地震リスク評価(PML評価)

地震リスクとは?

近年、施設の地震リスクに対する関心が高まり、地震リスクの定量的評価が注目されています。地震国である日本では、地震に対する意識はかつてより高く、建築基準法等で定められた耐震設計も世界的に見て高度な水準を維持しています。しかし、阪神大震災を契機として、単に法規を遵守すれば安全というものではなく、非常に大きな地震動が発生すれば、大被害が起こり得るという事実が広く認識されるようになりました。
現実には非常に大きな地震を過大に意識することは、その発生確率から考えると、あまり正当ではありません。そのため、リスクという形でそれをより合理的に評価しようとする動きが活発化してきました。
地震リスクは、建設地における地震危険度と、施設構造物の地震による損失の大きさを総合的に評価して、期待損失率として表します。地震リスクの算出は、はじめに建設地の地震危険度(地震ハザード)の評価を行う事から始まります。この地震ハザードは、特定の地震を想定して地震動を評価する従来の方法とは異なり、起こり得る全ての地震原因を対象に、その発生の可能性を確率的に考慮して作成します。
次に、建物の耐震性の評価を応答解析、イベントツリー解析により行い、先程の地震ハザードと組み合わせることにより地震リスク(リスクカーブ)を算出します。

地震リスク算出の流れ

地震ハザード評価

地震ハザード評価、地震環境の評価

地震環境の評価

起こり得る全ての地震を対象に、その可能性を確率的に考慮して評価し、地震ハザード曲線を作成します。

地震ハザード曲線

地震ハザード曲線

地震被害のモデル化

地震被害のモデル化、耐震性の評価

耐震性の評価

対象施設に考慮すべき損傷状況を、イベントツリーを用いて分類する事により、地震に対する損傷期待値の評価を行い、地震ロス関数を作成します。

地震ロス関数

地震ロス関数

地震リスクカーブ

地震リスクカーブ

地震ハザード曲線と地震ロス関数を組み合わせることで、建物と建設地それぞれの固有性を含むリスクカーブを作成します。リスクカーブは、縦軸に年間の地震発生確率、横軸に地震発生による予想損失額をとっており、大地震ほど発生確率が低く、多額の損失をもたらすことを表しています。

PMLとは?

PML(Probable Maximum Loss)は、アメリカで発祥した保険情報の一つで、最大予想損失率と訳されます。これは、元来「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす地震(PME)が発生し、その場合の90%信頼性水準に相当する物的損失額」と定義されています。実際には、PMEとして再現期間475年の地震を用いることが多く、この地震が発生した場合の物的損害額(90%信頼水準)の再調達価格に対する割合で表します。

PML=最大予想損失額/再調達価格×100

この再現期間475年は、建物の供用期間を50年とし、50年間に10%の超過確率で発生するであろう地震に相当します。これは、年超過確率になおすと0.0021となり、実際にPML値を算出する際には、地震リスクカーブの年超過確率0.0021の期待損失額を読みとることにより算出します。

ポートフォリオPMLの例

地震ハザードプログラムを応用することにより、建物単位だけではなく、ポートフォリオの地震リスクを評価する事が出来ます。不動産証券化を考えている方、保有する施設全体の地震リスクを把握したい方向けに地震PML(再現期間457年に対する地震推定損害額)をご提供いたします。

ポートフォリオPMLの例

※数値は架空のものであり、上表は概念を示したものです。