新草加市立病院#2

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工期短縮施工法の開発/よりスピーディーに堅実に

 本来なら27カ月を要する工事を21カ月で施工しなければならない。第一の目標は、平成15年10月中に躯体工事を完了させること。その目標に向かって、前田建設が蓄積した技術力を最大限に発揮すると同時に、最新技術を取り入れて、さまざまな工期短縮工法が導入された。
 まず、揚重機は建物の外周に200tクローラークレーン3台と150tクローラークレーン1台の計4台を設置して、外周から攻める方法をとった。
 次に、躯体の構築における工期短縮工法を検討した。
 小梁をRC(鉄筋コンクリート)からS(鉄骨)造に変更した。
 小梁には、耐火材と断熱材を吹き付ける。RC小梁をS化したことで、足場が不要となった。
 さらに、鉄筋先付けデッキ、地組工法とNS工法を採用した大梁、4階以上の大梁・小梁のPCa工法の採用により、施工階での鉄筋型枠工事などの高所作業を削減し、型枠支保工を省いて、作業効率をアップしただけでなく安全性も確保した。
 工務担当課長の萩原は、本店建築部技術支援グループからこの現場に赴任し、躯体工事と外装工事を担当している。入札からこの現場にかかわり、システマチックな工法にて施工計画を立案した。躯体は予定通り平成15年10月に完了。すでに外装工事に移った。
 萩原は「この現場は工期が短いので、最初から緊張感がありました。大規模な公共の総合病院を1社で施工するチャンスは少ないですし、本格的な中間層免震工法や放射線治療室の施工など、病院ならではの施工ができたことは、とてもいい経験になりました」と語った。

1.耐火材を吹き付けた鉄骨小梁
2.コンクリートを打設する際、梁中央のサポートを省略可能なNS工法
3.鉄骨建方時に、地組したsrc大梁鉄筋型枠を設置
4.src大梁鉄筋の地組
5.src大梁鉄筋型枠の揚重
6.4階以上の施工に採用したPCa大梁・小梁の施工
7.PCa大梁・小梁の設置完了

 

放射線治療室の遮蔽鋼板施工

課長(工務担当)
萩原 浩

環境に配慮した最新設備を導入/魂を吹き込む

8.配線、配管が入り組むiss階
9.四角い建物の上に三角の建物を載せるために、iss階の梁が交差した四角い部分に、3階以上を支える柱を建てた。
10.天井裏の複雑でボリュームのある設備
11.設備主任  交田量彦

12.課長(工務担当) 渡辺利明
13.現草加病院内に展示されている建設工事の写真
14.外壁タイル
15.ガラスカーテンウォール
16.アルミカーテンウォール

 病院は設備が複雑に入り組んでいるため、通常より階高が高く、この建物は四角い建物の上に三角の建物を載せたデザインになっている。そのため、2階と3階の間に階高2.7mの設備スペースISS階を確保して、配管・配線を建物の形状に合わせ、ISS階の配管をユニット化した。
 さらに、ランニングコストを削減するため、ガスエンジンによる発電システムとしてCGS(コージェネレーションシステム)を採用。この電力で照明を点け、廃熱を給湯に利用して、同時に燃料電池も設置する。
 設備主任の交田は、主に空調、給水・給湯などの衛生設備を担当している。「建築の骨組みができたあと、建物の内臓のような設備を施工します。自分が管理した設備が思い通りに動いたときに、この仕事をして良かったなと思います」と交田。
 工務担当課長の渡辺は、仕上げ工事を担当し、発注者・設計者との計画書の検討から、仕様の決定、準備まで、施工前の段取りをしている。渡辺は「施工中に起こりそうな問題点を施工前に予測し、施工中に問題が発生したときは素早く的確に対応しなければなりません。エンドユーザーさんに『いい建物だね』と言っていただくのが一番うれしいです」と語った。
 12月中旬、足場が外され、建物が姿を現した。外壁は形状が複雑で、外壁材には、コンクリート、ガラスカーテンウォール、アルミパネルなど12~13種類の建材が使われている。材質の異なる建材で堅牢な建物を築くために、外壁だけで最大8名が10カ月間張り付き、通常の4倍の施工図を引いた。
 病院長の八重樫氏は「患者中心の良質の医療ができるよう、職員が一丸となって努力したいと思っています」と意気込みを語った。
 現病院の廊下には、新病院の現場写真や病室のモデルルームの写真が掲示されている。待望の新病院開院に向けて、市民の期待が高まっている。

 

新草加市立病院建築現場  
所長  今井 隆

 毎日500~700名が施工に携わっているので、安全を確保するために現場を巡回するときには、常に声をかけて安全意識を高めています。約30名の職員には、「現場は自分が治める」という意識を持ち、コミュニケーションを図って、情報を素早く全員に伝達し、品質を確保することを徹底しています。
 病院は一つ一つの工程の施工と検査の積み重ねで完成しますから、この現場で当社の技術力が試されていると言えます。
 あと3カ月で、病院の心臓部の機能をつくり、平成16年3月には立派に引き渡しをして、草加市のみなさまに喜んでいただきたいと思っています。

 

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