前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治、以下、「当社」)は、山岳トンネルにおける発破掘削において、「発破パターン作成支援システム(以下、「本システム」)」(図-1)を福井県大野市で施工中の「国土交通省近畿地方整備局大野油坂道路東市布トンネル工事(延長 1,163m)」(以下、「本工事」)に導入し、切羽の発破パターンと適正装薬量を自動作成できたことを確認しました。さらに発破工程の適正化により、トンネルの計画掘削断面以上の余分な掘削である“余掘り量”の40%低減を実現しました。
図-1 最適発破サイクルイメージ図
山岳トンネル工事における発破工程は、変化する地質や地山条件に対応した発破パターンの計画や削孔ごとに適正な火薬装填量(装薬量)の決定において、熟練技能者の経験に基づく判断が不可欠でした。一方、建設業界では技能労働者不足が深刻化しており、山岳トンネル工事においても省人化や生産性向上が求められています。
また、過装薬や弱装薬による発破結果のばらつきは、トンネルの計画掘削断面に満たない出っ張りが生じる“あたり”や余掘りの増加につながるだけでなく、あたり取りや吹付コンクリートといった後工程のサイクルタイム増加、地山の緩みの助長による肌落ちリスクや地山変位の増加に繋がるため適切な発破計画が重要です。
本システムでは、発破工程における、以下の3つのデータを活用し地山の状態に応じた、切羽ごとの抵抗線長および削孔ごとの適正総薬量の自動算出を可能とし、上述の課題解決をはかり安全性、施工性、生産性向上、コスト低減を実現しています。
① 削孔データ
全自動ジャンボにより、削孔ごとに取得する削孔位置、削孔角度、削孔長を3次元データおよび、打撃圧、回転速度などのデータから切羽岩盤の硬さを算出します。
② 点群データ
発破直後の素掘り面を3Dスキャナにて点群計測し、計画掘削断面に対するあたり、余掘りを把握し、発破の良否を判定します。
③ 切羽評価結果のデータ
当社開発技術の「AI切羽評価システム」により風化や亀裂等を写真から判定・評価することで、硬さ以外のパラメーターを①の削孔データと組み合わせることで、より精緻に切羽の状態を把握します。
【導入効果】
施工中の本工事において、本システムを導入(写真-1)し、適正装薬量の決定と100g単位の正確な装薬を行い発破することで、余掘り厚さを平均約7cm、余掘り量を約40%低減しました。
写真-1 本システムを活用した施工状況
当社は、引き続き本システムのさらなる改善を図るとともに、「自動装薬技術」の開発と連携することで、削孔~装薬作業の自動施工実現に向けて取り組んでまいります。
<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp