桜蔭学園#2

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桜蔭学園新校舎建設工事
三者が一体となって。新校舎を築く

 現場取材は5月1日。5階で躯体工事、2階でサッシの取り付け、1階で額縁取付、地下ではボード貼りと設備工事に入っていた。
 柿澤主任は、足場計画、鉄筋型枠工事、コンクリート打設、鉄骨組立作業といった建物の骨組みを造っている。「最大8工区に分けて工事を進め、毎日のようにコンクリートを打設しています。1つの工区の遅れが全体のスケジュールに影響するので、毎日2回、10時と13時に打ち合わせをしています」と語った。
 溝口主任は工務と内装仕上げ工事を担当している。「地下2階の間仕切りが終わり、ボードを貼り始めたところです。一つ一つのディテールを考えてまとめています」と話す。
 丸柱の庇の部分では、意匠設計からシャープさを、構造設計からは耐久性を求められた。そこで、見える部分を繊細にしてデザイン的な要求を満たし、見えない部分でしっかり支えて強度を与えた。
 階段室の壁には幅15cmの杉材の型枠を使った。型枠を外すと杉の木目がコンクリートにきれいに転写され、やさしく印象的な仕上がりになる。この工法は外壁の一部にも採用された。
 学校、設計、施工の三者が一体となり、より良い校舎の建設を目指している。

解体工事が完了した4階部分

階段室で杉の型枠を使ったコンクリートについて説明する溝口雅司主任

コンクリート打設前に型枠の支柱を点検する柿澤弘司主任

地下2階のカーブが美しいコンクリートの内装仕上げ

桜蔭学園新校舎建設工事
新時代を告げる記念碑を創る

窓側に設置された空調設備

設備設計図に目を通す諌山清課長

丸柱のコンクリート打設をチェックする青田

 校舎に機能を生み出すのは、設備担当の役割である。ここでは諌山課長、後藤主任、塩山の3名が、電機、機械、空調、衛生の設備を担当している。設備工事は建築の後追いになるため、進捗状況は20%。「快適に過ごしていただくために、建物全体の環境を保つように設計された図面に基づき、最後に建物に血液を流すことが設備担当の役目です。学校の建築は、平均天井高3mを確保することが条件なので、設備を窓側に集めたり、体育館の環境を整えるために、床下吹き出し換気を設計段階より採用しました。コンセントの位置など細かなことまで学校と相談して設置していますが、竣工後、実際に使っていただいたうえで、さらに使いやすく手を加えることもあります。電気設備や空調設備は年々進化していますから、完成後もいろいろなことをチェックして、より使いやすくすることが必要です」と語った。

 新校舎のシンボルとなる2本の丸柱の担当は、青田である。技術研究所から初めて現場に配属された青田にとって、丸柱は記念すべき仕事となる。
 丸柱には鋼製型枠と、500年の耐久性を持つ自己充填高強度高耐久コンクリートを採用。型枠の内側に木製目地棒を取り付け、その内側に透水性型枠シート(不織布)を貼った。これにより、鋼製型枠独特のコンクリート表面のテカリをなくし、やわらかい雰囲気を醸し出す。柱はH形鋼を中心に構造鉄筋を配筋し、その外側にひび割れ防止のための円形のふかし鉄筋を配筋し、現場内で行った打設試験の結果を踏まえて、万全の体制でコンクリートを打設した。
 5月6日、型枠が外され、翌7日には足場が撤去されて、桜蔭学園80周年のモニュメントとなる2本の丸柱が姿を現した。
 青田は柿澤主任とともに躯体担当をしてきたが、これからは内装を担当する。青田は「内装工事に入り、間仕切りが立つにつれ、完成後はどう使われるのだろう、と想像するようになりました。技術研究所では考えられなかったことです」と現場に携わる喜びを語り、柿澤主任は「足場を外して外観を見るのが楽しみです」と結んだ。
 熱い期待に包まれて、工事は着々と進んでいる。桜蔭学園の歴史の1ページに、新校舎と新しい桜の木が記される。膳校長は「生徒たちが歓声を上げて新校舎に引っ越す様子が目に浮かびます」とやわらかく微笑んだ。

丸柱の鋼製型枠に木製目地棒と透水性型枠シートを貼り付ける

型枠が外されて姿を現した丸柱

丸柱の説明をする青田晃司

完成予想CGパース

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本郷桜蔭学園作業所
所長 柿沢 聡

経営トップ、営業部、建築部が一体となって総合力でマネジメントにあたっているのがこの現場の特徴です。会社、担当者が大切に築いてきた信頼を、これから私たちが受け継いで、安全で使いやすい校舎を建設し、桜蔭学園のみなさまに喜んでいただけるよう取り組まなければなりません。500年の耐久性を持つコンクリートをモニュメント的な要素を持つ丸柱で使いたい、とお願いしたところ、桜蔭学園のみなさま、山下設計の方々にご理解をいただいて、実現することができました。これは、三者が一体となって新校舎の建設に取り組んでいるからこそできたことです。完成後、この校舎で学ぶ生徒さんが可能性を伸ばしていかれることを、とても楽しみにしています。

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