愛知県有料道路運営等事業

愛知県有料道路運営等事業 愛知県有料道路運営等事業
施設用途 有料道路
場所 愛知県
事業者 愛知道路コンセッション株式会社
事業形態 コンセッション
事業期間 2016年10月~(30年)
事業内容 道路の維持管理・運営業務、利便施設等
運営業務

愛知県を走る有料道路8路線72.5km
約30年にわたり維持管理・運営を行う
国内初の道路コンセッション

民間事業者ならではのアイデアを投入し
三方よしの実現を目指すコンセッション事業

前田建設を代表企業とするコンソーシアムが、「愛知道路コンセッション株式会社」(以下、ARC)を設立。2016年10月より、国内初の有料道路コンセッション事業として愛知県道路公社が運営する有料道路の維持管理・運営業務を行うことになりました。
運営を担う対象路線は、知多半島道路や南知多道路など8路線72.5km。道路の利用者や地域、道路管理者である愛知県道路公社、そして民間事業者であるARCの三者それぞれに利点がある「三方よし」の実現を目指し、民間事業者ならではのさまざまなアイデアを導入。維持管理・運営業務に加え、地域活性化につながる多様な施策を実施しています。

三方よしの実現を目指すコンセッション事業

構造改革特区で実現した民間による道路運営
積み上げた技術力と経験で難題を解決、事業開始へ

利用料金を徴収する公共施設などにおいて、施設の所有権を公共主体に残したまま施設の運営権を民間事業者に設定するコンセッション方式。2015年に構造改革特別区域法の一部が改正され、公社管理道路の民間事業者による運営が可能になりました。
これを受けて愛知県道路公社が公社管理道路の運営権を民間事業者に設定するための公募を開始。
前田建設では、自らが事業者となってインフラなどの開発や運営にあたる「脱請負」を2011年に打ち出し、日本初の民間による国管理空港「仙台国際空港」につづいて、コンセッション事業2例目として愛知道路コンセッションに挑戦しました。優先交渉権者の選定から運営開始まで4ヶ月を切るタイトなスケジュールの中、約30年の事業期間に対する事業計画の作成や資金調達を実施。前例のない事案のため度々難題に直面しながらも、前田建設が建設会社として積み上げてきた技術力や経験を活かし、あらたに国内初となる有料道路コンセッション事業を開始しました。

国内初となる有料道路コンセッション事業を開始

道路資産の一元管理で、データを活用した効率化と安全性を実現

データを活用した効率化と安全性を実現

民間事業者が有料道路の維持管理・運営を担うのは国内初。そのため道路運用のためのノウハウを愛知県道路公社から学びました。その上でARCが保有する資産情報・計画情報・作業情報などさまざまな道路資産を一元管理してデータベース化し、安全第一を最優先にARCとしての道路運用のあり方を精査・構築していきました。
例えば工事に係るコストの場合は、定期点検の結果から今後5年間の維持・修繕計画を立案し、さらにそれを1年ごとに再検討。修繕工事などは状況に合わせて1箇所だけでなく2箇所同時に作業することでコストを下げるなど、一元管理することで必要な工事の全体図を見られるようになり、適切な工事計画の立案と予算管理が可能になりました。
安全管理の面でも樹木が倒れてくる可能性が高い場所などをデータによって把握し、パトロール時にはその箇所を重点的に確認。草刈り作業や舗装工事時に警察に申請する交通規制なども当初は受理されずに再申請が必要なこともありましたが、蓄積されたデータによって適切な規制図を作成することで問題なく受理されるようになりました。
愛知県道路公社から引き継いだ運営ノウハウを活かしながら、民間事業者ならではの効率化を実現しています。

民間事業者ならではの地域活性化への取り組み

知多半島道路のパーキングエリア

運用道路の周辺地域の活性化もARCの大きな事業のひとつです。特に力を入れているのは知多半島のファンを増やすための取り組み。観光などで知多半島を訪れる人を増やし、さらにリピーターとなってもらうために、交通安全と知多半島PRの一体型イベント「セーフティ・サンタラン」や、謎解きをしながら知多半島を周遊する「Treasure Road in 知多半島」などのイベントを実施してきました。
さらに「観光MaaS」の実現にも着手。運営する8路線には中部国際空港セントレアにつながる知多横断道路と中部国際空港連絡道路も含まれているため、日本国内だけでなく海外から訪れる人々に対しても、日本で過ごす1日に知多半島を訪れてもらえるような施策を考案。他業種との連携や産官学の広域連携などにより、地域経済の活性化にも取り組んでいます。

パーキングエリアのリニューアルも地域活性化の取り組みのひとつ。
知多半島道路のパーキングエリアは、地域の“種(ひと・もの・こと)”を育み、次世代に“果実”としてつなぐパーキングエリアを目指して「愛知多の種」として生まれ変わりました。2018年7月にリニューアルオープンした「大地の種(阿久比パーキングエリア)」と「華の種(大府パーキングエリア)」は、「おおらかな木のひさし」をコンセプトに世界的な建築家の隈研吾氏監修でデザインされました。
パーキングエリア内では「知多半島を味わう新空間」として、食と癒しの総合リゾートを運営するアクアイグニス・レストランのシェフと知多半島の食材のコラボレーションが実現。ここでしか味わえない地産地消のフードメニューとお土産品を提供しています。

※観光MaaS
旅行でのニーズに対応し、複数の移動サービスなどを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うサービス

先進技術の社会実装を促進する愛知アクセラレートフィールド

三次元レーザレーダを用いた逆走車・誤侵入歩行者防止システム

道路運営事業における社会的課題を抽出・解決しながら、先進技術の社会実装を支援する仕組みとして導入された「愛知アクセラレートフィールド」。有料道路の現場で実証実験を行い、効果が認められた技術はARCの実務に採用され、効率的な道路運営に活用されます。
この実証実験から全国で初めて採用されたのが、「三次元レーザレーダを用いた逆走車・誤侵入歩行者防止システム」。セントレア東インターチェンジは中部国際空港島内にあるため海外からの旅行者の利用も多く、車両の逆走や歩行者などの有料道路への誤侵入が発生しやすい場所となっていましたが、三次元レーザレーダを使うことによって逆走車や誤侵入歩行者を即座に識別して検知。逆走車にはLED表示板で逆走を知らせ、誤侵入歩行者にはパトランプによる光と日本語、中国語、韓国語、英語による警告を行います。合わせて管制センターへも通知され、それぞれの事案に対する即時対応が可能になりました。
今後もさまざまな実証実験を実施することで、より質の高い道路運営を実現することが期待される愛知アクセラレートフィールド。利用者の安心・安全、そして快適な道路環境に寄与する最先端技術の導入を目指しています。

すべてにおいて国内では前例のないところからスタートしたARC。愛知県道路公社による運営でも黒字だった事業を民間事業者が担うということで、その必要性を疑問視する声など当初は厳しい意見もありました。
しかしARCの運営になってから舗装の技術が上がったことで走りやすくなったという声をいただくなど、道路運用業務のクオリティを向上。利用者アンケートや満足度調査で得られた意見を取り入れながら改善していくことで、現在では地域の方々に受け入れられ、さらなるサービス向上を期待する声も高まっています。
ARCは民間事業者ならではの道路運営を行いながら、地域活性化の役割も担い、先駆者として新たな道路運用の在り方を示し続けます。