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PROJECT04 世界初、民間国際ロボット救助隊を創ろう編 パート6:これがロボット救助隊の姿だ(前編) page01
この救助隊の意味と本質
これまでは各社/各組織のプロが各々の観点から、ロボット救助隊に必要かつ分担可能な要素をイメージし具体化している過程をご報告してきた。打ち合わせ時の熱気や互いの成果などが各社/各組織を刺激し、少なくない相乗効果を生み出してきたと思う。しかし、賢明な読者諸氏は既にお気づきのことと思うが、ある大きな課題を後回しにしてきたのも事実である。
今月から総集編をお送りするにあたり、まずは今まで先延ばしにしてきた「ある大きな課題」と向き合う必要がある。それは、先月紹介したオンワード商事さんの疑問そのもの、でもある。

「この活動全体のコンセプトや、ロボット救助隊のテーマというものをいただきたい。」

本救助隊の意味や本質とは何か。確かにこれについて即答はできなかった。しかし思い直せば、これまでの活動の中に「材料」は数多く散りばめられていた。
レスキューは「技術が高い」「頼もしい」だけではいけない。「やさしく」なければ。(IRS−U 真壁リーダー)
ロボットは被災者発見後そこを動いてはいけない。肉親の励ましの声が届き、話せることが大事。(千葉工業大学 小柳先生)
目的遂行のために国境を越えた仲間意識も持てる人間なら、どこへ行っても通用する。(ANA 中村機長)
人間ができないことをできるようにしていく。人間の安全を守る。(IRS会長 東北大学 田所先生)

しかもそれらが事前の打ち合わせなど無く、ある方向に統一されていたのだから有り難い。そこで既に本文中にご登場いただいた多くの意志や言葉を振り返り、やや強引ではあるが次のような言葉にまとめてみた。

「純粋な形・結集する力」

制約なしにレスキューの理想像だけを考える。異なるバックグラウンドを持つ人たちがそのために力を結集する*1 。その新しい救助隊はロボットや専用重機、専用飛行機という先端技術を用いた高い機動性と能力を持つのは当然のこと、同時にその機能が優しさによって包まれており、人間に対して真直ぐ純粋で、透明感すら漂うもの。これが本救助隊のコンセプトであり、テーマである。
以上をオンワードさんにお伝えした後の制服検討会から、今月のコンテンツを始めたい。場所は再びIRSさんの川崎ラボである。
草薙氏 草薙氏: 前回はわがままを言って、皆さんお忙しい中コンセプトヒアリングのお時間を作っていただいたものですから、実はこちら勝手にプレッシャーがかかっていました、特に私が・・・。
ただ以前もご説明した通り、多分に夢の多い話とはいえ今回も通常の業務通り、多くの関係者の方からこの活動に対する想いや目指すべき姿、目標などをお聞きし、それを極力正確に把握することで、デザインという作業の大事な一歩にしたかったものですから。
増田氏 増田氏: 「透明感・純粋・結束力(絆)・力強さ」といったキーワードを後から頂き、それに沿って「カッコいい」最高の物を仕上げるべく頑張りました。
B主任 B主任: 制服をデザインするのも大変な仕事でんなぁ。経営ビジョンが明確でキーワードもすんなり出るような会社ってむしろ少数でっしゃろ?それを引き出す言うても、インタビュア能力ちゅうか、デザイン力そのものとは、全く異なる能力やもんなぁ。
D職員 D職員: あるいはクライアントさんから、いきなり具体的なデザインの指定がくるとか。例えば「ANAさんみたいの」とか・・・
草薙氏 草薙氏: 例えばある会社の多くの方とお話をさせていただく間に、キーワードとしてはまとまらずとも、組織の顔やイメージがクリアになってデザインが浮かぶような事もありますね。
増田氏 増田氏: これからレスキュー服のデザイン案をお見せしますが、実は前回打ち合わせで一番印象に残ったのが、現役のレスキュー隊員である真壁リーダーでして・・・。
草薙氏 草薙氏: デザインを始めても真壁リーダーの姿が浮かぶらしいんですよ。だから非常に現実的な、飛んでいないというか、そういう印象を受けるかもしれません。
そう言いながらデザイン画を机に並べる草薙部長。一枚絵が増えるたびに、小さなどよめきが沸く川崎ラボの会議室。
C主任 C主任: ・・・服飾デザインというと、手書きのスケッチのようなものが出てくるのだと思い込んでいましたが、CGなんですね。
草薙氏 草薙氏: 後程お見せする「基地用制服」については、そのパターンですよ。
増田氏 増田氏: 基本パターンとしては3つ考えました。現行レスキュー服の正常進化型であるA〜C、世界で活躍する忍者をイメージしたE、Japanese CowboyをモチーフとしたFです。
A-1
レスキュー服A-1 レスキュー服A-1
<以下、増田デザイナーの解説>
現行の物に一番近いスタイルをブラッシュアップ。スタンドカラーと大きめアウトポケットでスタイリッシュに。ベルトのバックルを隠せる仕様でバックルが邪魔になりません。
B-2
レスキュー服B-2 レスキュー服B-2
肘、膝の切替えがスタイリッシュな印象を与えます。 肩章にはあえて白を使用し、汚れた分だけ自信と誇りが持て、個々のモチベーションを高める仕様にしました。
C-1
レスキュー服C-1 レスキュー服C-1
ショールカラーとフラップ、肘、膝当て等全体的に丸みを持たせ優しい印象にグリーン×オレンジが親しみ易さ、安心感を与えます。
正常進化型といいながらカラーリングは斬新です。
©オンワード商事
E-1
レスキュー服E-1 レスキュー服E-1
ズバリ!!!『忍者』 クール&シンプル。任務を全うする使命感、『和』をイメージするカラー(藤色)でのデジタル系の迷彩柄。ポケットも内側に袋を付けるタイプにし、あくまでもスマートな印象に。
E-2
レスキュー服E-2 レスキュー服E-2
 
