東北学院#1

全長約12km。九州最長のトンネルを貫く。

 1886年の創設以来、118年の歴史を刻む東北学院。仙台市青葉区にあるキャンパスが狭隘化したため、1992年に仙台市宮城野区小鶴の農地を新校舎の最適地として選定した。
 当学院の事務長である荒孝夫氏は「環境の良い土地を入手できたので、新校舎を建設し、陸上競技場、サッカー場、野球場、テニスコートなどを整備して、移転することになりました。これは歴代の校長をはじめ、全教職員の長年の夢でした。単独の中学・高等学校でこれだけの施設を備えるのは全国的にも珍しいことだと言われています。
 本校は中高一貫教育をしているので、新校舎建設に当たり、中学生、高校生それぞれの意識を持たせるために中学・高等学校の校舎を分けて、有機的に使えるように設計して、100年使用できる建物を建設してほしいとお願いしました」と語る。
 その要望を実現して、南側の校舎を中学校、北側の校舎を高等学校とし、中学校と高等学校の間に特別教室を配し、校舎と運動施設を有機的にアクセスできるよう設計された。校舎は、中学校を3階、高等学校を4階にして、各学年ワンフロアでコミュニケーションを図れるようにした。教室にはスリットをつけて、同じフロアのすべての教室を見渡せるようにしている。生徒の安全を確保するために、校舎をすべて直線で構成して死角をなくし、万が一のときに素早く避難や救助ができるようにした。

完成予想図

現校舎

 また、コンクリートの平らな屋根にカマボコ状の屋根を載せる二重構造にし、コンクリートの屋根に集熱機能を持たせた空調システム、外壁の一部を利用した太陽熱発電ガラスなどの省エネルギーシステム、吹き抜けや大空間のドラフト効果を利用した自然換気システムなどを積極的に採用。これらの設備を生徒が日常的に見ることができるように仕上げ、学校全体が環境を考える教材になっている。

東北学院中学校・
高等学校
事務長 荒 孝夫氏

 さらに、特別教室1階の屋根を屋上緑化して、リラックスできる空間を造り、キャンパスの外周に樹木を植えて、緑に包まれた学校にする。
 「施工中も、安全性に関する部分の要望に応じていただいています。コンクリートが多く技術の真価が問われる建物だと思いますが、十分に仕上げていただいて満足しています」と荒氏。
 現校舎の玄関には、新校舎の模型や礼拝堂の椅子が展示され、在校生や入学志望者は、模型を眺め、礼拝堂の椅子に腰掛けて、新校舎の完成を楽しみに待っている。

     
 

 敷地面積は現校舎の6倍に相当する97,405.61m2。東北学院のシンボルである礼拝堂を中心に、東側に教室・管理棟、北側に3階建ての体育館、部室棟などを配置した。
 新校舎の設計には、3つの特徴を持つ計画が策定された。
 一つ目は、礼拝堂を中心として、生徒、教職員の諸室が機能的に配置された計画。二つ目は、多様な活動を通してコミュニケーションを触発できる場を建物の至るところに展開した計画。三つ目は、将来の授業内容の変化や多様化に対応できるようフレキシビリティの高い計画。すべてのコンセプトを建物に活かしている。
 
 東北学院中学・高等学校を創立したとき、シュネイダー先生が掲げた「LIFE LIGHT LOVE」の言葉を新校舎にも掲げ、外壁のタイルの色には現校舎に使われている明治時代の赤レンガの色を採り入れて、学院の歴史を継承した。
 東北学院を象徴する宗教教育、宗教行事の実践の場である礼拝堂は、2100名を収容する大ホール。礼拝堂の鐘楼までの高さは約30m。背後に円形のステンドグラス、正面には長方形のステンドグラスを配して荘厳な雰囲気を醸し出し、型枠に杉材を使った6本の丸柱が大空間を支えている。
 体育館の1階には、柔道・剣道・空手・レスリング・卓球場、2階アリーナにはバスケット場4面を擁し、風が吹くと自動で窓が開き空気を入れ替える換気システムを採用した。 部室棟、膜屋根の雨天練習場、部室兼弓道場、グラウンド部室も建設。
 図書室の窓には、ペアガラスの間に和紙を挟んだものを採用し、日差しを柔らかにするよう配慮された。教室はモデルルームを造って、安全性をチェックし、黒板や机を実際に設置して選定するなど、細やかな配慮をしている。

礼拝堂完成予想図

継承される赤煉瓦の色

教室のモデルルーム

広い空間を生む体育館

急ピッチで作業が進む教室棟

     

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