチの切り離された根元部分から火花が出る感じですね?

画像

ロケットパンチといえばやっぱり肘に強制変位、ロケット噴射です
©2009永井豪/ダイナミック企画・くろがね屋
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

JSOLタキさん
残念ながら、本件のように拳部分だけが潰れるのではなく、おそらく全体がぺちゃんこになるだけだと思います。
場所は本質的な差を生み出さないんですね。さらに全体がクシャっとなってるのはさらに嫌ですもんね。。
しかし、この手先の潰れ具合って新鮮やな。既存のロボットアニメでは見たことない表現や。
よくよく考えたら「塑性変形」による破壊モードってアニメにはないリアルな視点だね。
いやいや・・・最近のアニメはリアルにこだわってますから結構ありますよ。皆さんの世代がご存じないだけで。
JSOL山口さん
この検証では、パンチも鋼板も同じ「SS400」ですから、同等な固さの金属同士が衝突した場合、現状こうなります。
JSOLタキさん
つまり「ヤング率」も「降伏応力」のスケール倍率も同じ1倍ですからね。
ええとここで、私はわかってますけど読者の皆さんのためにあえておさらいしますと、
素直やないねえ。自分のためやろ?
(無視しながら)「ヤング率」とは「縦弾性係数」(たてだんすうけいすう)ともいい、剛性を見るためのパラメータで、数字が大きいほど変形しにくい材料、ということになるんでした。
「ヤング率」の大きな材料=力をかけても変形しにくい材料、「ヤング率」の小さな材料=力をかけると変形しやすい材料、という指標だね。
冷静に考えればマジンガーでも敵にやられて腕や脚、ジェットスクランダーにまで穴が開くから、「塑性変形」の描写がないわけではないがね。
でもロケットパンチは潰れちゃいかんです。演出的に。
けどな、今後のリアルアニメでは、そういう打撃系の武器に対し、基地や母艦で板金修理なんかしとる描写を取り入れた方がええで。
でも、この解析アニメーション、なんか私の中に新たな何かを植え付けてくれたような気がします。
プロスポーツで絶対的なチャンピオンチームしか応援できなかったはずが、万年最下位チームのにわかファンになるような感じやな?
・・・微妙にわかりづらいよね、その比喩。
頑張ってる感が伝わりますよね。金属感というか。
パンチがクシャっとなりながら、これだけ穴が開いたわけですが、これは解析時の条件である、鋼板側の「ひずみ」が23%超えてると穴を空ける、が影響してるんですよね?
JSOLタキさん
その通りです。
結論としては超合金ZはSS400ではないと・・・そりゃそうだ!、当然これではNGです!

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JSOL山口さん
そうですね。当然、「超合金Z」は「SS400」と同じ堅さではないということになります。
JSOLタキさん
そこで次に、ロケットパンチの固さを「SS400」の10倍にしました。先程の「ヤング率」と「降伏応力」をスケール10倍したケースですね。
JSOL山口さん
この時点で、現実世界だと自動車のシャーシ部分などに使用されている「ハイテン材」の約2倍の硬さになります。
「ハイテン材」って?
JSOLタキさん
高張力鋼とも呼ばれる物で、合金成分の添加や組織の制御などを行い、一般鋼材よりも強度を向上させた鋼材です。
そういえば999編でも出てきたような気がします・・・「ハイテン鋼」とか・・・それよりも更に2倍固いということですね。
JSOLタキさん
はい。「降伏応力」が1ギガパスカルくらいなので、「ハイテン材」の2倍よりも少し硬いぐらいになります。そうなると現実には存在しない強度であり、「超合金Z」と呼ぶにふさわしい領域に突入します。
で、その結果は?
うーん、なんか惜しいです!
さっきに比べたら、だいぶマシやけどな。
JSOL山口さん
私、この親指が曲がっちゃう感じが、たまらなく好きなんですよ(笑)。わかりづらいですが、拳全体も若干潰れているんですけどね。
これ親指が飛び出てるからちゃいます?もっと理想的な拳の握り方があるんやわ、マジンガー的に。
親指を中に入れて握るような?
いや、それは人差し指に中指を巻き付けるようなジェスチャーでしょ?
(無視して)エンガチョ握りこそ、ロケットパンチの理想の拳の握りであった・・・てことが分かっただけでも大収穫やな。
そして明日以降つくられるロボットものアニメのロケットパンチ系武器は、全てエンガチョ握りになるという・・・。
JSOLタキさん
山口が言った通り、他の指も少し曲がっています。
10倍でもこうなるのか。もしかして、「マッハ2」が速すぎるっていうことなのかな。
JSOL山口さん
これがただの鉄球だったら、変形もなく簡単に突き破れるでしょうね。
特に親指の付け根、このモデルだと細いですもんね。
親指以外の4本の指って、指先がちゃんと手のひらに密着してアーチ効果が得られるモデルになってるんですか?
指の部分はアーチじゃのうて、片持ち梁(片方のみで支えられている梁)みたいになってるんやな。
でも親指から考えて10倍でもNGとするんですね?

