つくばエクスプレス(三ノ輪)#2

防護工時・営団日比谷線、JR貨物線、JR常磐線が近接する難工事に挑む
都市土木の真髄を極める。

 現在営業している営団日比谷線、JR貨物線、JR常磐線が入り組む南千住駅の手前300mは、三ノ輪トンネル最大の難所である。営業3線の軌道の下約8~12m、地盤の下約4~10mという非常に浅い部分、しかも軟弱な地層を、斜めに、あるいは縦断して、外径10mという大断面のシールドマシンが掘進する。
 発注者ごとに構成された4つの現場で、シールドマシンが安全に掘進し、工事中も完成後も営業線を守るために、細心の注意を払って防護工事が進んでいる。シールドマシンが到達する4月末までに、必ず完了させなければならない。

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JR三ノ輪作業所/所長 鈴木健夫

JR三ノ輪作業所
所長 鈴木健夫

MJマシン

メカジェット工法の専用機として開発されたMJマシン

 

工事名/常磐新線三ノ輪トンネル防護工他工事
発注者/東日本旅客鉄道株式会社東京工事事務所
施工/前田・ユニオン建設共同企業体
工期/2001年10月12日~2003年10月11日

 

 JR常磐線、貨物線を防護するために、地盤改良を行う。そのために、メカジェット工法(噴射付機械撹拌杭工法)を開発し、特許を出願した。メカジェット工法で斜めに杭を打ち、ソイルセメントコラムを造成する。完成後は地中に隠れてしまうため、1本ずつデータを記録し、写真を撮影する。地道な作業だ。作業時間は深夜0時30分から4時10分まで。進捗状況は約60%。
 所長の鈴木は「まず発注者に地盤改良の必要性、形状と工法を提案し、それによりシールド掘進による軌道の動きを想定量の半分程度に抑制することを説明しました。さらに、MJマシンを開発し、試験施工で改良体の出来形、精度を確認して、信用を得るまでに、約1年かかりました。与えられた軌電停止時間90分以内に1本杭を打つこともできました。良好に改良できていることが確認できたので、安心しています」と苦労を語った。

メカジェット工法図
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メカジェット工法

機械撹拌と高圧噴射による地盤改良工法

固化材スラリーを低圧でロッド先端付近の吐出口から噴射させ、高圧で撹拌翼の先端から噴射させながら軟弱な地盤の中に杭(ソイルセメントコラム:φ600~1200)を造成する地盤改良工法。使用する機械が小型なので、狭くて架空線や桁下で高さ制限のある軌道周辺での施工に適している。ロッド先端の直進誘導用剣先とロッド中間部に密着する直進性保持具により、ロッドの曲がりを防止し、高い精度で斜めに杭を打つことができる最新の工法。前田建設、JR東日本、日本綜合防水(株)共同開発。

 

工事名/常磐線三河島・南千住間第2南千住Bv他改修工事
発注者/東日本旅客鉄道株式会社 東京工事事務所
施工/前田・ユニオン建設共同企業体
工期/2000年3月7日~2003年12月14日

 

 ここでは、まずシールドが通過する位置に建っている貨物線の橋台の基礎杭と、JR貨物線と営団日比谷線の境に建っている擁壁のRCの杭53本を撤去する。そして、地元荒川区の要請による、第2南千住Bv(通称、親子ガード)の幅員を3mから9mに拡幅する。進捗状況は80%。
 所長の村野は「直接軌道を動かすために工事桁を架けました。これだけ角度のきつい部分に工事桁を架けるのは、JR東日本さんでも初めてだそうです。軌道には精度を要求されるので、昼間、工事のシミュレーションをして、夜間の工事に臨みました。また、周辺の地盤に影響を及ぼさずに30mの橋台の基礎杭を引き抜く方法についても、大変悩みました。これから工事桁の撤去をするので、まだまだ苦労は続きます」とじっくり話した。

JR南千住作業所/所長 村野智樹

JR南千住作業所
所長 村野智樹

JR貨物

防護工事現場を通過するJR貨物

営団三ノ輪作業所/所長 今泉貴臣

営団三ノ輪作業所
所長 今泉貴臣

営団日比谷線

防護工事現場を通過する営団日比谷線

 

工事名/常磐新線建設に伴う日比谷線三ノ輪坑口付近
    構築防護工事
発注者/帝都高速度交通営団
施工/前田・五洋・竹中土木建設工事共同企業体
工期/2002年7月8日~2003年8月31日

 

 土被りが薄いトンネルの出口の危険を回避するための工事である。ここではクロスジェット工法を採用。セメント系の固化剤で柱を造り、柱列式連続壁としてトンネルの断面を門型に防護する。作業時間は、夜中の1時20分から3時30分までの130分間。短い杭を1日に1本建てられるかどうかという厳しい条件である。
 所長の今泉は「工事に許される軌道の上下は、わずか5mm。地盤を改良するために毎分500リットルの固化剤を流し込むと、排泥の閉塞が発生した場合、瞬時に1~2cmの隆起が起こるので、工事をストップするタイミングを計らなければなりません。列車の運行にかかわるので細心の注意を払っています」と工事の様子を話した。

 

工事名/常磐新線建設に伴う
    隅田川駅構内貨物線防護工他工事
発注者/日本貨物鉄道株式会社  
    関東保全技術センター
施工/前田・ユニオン建設共同企業体
工期/2002年9月20日~2003年2月26日

 

 4つの工事のなかで、もっとも遅く発注されて、最初に完了する工事である。工事の目的は、他と同様。進捗率は85%。
 防護の工法には、ダブルパッカー工法を採用した。まず、スリーブパイプ(注入管)を削孔し建て込む。その後、地盤の均一化を図るために一次注入し、二次注入として薬液を浸透固結させ、地盤の改良を行う。手間のかかる工法だが、地上への影響が少ない。
 所長の井上は「非常に狭い場所です。通路を施工するときは、JR工事・営団工事を中断させなければならないので、24時間体制で作業を進めました。軌道内の作業は、0時30分から3時20分。この時間をオーバーすると事故扱いになるので、時間厳守が大切です。工事の影響を確認するために、毎日レールの変位を計測して、問題点を追及しています」と営業線に考慮した作業を語った。

JR隅田川作業所/所長 井上富夫   ダブルパッカー工法

JR隅田川作業所
所長 井上富夫

 

ダブルパッカー工法によるスリーブパイプの設置状況

二重管ダブルパッカー工法の作業現場

二重管ダブルパッカー工法の作業現場

三ノ輪T鉄道部分防護工全体図
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 4つの防護工事に守られて、シールドマシンが掘進し、南千住駅地下1階に到達する。トンネルが貫通した後は、設備の撤去作業に取りかかる。トンネルだけを残して、前田JVが現場を離れるのは2003年末の予定である。

 当事務所の建物には、防護工事関連を合わせ、5つのJV(共同企業体)が現場事務所を置いており、JV構成もJR関連とトンネル・営団工事とに分かれています。
 トンネル工事と各防護工事は、工程・計測管理等、密接に関係するため、JV間、発注者との調整を行い、互いに工事が円滑に進むように取り組んでいます。
 トンネルは浅草・国際通り、住宅密集地の下を掘進していくので、近隣の方々への工事説明を徹底し、振動や騒音でご迷惑をおかけしないよう努めています。当工事でもっとも難しい鉄道直下の施工を控え、全員の意識の統一を図り、最後まで安全を第一に施工します。

三ノ輪 T 作業所/統括所長 岩本 哲

三ノ輪 T 作業所
統括所長 岩本 哲

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