世界における日本のアイデンティティの定番ですかね
©オンワード商事
F-1
レスキュー服F-1 レスキュー服F-1
ロボット達を『馬』にみたて、災害地に不屈の精神を持って立ち向かう。その精神はまさにカウボーイ。そんな彼らが着用したウエスタンシャツを都会的にしたデザインに仕上げました。
肩や胸のあたりにヒラヒラ(正式には何というのでしょうか?)をつけたい感じです
©オンワード商事
草薙氏 草薙氏: ところが、これらをご覧になってどうお感じになったかどうか・・・少なくとも私はですね、まだまだ堅いと。もう少し遊びたい印象を受けましてね。
真壁氏 真壁氏: ちょっと見なのですが機能的にはほとんど問題のない、本格的なデザインだと思いますよ。
草薙氏 草薙氏: ええ、そういう意味では確かに良いデザインだと思います。
増田氏 増田氏: やはり前回打ち合わせの際の、皆さんの姿勢に、大きな影響をうけましたね。
初回打ち合わせの様子
初回打ち合わせの様子
©IRS
前回の打ち合わせでは、レスキュー服について真壁リーダーが予めお描きになったデザイン画をお持ちになるなど、非常に熱意あふれる実践的なやり取りに終始した。隊員の「バンザイ状態」での作業性の向上、取り出しやすく作業の邪魔にならないポケットの位置、ひじ・ひざパッドの利点や欠点、バックルやベルトの考え方、ホイッスルや無線の取り付け位置、さらには隊員の炎天下におけるヒートストレス対策や、現状よりタフな感染防護衣の必要性、使用繊維の種類と難燃性など、幅広くかつ深く、検討が進められた。そのような中、例えばホイッスルや無線機能については前回ご報告した通り、ヘルメットに内蔵させることにしたわけである。
草薙氏 草薙氏: そこで私が「おい、もう少し遊んでみよう」と働きかけて、もうひとがんばりしてもらったのが、このデザインです。
G-1
レスキュー服G-1 レスキュー服G-1
Rescue=Hero
特別な存在。奇跡を呼び起こす。その勇姿はまさに実在のスーパーヒーロー。そんな、ヒーローが着用するにふさわしいスタイルです。
G-2
レスキュー服G-2 レスキュー服G-2
 
