豊橋総合スポーツ公園#1

未来型スポーツアリーナ構想を実現する

 2006年、豊橋市は市制100周年を迎える。その記念事業として、豊橋総合スポーツ公園の一角に屋内 プールの建設が進んでいる。
 豊橋市は、まず市民プールの老朽化に伴い屋内プールを計画。その後、市内にアイススケートリンクがないことから、プールとアイススケートリンクを兼ねた施設として建設されることとなった。

  豊橋市都市計画部公園緑地課の川合郁郎氏は「幼児から高齢者まで多くの市民に利用していただくために、日本初の田の字の可動床プールの建設が決定しました。工事に関しては、施工段階で完成後のメンテナンスまで考慮して対応していただけるので、助かります。夏は一般用プールや競技会場として、冬は一般用アイスリンク、またスケート競技やアイスホッケー競技会場とし、あるいは学生の合宿の場などに活用して、活性化を図りたいと考えています」と夢を語った。

 (独)都市再生機構(旧都市基盤整備公団)中部支社中部公園事務所専門役の鈴木辰男氏は「豊橋市さんから2003年に実施設計および工事を受託、豊橋市ご担当と協議し、2004年に前田・五洋・神野JVに工事を発注して、2005年12月の完成を目指しています。そして、より良いスポーツ施設を建設して、豊橋市さんにお引渡ししたいと思っています」と意欲を語った。

 建物の設計はプロポーザル方式により、(株)日建設計の提案が採用された。設計室長の葛原定次氏は「建物は様々な海の生き物を、見る人がイメージできるよう、流線形のドームの屋根を少し傾け、圧迫感を与えないように工夫しました。その屋根の形を、建物内部でも感じていただけるよう内部空間もシンプルに設計しました。大会のときに使用する観客専用の出入口も設け、2階の観客席やロビーからは目の前に海が見えるよう、開放感のある建物にしました。長軸方向の水平・垂直のバランスをあえて崩した設計の建物なので、施工が大変だと思います。建築JVさんのコンクリート打ち放しは仕上がりがとてもきれいなので、私たちの要望に十分応えていただけると期待しています」と設計の趣旨を語った。

豊橋市都市計画部
公園緑地課

川合郁郎

(独)都市再生機構
中部支社
中部公園事務所

専門役 鈴木辰男

(株)日建設計
設計室長

葛原定次

 50mメインプールは、10コース、幅25m、日本初の田の字4分割可動床により水深を0.3m~2mに調整し、安全柵を設置して、競泳とスケートリンクに使用できる本格的な公認競技用プールとして計画された。
 冬季は50mメインプールの可動床をすべて上げ、その上に配管設備を施して氷を張り、長さ60m、幅30mのアイススケートリンクとする。

臨海エリアに巨大空間が出現する

 ここは、東海地震の要注意エリアでもある。このような理由から、建物を支える基礎工事は万全を期して慎重に進められた。
 基礎工事では、22~27mの杭を392本も打ち込んだ。基礎工事のために地面を掘削すると、海水が湧いてくる。それに対処するために、職員全員で意見を出し合い、掘削した部分に工場生産したユニットを据える「ユニット化工法」を採用して、スケジュールの遅れを取り戻した。


 施工監理、工程管理、発注者への対応を担当している副所長の斉藤和盛は「設計どおりに良い建物を安全に建設すること、現場に行って現実を知ることを心がけています。毎日約30分間、職員が施工や工程について意見を出し合う『トーク30』から新しいアイデアが生まれ、杭打ちや湧水の問題を解決できました」と振り返った。

 主任の押川隆は、仮設工事、屋根工事、アルミカーテンウォール、塗装工事をメインに現場全体を見ている。「建築工事は、足場の仮設計画が施工に大きく影響します。無足場工法による大空間の天井の施工は初めての経験なので、とても勉強になりました」と話した。
 斉藤は「この現場では、ユニット化を採用したこと、岡崎所長の経験を生かしてプールの防水施工ができたことなど、いい経験ができました。最終的にいいものを造らないと施工過程を台なしにしてしまうので、職長会と協力して施工にあたっています」と語った。


豊橋スポーツ
公園作業所
副所長(監理技術者)

斉藤和盛

豊橋スポーツ
公園作業所

主任 押川 隆

▼次のページへ