木戸ダム#2

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日本初のRCD工法+JIOCE方式  
空中の軌道を走る  

骨材プラントに貯蔵された骨材をバッチャープラントへ運び、骨材とモルタルをベルトコンベアでJIOCE式高速連続ミキサ(下図参照)に投入してコンクリートを造る。このコンクリートをケーブルクレーンで堤体に運び、ダンプトラックに載せて打設位置へと運ぶ。資材の運搬は、ダム建設の原動力である。
 機電次長の馬場は、現場内の機械の計画から据え付け全般を担当している。

できたばかりのコンクリートがバケットに積まれて、ケーブルクレーンで堤体へ運ばれる。

ベルトコンベアで運ばれ、JIOCE式高速連続ミキサに投入される骨材とモルタル。

JIOCE式高速連続ミキサは、骨材とモルタルをM-Yミキサ内に連続的に投入することにより、自重で一定の品質のコンクリートを連続して大量に製造する新しいタイプのコンクリート製造システムである。

 

ケーブルクレーンで運ばれてきたコンクリートをグランドホッパーに移す。

 

機電次長 馬場 操
「ケーブルクレーンの点検は、私がケーブルの上部に乗って、自分の目で確認しています。ボルト1本の緩みが大きな事故につながりますから」

 ここには、日本初の試みであるJIOCE式高速連続ミキサと在来方式、2つのコンクリート生産システムがある。全コンクリート50万m3のうち30万m3のRCDコンクリートをJIOCE式高速連続ミキサで製造する。馬場は綱木川ダムでの経験を生かして、最大80mmの骨材の通過に耐えるようM-Yミキサを改良した。まずサイズを従来より一回り大きくし、骨材が当たって磨耗する箇所をテロプレートという特殊合金で補強した。JIOCE式高速連続ミキサが、激しい音を轟かせながらコンクリートを練り上げる。
 そのコンクリート6m3をバケットに入れて、20tのケーブルクレーンを1往復3分で運行し、グランドホッパーに落とす。馬場はこの自動運転システムで、1時間当たり120m3の打設目標をクリアした。

「コンクリートを積んだバケットを前進しながら放物線を描くように下ろし、コンクリートを降ろして空になったバケットを引き上げながらプラットホームに戻すことで、運搬時間を短縮しました」と4カ月間にわたり工夫したポイントを語った。
 コンクリートの打設は順調に進んでいる。

RCD工法によるコンクリートの打設順序
運搬打設概要図
拡大図を見る

■RCD工法
RCD工法は、日本が開発したコンクリートダムの施工方法として、多くの施工実績を重ね、大規模ダムの合理化施工法として確立された。セメントと最大寸法80mmの骨材がほんの少し湿気を帯びる程度の超硬練りコンクリートをブルドーザで均等に敷き、目地切り機で横目地を造成し、振動ローラで締め固める。

堤体を築く
右岸と左岸の間で


 ダムの右岸は強固な岩盤だが、左岸は指で押せるほど弱い粘土も含んでいる。急峻な現場では、大雨が降ると崩落が起きやすい。状況を監視しながら工事は続く。
 工事課長の上馬場は、建設事務所と現場をつなぐ役割を担い、半年先の工事計画を立てている。「毎日天気予報をチェックして、建設事務所と調整し、コンクリートを打設するかどうかを決めています。梅雨時は雨が気がかりですが、梅雨が明けると最高気温をチェックして、骨材を冷却する水を確保し、冷却設備で水温を下げなければなりません」と上馬場。
 練り上げたコンクリートの上限温度は25℃以下というのが条件だ。そのため、夏は骨材を白いカーテンで覆い、骨材の温度を下げるために6~7℃に冷やした水を使うなど、注意を払う。
 工事主任の秦は、上馬場から指示を受け、毎日の作業スケジュールを立て、現場で指示を出す。ダムの品質に直結するコンクリートの打設には、細心の注意が必要だ。計画どおりに進まないと、確実に次のスケジュールに影響する。「毎日続けるには、くじけないことが大切です。堤体が高くなることで、コンクリートの打設が進んでいることを実感しています」と話す。 当面の目標は10月下旬の定礎式である。
竣工予定は2008年。木戸ダム完成後、電気・通信設備の一部はダムの管理に使われる。水は美しさを保ち、鮎が棲み、鮭が遡上する渓流は大切に守られる。 役立つダム、親しまれるダムが、緑深い谷間に少しずつ姿を現していく。
ダムは竣工後100年以上もの長い歳月、水を守り生かす大規模土木である。一人ひとりが一瞬たりともおろそかにせず、ダム建設に取り組んでいる。

工事課長 上馬場 靖
「責任ある立場になって、改めて若松所長の方針である安全管理の大切さが分かりました。この現場には、ダムを経験した若い職員が少ないので、ダムの学習会を開いています」

コンクリートをブルドーザで均す。

新たに打設する位置にダンプトラックで運んだモルタルを敷く。 モルタルは、すでに打設されたコンクリートと新たに打設するコンクリートとをなじませる接着剤の役割を果たす。

雨水はスポンジで丁寧に取り去る。水分量がコンクリートの強度に影響を及ぼすからだ。

工事主任 秦 宗之
「ダム工事はここが初めてです。最初の仕事は、バッチャープラントの位置を決めて設計する仕事でした。今は、自分が設計したバッチャープラントで製造したコンクリートを打設して、堤体を築いています」

木戸ダム作業所
所長 若松敬継(ひろつぐ)
 木戸ダムの特徴として、在来のミキサでモルタルを練る設備と、JIOCE式高速連続ミキサを通す設備の2機種を併設していることが挙げられます。RCD工法として実施工に採用されたのは木戸ダムが初めてで、コンクリート製造の合理化を図っています。
 私たちの仕事は自然が相手ですから「轍鮒(てっぷ)の急」を肝に命じ、早め早めに対処することを徹底させています。また、現場の安全管理のルールを作って、職員に守ってもらっています。基本は、整理整頓の徹底、打ち合わせの徹底、服装の徹底です。その基本として毎朝『安全衛生法令要覧』を読み合わせることで、安全意識が身につくことを目指しています。これが、品質管理、安全管理、原価管理、すべてに通じるのです。

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