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JSOLタキさん
やはり「超合金Z」は生半可な金属ではないことが分かってきました。で、次の倍率は・・・1万倍です(笑)。
こいつは・・・いきなり来ましたよ!子どものけんかの啖呵やな(笑)
僕も「1000倍強い!」ぐらいは言ってた気がしますけど、「1万倍!」とは言わなかったかな。子どもながらにウソっぽくて。
JSOLタキさん
確かにウソっぽいですが(笑)、実は10倍から1万倍の間の検証も、もちろん行っています。しかしすべて「塑性変形」が発生してしまったんです。ですので、この1万倍が最終結論としての解析結果になります!
おお、見事だな。ここまでくると完璧なロケットパンチになるね。
JSOLタキさん
もう、問答無用な強さです。「ハイテン材」の2000倍程度の固さになりますから。
でも、1万倍ってところが「いかにも」って感じで、「超合金Z」っぽさが出ているよね。
設定資料に載ってそうです。「通常の鋼の1万倍の強度だ」とか言って(笑)。
JSOL山口さん
完璧そうに見えますが、実は1万倍の強度でも「ひずみ」は生じているんです。下の塑性ひずみのコンタ図を見てもらうとわかりますが、指の部分ではなく、手首に0.1%という「ひずみ」が生じています。色が若干変わってる箇所ですね。

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塑性ひずみコンタ図

へー、指ではなく手首のリングなんですね。
実はリング形状って、ロケットパンチ的に良くないってことなのかも。
JSOLタキさん
解析モデルの精度を上げないと断定はできませんが、結果を見る限り、ロケットパンチを数回発射したら、手首を交換する必要があるかもしれません。
でも、何で指やのうて手首のリングなんやろ?
JSOLタキさん
多分、後ろから強制変位を与えていますから、手首の細くなっている部分に力が集中して「ひずみ」が発生しているように思います。
なるほど。手首の一番細いところ負荷が集中してしまうんですね。でも、手首の上下ではなく、左右の部分に負荷がかかってしまっているのは何でかな?
JSOL山口さん
おそらく壁を貫いたとき、空いた穴にリングが当たってしまって、「ひずみ」がさらに生まれてしまっているのではないかと。
なるほど、あのリングは邪魔、本来あっちゃいけない部分というわけですね。
ロケットパンチを極めると、余分な飾りはいらず、滑らかじゃないといけないっちゅうことやな。
あとは親指のせいかもしれん。
あ! そこを逆手に取って、その部分の剛性を上げるために「アイアンカッター」を付けたのかもしれませんよ。
つまり「アイアンカッター」は構造補強部材であると?
ほたら、武器として外に出したら剛性下がってあかんやないか!?・・・いや、斧部分そのものやなくて、斧の内部収納レールが剛性を上げてるんか・・・?
まぁ、「アイアンカッター」のモデル解析もいつかしていただくということで・・・。

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JSOLタキさん
ということで、ひとまずの結論としましては、「超合金Z」は鋼材としてポピュラーな「SS400」の1万倍の強度を持つ金属という結果が得られました。
JSOL山口さん
これだけの固さがあれば、厚さ30cmの鋼板を軽々と撃ち抜くことができます。
1万倍という、現実を超越したアニメっぽい感じが、むしろ正解な気がするな。
「超合金Z」で作られたマジンガーが、敵の攻撃をモノともしないのがも納得です。
JSOL山口さん
皆さん、せっかく「超合金Z」、もといロケットパンチの威力が分かったところで、試してみたくないですか?
試す? いったいどういうこっちゃ?
JSOL山口さん
我々、このロケットパンチの威力が分かったところで、どうにも試してみたくなりまして、作っちゃいました(笑)。
・・・あ、前回仰っていた「ここまでのモデル作成」の理由ですか?
JSOLタキさん
はい(笑)。鋼板で我慢できなくなって、、実際にこのロケットパンチで機械獣を破壊してみたくなったんです。
でもその機械獣もこのWebではお披露目できないんじゃ・・・?
であれば、機械獣でない未知の敵にしてください!
JSOLタキさん
そう来ると思って、工夫をしています。
しっかし、ここまでやっていただけるとは・・・『バーチャル実験2課数値解析班』、恐るべしやな・・・。
次回、検証の総決算「ロケットパンチを未知の敵に当ててみた」にご期待ください!
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