東北学院#2

 当学院は、土地を取得してから田畑を造成し、地盤が安定するのを待って、建物の建設に着手した。前田JVは、その広大な更地に乗り込んだ。工期は2003年4月からだが、工事が本格的にスタートしたのは6月。標準工期より4カ月短い実質17カ月というタイトなスケジュールの中で、順調に施工を進めている。
 6月から8月の杭工事では、平面積の広い建物を支えるために、長さ20mのPCa杭1205本のほか、地震の引張力に対応する鋼管杭230本を打った。
 図面・作図、設計事務所対応をしている藤田は「躯体工事に先立って、設計者・監理者・各専門メーカーと打ち合わせ、何度も議論を重ね、施工図と製作図を工程に間に合わせるために作り込みました。早めに図面を進めたことでスムーズに施工につながり、順調に来ています」と語った。

第1工務課長
(管理・教室棟)
藤田 武志

第1工事係(管理・教室棟) 
玖津見 敏広

 8月から10月までは基礎工事、10月から1階の躯体工事に取りかかった。教室・管理棟の建物の構造は、柱がすべてPCa、そのうえRC造とS造の混在した構造となっており、綿密な施工計画が求められた。
 躯体工事では、工場から搬入された重さ4tのPCa柱、1154本を運ぶために、150tのラフィングタワー2台を配置して建て込んだ。
 現場の工程管理、設計事務所の検査対応をしている玖津見は 「低層の建物5棟と7つの中庭外構工事を同時に行ったので、同じ工区でも毎日違う作業をしなければなりません。PCaの柱を立て、グラウトを注入し、鉄骨を載せて、床のデッキを敷く。すべてを把握するために、一日中現場を回っています」と笑顔を見せた。
 この現場には、設計・監理をしている日建設計が常駐して、厳しい施工監理をしている。前田JVは、設計者の要望を確実に施工に反映させ、重要なもの、複雑なものに対しては、進んでモックアップを製作し、問題点を抽出した。問題点に気づいたら、十分に調整し、確実に施工している。
 技術面で最も神経を使ったのは、打ち放しコンクリートの精度および表情である。所長の長谷川は「コンクリートの精度を高めるために、鉄筋と型枠の間の被りを通常より多くとりました。コンクリートを打設する前に、協力会社を集めて勉強会を開いたことが功を奏したと思います」と語った。
 前田建設が得意とするコンクリート打設技術を、いかんなく発揮している。

 2004年4月から、仕上げ工事に取りかかった。
 設計事務所対応と、現場の工程・安全管理を担当している第一工事長の須崎は「これまで最も厳しかったのは、今年3月から5月の躯体工事から仕上げ工事への切り替えでした」と振り返る。
 7月からは徐々に足場が取り外され、校舎の外観が姿を現し始めた。
 意匠を活かしながら、耐久性を追求するのは難しい。シンプルで洗練されたデザインを活かすために、建具の型材を特注した。
 図面チェック、メーカーでの製品検査・取付け後の検査を経て施工することで、機能および意匠上の要求を満足させている。
 「意匠的に優れ、機能上も問題のないものを造るというこだわりを、この仕事に関わるすべての者が持って造っているので、美しく気持ちのよい空間に仕上がっています」と藤田。

コンコースの上に設けられた丸窓

第1工事長
(管理・教室棟)
須崎 太朗

 躯体の工種は鉄筋、型枠、設備、電気の4種だが、仕上げ工事に入ると30から40工種を同時進行させなければならない。作業を計画どおりに進めるためには、打ち合わせがますます重要になる。
 「施工後は、必ず設計会社と一緒に全数検査をしています。設計の要望を反映させるために、協力会社の職長だけでなく、現場で作業をする人たちにも作業手順や注意点を綿密に伝えて、みんなで造っていると実感しています」と須崎。
 「建物の形が見えてくるのが楽しみです。竣工まで意欲的に仕事を進めたいと思っています」と玖津見。
 「使い始めてからより良くなる建物にしたいですね。耐久性に優れ、安全で、利用者全員に喜んでいただける建物にしたいと願っています」と藤田。
 「気を抜かず、竣工の45日前の9月中旬までには完成させて、ゆっくり自主検査をする予定です。この建物を経験したことで、品質管理の目線が高くなったことは確かです」と須崎が締めくくった。
 2004年11月竣工、2005年4月開校に向けて、工事は着々と進んでいる。新校舎に生徒の歓声が響く日を思い描きながら。

前田・銭高・日本国土開発・橋本・奥田
特定建設工事共同企業体
東北学院作業所 
所長 長谷川 修

 我々は、「100年使っていただける品質の良い建物」のために、意匠の要望と監理の条件を満たして丁寧に施工しています。毎日綿密な打ち合わせを重ねて、協力会社約500名とJV職員32名全員に、工程と役割を知らせるなど、努力してきました。
 ここまで無事故で来られたので、竣工までの約2カ月間を無事に進めて、「100万時間無事故」を達成したいと思っています。

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