2022年08月23日鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」を構築 ~仮想空間での自動配筋・自動配筋検査を実現~

 インフロニア・ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、社長:岐部一誠)グループの前田建設工業株式会社(本店:東京都千代田区、社長:前田操治)は、建築分野の鉄筋工事を対象とした生産現場において、仮想空間上で自動配筋・自動配筋検査を実現できる鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ※1」を構築し(特許取得済み※2)、設計・施工方式のプロジェクトを中心に適用を開始しました。

 

<開発の背景>
 従来、鉄筋工事にBIM/ICTを適用するために注力してきたのは、生産プロセス(図面作成⇒鉄筋加工⇒配筋・組立⇒配筋検査)の最後にあたる配筋検査プロセスでした。しかしながら、配筋検査プロセスに用いるシステムは、検査後の帳票作成の作業時間を低減させることに大きく寄与できるものの、それ以前の生産プロセス内で発生する不具合の低減や作業の生産性とは結びつきにくい側面がありました。さらに近年では配筋検査において画像認識等の技術を活用して作業の効率化を目指す取り組みも見られ、今後は画像と照合させるBIMデータを正確に作成する技術も必要になります。
 配筋・組立の完成形は、作業が完了してからでないと具体的な形にならないため、組立が終わってみないと不具合が発見しにくい傾向にあります。それらを見逃さないために検査を強化するだけでは生産現場における労働生産性の向上にはつながりません。
 そこで、配筋検査プロセスの前、すなわち図面作成や鉄筋加工、配筋・組立の生産プロセス内において使用される生産情報の不具合を排除し、正しい生産情報を元請会社と鉄筋専門工事会社が連携できる合理的なワークフローを実現させることが、結果的に生産現場における不具合の発生を低減させ、作業の効率化に寄与できると考えました。

 

<鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」のワークフローの特徴(図1)>
 今回開発を進めた「アトアレ」では、生産現場での不具合を低減させるワークフローを実現させるために、以下の特徴を有しています。
1.    仮想空間上における鉄筋を鉄筋BIM※3と配筋BIM※4に分けてデータの役割を考えました。
2.    鉄筋部材を構造計算データと仕様書から自動配置させ、鉄筋BIMデータを作成します※5
3.    自動配置された鉄筋部材は、自動配筋検査機能により、常に設計図書と参照し、間違ったデータを次工程に流さない仕組みを有します。
4.    鉄筋BIMデータは、鉄筋専門工事会社が使用する加工図・加工帳※6の作成システム※7と双方向にデータ連携ができるインターフェースを有します。
5.    加工図のデータを鉄筋BIMデータと入れ替えることで、生産現場における配筋状態を再現する配筋BIMデータを作成(図2)し、再度自動配筋検査と加工図データの検査も実施できます。
 

<鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」の主な効果(図1)>
 「アトアレ」を試行的に適用した生産現場のワークフローでは、以下の効果が確認できました。
1.    鉄筋納まりの検討に必要なデータ作成作業が約90%短縮されました(ポイント❶)。
2.    自動配筋検査(図3)により正しく作成されたデータを鉄筋専門工事会社が受領することで、加工図・加工帳の作成作業が約60%短縮されました(ポイント❷)。
3.    鉄筋/配筋BIMのデータを組立作業前に、工事監理者や元請会社の技術者、鉄筋専門工事会社の職長、技能労働者が完成形を確認することで(図4)、配筋・組立や配筋検査、是正作業が元請会社では最大90%、鉄筋専門工事会社では最大50%低減されました(ポイント❸)。
4.    (将来対応)配筋BIMのデータを配筋検査のプロセスで使用されるシステムと連携させることで検査業務の効率化も視野に入れていきます。さらには、鉄筋加工や物流、間配り、配筋・組立の作業とも連携させ、生産プロセス全体で正しいデジタルデータが流通する仕組みづくりにつながります(ポイント❹)。

 

<今後の展開>
 将来的には、さらなるBIMデータの構築手法やデータ連携のワークフローを改善することで、構造設計者における配筋検討作業の効率化や鉄筋専門工事会社における業務のデジタル化を推進していきます。また、鉄筋加工工場における絵符の在り方や、生産現場における材料の間配り、配筋検査の手法を確立させ、デジタルデータを活用した働き方改革の実現に向けた開発・社会実装に取り組みます。


 

図1 鉄筋/配筋BIMシステム「アトアレ」のワークフローと主な効果

 

 

図2 鉄筋BIMと配筋BIMの関係図

 

 

図3 自動配筋検査の状況
柱四隅主筋180°フックと梁主筋1段筋が干渉している(赤く表示されている箇所)。
ルールを守り干渉しないように自動配置しますが、自動的に解決されない箇所はリストとして抽出されます。

 

 


図4 現場施工前に完成形を確認
構造設計者や鉄筋専門工事会社を交えて鉄筋組立に関する議論を進めます。
作業前に完成形が見えるため、作業を効率化させる作業手順のアイディアなどが鉄筋加工の前に共有しやすくなります。

 


※1 アトアレ:ATELIER FOR ASSEMBLING REBAR IN A VIRTUAL SPACE(仮想空間で鉄筋を組み立てるアトリエ)の略称。
※2 特許番号:特許6975568、施工支援方法、および、施工支援システム
※3 鉄筋BIM:設計図書から作成されたBIMデータ(設計図に準拠した躯体+鉄筋のBIMモデル)のこと。
※4 配筋BIM:鉄筋BIMのデータと鉄筋加工のデータを入れ替え、実際に配筋・組立の状況が再現できるBIMデータのこと。
※5 鉄筋BIMデータ:対象は主筋(柱、地中梁、梁)、基礎、STP、HOOP、など。柱梁の仕口部分は自動的につながる。
※6 加工図・加工帳:加工図は主に鉄筋専門工事会社の職長が、鉄筋加工工場に加工を依頼するために鉄筋部材の位置や長さを確定させた図面のこと。これらの情報を集計し、加工を依頼するリストを加工帳と呼ぶ。
※7 加工図・加工帳作成システム:連携する加工図・加工帳作成システムは限定していません。条件として「アトアレ」で生成されたデータを双方向で連携できる機能を実装する必要があります。今回の検証では加工図・加工帳作成でDIN-CADシステム、絵符の作成でDIN工場管理システム(いずれもデーバーインフォメーションネットワークス株式会社)を使用しました。


 

<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp
 

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