「現実」と「ヒーロー」の間で絶妙なバランスを持つ、すばらしいデザインです
©オンワード商事
ここで、会議室にいた女性を中心に賛同の声が多数上がる。そのリアクションを見て喜ぶ、草薙、増田の両氏。
D職員 D職員: いやー、これは斬新ですね。ヒーローというテーマもいい。僕はこれがいいなあ。
真壁氏 真壁氏: 遊んでいるといいながら機能的にも問題ないと思います。「レスキューはかっこよくなくちゃ」とも、常々思っているんですよね。
C主任 C主任: この中から一つに絞らなければいけないのか・・・厳しいな。
B主任 B主任: どれも素晴らしいからなぁ。
しばし沈黙が会議室を支配する。やがて、ゆっくり口を開く真壁リーダー。
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ロボット救助隊の編成
真壁氏 真壁氏: これ・・・思ってたんですけどね・・・どれも素晴らしいデザインで一つには選べないです。だからというわけじゃないけれども、例えば救助隊の役割ごとに異なったユニフォームでも良いと思うんですよね。
真壁リーダーの意見はこうだ。このロボット救助隊は民間とはいえ、プロのレスキュー隊、つまり現役の消防隊員と一緒に行動することで最も威力発揮するはず *2。だから我々もプロにリーダーシップをとっていただきながらの活動を前提に考えたい。
災害現場には被災者はもちろん、被災者の家族や、既に救助を開始されている一般の方が数多く存在し、そこへ現地の警察や消防が到着するなど、混乱状態にある。だからこそ、ひと目で「レスキュー隊」と認識してもらえる「オレンジ」が制服には必要だし、最前線で危険と隣り合わせて活動するプロのレスキュー隊用制服は、現行の延長線上である必要がある。だから襟の形状はF・G案などは難しい。なぜならロープを首に回して摺動させることが、少なからずあるからである。
一方、ロボットのオペレーター、コマツ製特別重機のオペレーター、建設会社職員の制服については斬新なものでよく、F・G案でも問題がない。なおロボット救助隊ということで制服にも何か特別な装備が必要かと考えたが、コマツさんタイプのコントローラにしても、今IRSのロボットたちで主力になっているラジコンプロポやゲームコントローラーなどにしても、特段の工夫を要するものではない、という結論でデザインを進めていただいた。

ここまで話がまとまったとき、IRSの女性から意見が出た。「これらデザイン案は素敵なものばかりだが、大怪我をなさっている方、精神的にダメージを負っている方などには色がキツイのではないか。」と「ANAさんのアテンダントさん始め、女性も多数この救助隊に参加しバックアップに従事するのであれば、もうすこしやわらかい色と印象の制服が欲しい。」これについても異論はなく、そこでオンワードさんにはその日最も人気を集めたG案ベースで、色の異なるものをさらにデザインしていただくことになった。
真壁氏 真壁氏: しかし・・・これ、今すぐにでも本当に着たいなあ。
C主任 C主任: どこかの消防で採用されませんかね。
D職員 D職員: 今回採用されなかった案については、ウチの新しい作業着として採用しませんか?就職人気ランキングがあがるかもしれませんよ。
真壁氏 真壁氏: 実現したいですね。本当に。
草薙氏 草薙氏: そこまで好評でよかったです。今日ここへ来るまでの電車内で、増田と二人で不安で・・・。
増田氏 増田氏: ここまで喜んでいただいて、逆に感謝しています。
結局、本ロボット救助隊の現場用制服としてはレスキュー隊員用としてA案、バックアップ部隊用についてはG案が採用となり、更なるブラッシュアップへの意見交換が続いた。
A案についてはまずベルトループをより太く、引っ掛けても破れないように変更。襟はスタンドカラーとし、必要に応じて襟ボタンをはずし「立てる」ことにより、首の防護面積をさらに広く取れる仕様をお願いした。特に後頭部の防護にも留意して欲しいとの要望である。その他全体的にリフレクター(反射素材)を増やし、夜間などの非視認性を向上させ、背面には日本から救助に来たことを強く印象付けるロゴが加わることになった。
G案についてはバックルカバーをA案同様とし、活動中にこれが原因で人やモノに不要な傷をつけないための工夫を施した。さらに機会は少ないかも知れないが、水難救助などの際、制服上着をすばやく脱ぐこともあるため、「かぶる」のでなく「前開き」に変更していただく要望も出させていただいた。
そして共通項として念を押させていただいたのは、これら制服が要救助者と接触する点であり、デザイン画に反映はされないものの、素材選びには慎重を期していただいた。
D職員 D職員: 軽くて丈夫で難燃性があるだけでも大変なのに、触れた感じも優しい、か・・・。
B主任 B主任: そういえば前回話が出た防刃ベストはどうなったんやろか?
オンワードさんからは、宿題となっていた防刃ベストやヒートストレス対策に関する検討結果の説明もあった。
実はベスト、今でも実際に取扱いがあるそうだが、いわゆる外衣だけ、中の特殊金属や繊維については別会社のご担当で、詳細については公表できないとのこと。

ヒートストレス対策についてはカナダの会社でポンプ駆動の水冷による実例があること、さらに日本の大学でもこれ専門に研究されている先生がいらっしゃることなどが報告された。草薙部長がお話をお聞きしたのは京都工芸繊維大学の芳田先生。ヒートストレス対策として水循環スーツを着用する場合はポンプを背負うことになり、作業上困難であるから、保冷剤等を衣服の内側に施すという案や、その効果などについてお伺いしたとのこと。「絶対的な効果は望めないものの首まわり、脇下の冷却は一般的には効果がある。但し、どの程度ヒートストレスを軽減できるかについては具体的データが乏しい。」とのコメントだったらしい。(芳田先生、どうもありがとうございました。)以上、本当に手抜きの無いオンワードさんの対応で、一同、頭が下がる想いであった。
なおこのヒートストレスに関しては米軍や自動車レース・ラリーの世界でクーリングスーツ*3として実用化されており、保冷材タイプも水冷タイプも両方、使用されている。

さてそれではいよいよ、完成した最終版制服デザインと共に、ロボット救助隊の構成を説明していこう。
ロボット救助隊<レスキューチーム>
ロボット救助隊<レスキューチーム>
現状のIRS−U(現役消防士)をベース*4(現役消防士)とし、現場最前線で救助活動に従事するチーム。
ロボット救助隊<レスキューチーム>防刃ベスト着用時の姿
こちらは防刃ベスト着用時の姿
©オンワード商事
ロボット救助隊<メカチーム>
ロボット救助隊<メカチーム>
各大学の先生、ロボットおよびコマツ製専用重機、747Fのオペレータならびに各社エンジニアが着用。<レスキューチーム>をバックアップする。
©オンワード商事
ロボット救助隊<メディカルチーム>
ロボット救助隊<メディカルチーム>
隊員が着用。被災者および隊員自身全体をバックアップする。
©オンワード商事
なお、参考までに、制服に採用されているロゴやワッペンもオンワード、増田デザイナーの作品である。じっくりとごらんいただきたい。
増田デザイナーによるロゴやワッペン
©オンワード商事
B主任 B主任: かっこええ、もうこれで十分や。これで救助隊完成。あとは出動あるのみ!
D職員 D職員: まだまだですよ。そもそも、草薙部長達は、これ以外に基地用の制服も、しかも男女別に考えて下さっているんですよ!
草薙氏 草薙氏: はい。それはこの後お見せしたいと思っています。
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ファンタジー営業部の第4弾「世界初、民間国際ロボット救助隊を創ろう」編で大変お世話になった、株式会社オンワード樫山さんは、今年07年9月1日より純粋持株会社体制へ移行されました。
これに伴い本文中でご協力いただいた商事事業本部さんは同日より「オンワード商事株式会社」の商事事業本部さんへと変更になっております。第4弾本文ほかの変更につきましては、この注意書きをもちまして当面ご容赦いただきたく、よろしくお願いいたします。
結集する:*1
現実には本連載終了後も、今回検討の一部だけでも実現に向けた活動を継続させるべきで、そういった意味で今後も、新たな力を加えながら続けて行きたいという想いもあります。
最も威力を発揮する:*2
真壁リーダーの正確なコメントは次の通り。「民間人(一般市民)の方が多く救助隊員に入るようですが、実在の国際緊急援助隊のようにプロが入るべきだと思います。というのは、やはり何が起こるか分からない災害現場において、普段訓練を行っている我々と、一般の方では危険予知や二時災害の防止の面において非常に難しいと思います。また、精神的な面や肉体面で非常に困難であり、PTSDなどのことも考えられます。」・・・なるほど、深くうなづける意見である。あるいはいっそ真壁リーダー達も含め、謎の大金持ちに丸々雇っていただくことにするべきか・・・。
クーリングスーツ:*3
・・・ではないが、ちなみに「ギガクールスーツ(GIGACOOL Suit)」といえばオンワード商事さんが今年4月14日に発表された、最新技術を駆使することで、従来の盛夏スーツと比べて、胸部で約4倍、背中部で約6倍、大腿部で 約3倍(全てオンワードさん社内比較の最大値)という優れた通気性を実現したスーツの事。「五大陸」「J.プレス」などメンズ主力ブランドの盛夏スーツに採用された。
IRS−Uをベース:*4
すると難しいのは既存の公的救助隊、例えば国際消防救助隊(IRT-JF)や国際緊急援助隊の派遣に関する法律との関係もあり、すると「民間」救助隊でありながら相手国の「要請主義」を遵守するのか?いや民間なのだからネットで市民からメールが一本来ても行くべきだ、いやもっと柔軟に災害発生を覚知したらすぐ行かなければ・・・など議論が尽きない事確実であるため、今回の検討では「謎のスポンサーの意向次第」ということで、ご了承いただきたい。
 
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