つくばエクスプレス(三ノ輪)#1

TOP Report#1 Report#2
巨大な地下空間を切開く。

 つくばエクスプレス(常磐新線)は、秋葉原駅からつくば駅まで、首都圏北東部を縦断する全長約58kmの都市高速鉄道である。
 常磐新線の発注者である日本鉄道建設公団東京支社 浅草鉄道建設所 所長佐々木幸一氏に、常磐新線のもつ意義と工事についてうかがった。
「平成3年3月、東京都・埼玉県・千葉県・茨城県の1都3県12市区町村の出資により、事業運営主体となる『首都圏新都市鉄道株式会社』が設立され、事業がスタートしました。
 前田JVは新浅草駅(仮称)から南千住駅(仮称)間の常磐新線で一番長い2219mの三ノ輪トンネルを施工しています。浅草の国際通りには、三ノ輪トンネルとほぼ平行して第二浅草幹線というφ4.5mの下水道が通っています。既存の下水道に影響を与えずに、新しいトンネルを掘進するには、優れた能力が必要です。
 4月以降には、営団地下鉄日比谷線、JR貨物線、JR常磐線という3つの営業線の土被り約8~12mの下を掘削するという非常に難しい工事が待ち受けています。そこで、トンネルを掘進する前段階で、営業線の防護を各鉄道会社にお願いしています」
 さらに、こう続けた。「前田建設が特許を取得しているコッター・クイックジョイントセグメントを採用しました。強度は従来のボルトを使ったセグメントとなんら変わりなく、施工性が簡易で融通が利きます。また、工期短縮にもつながり、平滑性のよいトンネルができます」
 佐々木所長は「現秋葉原からつくば間は、高速バスで約65分、JR常磐線で約85分かかります。常磐新線開業後は約45分。優れた交通手段として、沿線の発展に貢献することは間違いありません」と力強く締めくくった。

夜の浅草・国際通り

夜の浅草・国際通り。この下では24時間体制で工事が進んでいる。

シールドマシン   日本鉄道建設公団東京支社・浅草鉄道建設所所長 佐々木幸一氏

シールドマシン

 

日本鉄道建設公団
東京支社
浅草鉄道建設所
所長 佐々木幸一氏

白い部分がコッター・クイックジョイントセグメント。黒い部分はダクタイルセグメント

白い部分がコッター・クイックジョイントセグメント。黒い部分はダクタイルセグメント

シールドマシンが突き進む
地下の台車に下ろされるセグメント  
コッター式継手

セグメントの接続部分をくさびでつなぐコッター式継手

地上で出番を待つセグメント

門型クレーンより、地下の台車に下ろされるセグメント

 

工場から現地に運ばれ、地上で出番を待つセグメント

コッター・クイックジョイントセグメント

幅1.5m×厚さ400mm、6t。くさび形のコッター・クイック式継手を採用したことにより、組立効率がアップしたコッター・クイックジョイントセグメント。

トンネル

トンネルには、切羽に水を送る送泥管と、掘削した泥水を送り出す排泥管が通っている。泥水は泥と水とに分離し、泥は処分し、水は掘進に再利用している。

中央制御室

総合システム「MAIOSS(Multi Artificial Integrated Operator System for Shield)」で掘進状況、セグメント組立状況、坑内状況などを集中管理している基地内に設けられた中央制御室。

 2002年4月、新浅草駅から南千住駅へシールドマシンがスタートした。掘進スピードは1日約10m。取材した2003年1月14日は、ほぼ中間地点の1190mだった。
 この工事は、可燃性のメタンガスを含む礫(れき)層を1400m掘進する。そのため、マシン内の電気機器類を防爆仕様にし、計測器を付けてガスの探知を徹底した。
 機電主任の森山は、設備の計画から据え付け、運用、撤去まで、機電のすべてを担当している。シールドトンネルの工事は、すべての工程が連動しているため、1カ所でもうまく動かなければ、すべての作業が止まる。コンピュータ制御をしているため、故障の可能性も高い。機電担当者の役割は大きく、責任が重い。
「どんなに考えて計画を立てても、工事が始まってから起こる問題をすべて予測することはできません。予期できないことが起きたときが一番大変です」と森山は言う。
           §
 シールドマシンが掘進した後、トンネル内への地下水や土砂の流入をセグメントで防ぐ。最初の249リングは金属製のダクタイルセグメント。その先は、RCコッター・クイックジョイントセグメントである。
 所長の森嶋は「コッター・クイックジョイントセグメントが採用されて、作業効率が大幅にアップしました。最後に大きな山場がありますから、これからが大変です。沿線周辺の方々と現場の安全を確保して、『誠実・意欲・技術』を結集して掘進管理をし、施工精度を向上させています」と語った。
           §
 土木担当の次長である正岡は、技術の責任者として、日本鉄道建設公団と前田JVの太いパイプ役を果たしている。「これから民家の下の豆腐のように柔らかい地層を掘進します。さらに、南千住駅の手前300mの間は、工事の最大の難所となります。事前に計測を行い、掘進による地中への影響を確認し、この区間におけるシールドマシンの最適な進め方をぎりぎりまで検討します」と正岡。難工事に向けて、緊張感が高まる。

機電主任 森山 茂 所長 森嶋清治 監理責任者/次長 正岡顕宏

機電主任 森山 茂

所長 森嶋清治

監理責任者
次長 正岡顕宏

掘進設備

シールドトンネルの施工に必要な掘進設備は、すべてシールドの発進基地であり
バックアップ基地である新浅草駅の構内と地上を利用している。

掘進設備全体図

▼次のページへ