前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:前田操治、以下「当社」)は、熊本市上下水道局(熊本市上下水道事業管理者:三島健一)と管清工業株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役:長谷川健司)と連携し、熊本市下水道管路施設包括的維持管理業務委託(中央区)(以下「熊本市下水包括」)において、当社独自のストックマネジメント技術である硫化水素の生成から劣化までをシミュレーションで診断できる「硫化水素劣化予測診断技術」、無人で管路内から管路周辺の空洞を調査できる「空洞点検ロボット技術」の実証(以下、「本実証」)を2025年9月より開始いたしました。
本実証では、熊本市包括における「中継ポンプ場」、「マンホールポンプ」、「伏越し部」の合計79箇所を対象としています。「硫化水素劣化診断技術」では、WATSモデル※1を用いて微生物による管路の劣化予測を適切に評価します。また、「空洞点検ロボット技術」は、管路上部の道路陥没等の重大事故にもつながりうる管路周辺の初期空洞を無人で計測します。本実証では、この2つの技術の有効性を検証し2026年3月頃での実用化を目指しています。
※1:1990年代に国際水協会(IWA)によって提唱された硫化水素生成予測の手法。管渠内における好気・嫌気状態での有機物と硫黄化合物の変質に関するプロセスを考慮し、硫化水素生成の精度を向上させることを目的としたモデル
【硫化水素劣化予測診断技術】
硫化水素の劣化評価は、従来は硫化水素濃度とコンクリート劣化速度の簡易評価式が主流であり、硫化水素の生成、硫化水素の硫酸化、管内温度依存を考慮した管路劣化予測は難しいものでした。
一方、この「硫化水素劣化予測診断技術」では、管路・人孔の基本情報(設置年度、材質、管径・深度、等)と、定期点検状況(劣化状況の進行)、汚水・汚泥のサンプリング分析(微生物の地域性)により、従来考慮できなかった要素を考慮した管路全体の劣化予測をシュミレーションでき、管路全体の劣化・老朽化のリスクを可視化します。今後は、リスクに応じた管路の最適な更新・更生策定への活用をめざしていきます。

図 シミュレーション画面(開発段階)
【空洞点検ロボット技術】
従来の管路周辺の空洞調査は、路面から電磁波レーダー(適用深度2m程度)で行うため、管路周辺に空洞が検出された場合、すでに路面付近まで成長しているため陥没対策のための緊急対応が必要でした。そのため、予防保全として初期空洞段階での検出をいかに行うかが長年の課題でした。
本技術は、無人で管路内の天井部を走行できる点検ロボットにより。電磁波レーダーを用いて管路内から直接、管路背面(管路の外側)の空洞を調査します。そのため、初期空洞の検出が可能となるだけでなく、管路内調査のもう一つの課題である、調査員の管路内立ち入りが困難となる管路内でも遠隔操作により安全な調査の遂行が可能となります。さらに上述の硫化水素劣化予測診断から、高リスクと判断された特定の管路に対する予防保全のための状態監視技術としての活用も期待できます。

図 空洞点検ロボット技術(開発段階)
社会問題が浮き彫りとなりつつある、老朽インフラの維持管理について、これまでの定期点検による事後保全の管理に加え、技術開発により劣化予測と状態監視を併用した予防保全の管理や、リスクとコストを総合的に判断した最適な更新・更生の計画を地方自治体向けに提案してまいります。
<問い合わせ先>
インフロニア・ホールディングス株式会社
(前田建設 広報担当)
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp