着工は平成14年7月。当初、前田建設が草加市に提出した施工期間は24カ月だったが、最終的には21カ月で合意した。ところが、草加市から近隣住民への説明に時間を要したため、事実上の着工は8月中旬となり、工期がさらに短縮された。この限られた工期の中で、安全に病院を建設しなければならない。
病院は本格的な中間免震構造で建設される。
免震構造の建物は、地震の際、横揺れする。そのクリアランス分を考慮して、地下外周部分をひな段状にした。深い部分にSMW工法、浅い部分にはパワーブレンダーという地盤改良による自立山留め工法を採用した。パワーブレンダーは、前田建設関東支店技術部からの提案を受けたものである。
建物を支える基礎杭にはエコパイルを採用し、筒の先端に翼をつけた鋼製の柱を地中にねじ込む。工事による振動・騒音など、近隣への影響の少ない工法である。地中に埋設した鋼材はサビが少なく、将来、病院を建て替えるときに再利用ができる、環境に配慮した建材だ。
免震構造は耐震性が高く、地震から建物を守るためだけでなく、震災時にも病院機能を維持して周囲の被害に対応するという使命がある。建設地は用地が狭く、地盤も良くない。そこで、地下を駐車場として有効活用しつつ、建物深さを浅くするために、駐車場の柱頭に免震装置を設置する中間免震構造が採用された。マイナス面をプラスに転換した見事な設計である。
採用された免震装置は、天然積層ゴム支承NRB46基、鉛プラグがゴムによる横揺れを止める役割を果たす鉛プラグ入り積層ゴム支承LRB66基、滑動材がスケート状に動く弾性すべり支承SSR8基。3種類、計120基の免震装置が、しっかりと病院の機能を守る。 |
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エコパイルは、先端に翼を付けた鋼管杭を、全旋回式ジャッキで地盤に圧入する工法。現場打ちコンクリートと比較して、残土の産業廃棄物処理費用を削減し、建物が寿命を終えたときに再利用できるというメリットがある。 |
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3種類の免震装置 |
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4.NRB
天然積層ゴム支承耐久性の高い天然ゴム板と鋼板を交互に積み重ね、ゴムの引っ張り性能を垂直と水平に利用する代表的な免震装置。 |
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5.LRB
鉛プラグ入り積層ゴム支承鉛プラグがゴムによる横揺れを止める役割を果たす。 |
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6.SSR
弾性すべり支承摺動材がスケート状に動く。 |
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7.免震配管設備
建物の構造と同じように、配管設備にも免震工法を採用して、ライフラインを守っている。 |
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