豊橋総合スポーツ公園#2

銀色のドームを強靱な骨格で支える

 ドーム形の屋根の施工にも、数々の工夫が重ねられた。屋根の高さは最高28m。屋根自重、地震、暴風雨、積雪などの荷重を安全に支持し、意匠デザインを生かした構造にするため、架構にキールトラス構造を採用し、立体トラスのジャッキダウン工法で施工した。長辺方向に直径70cmの鋼管3本の組み合わせからなるキールトラスを2列配し、短辺方向には最長25mのサブトラスをユニット化して組立てていった。
 副所長の若宮俊和は、4カ月を費やして工場生産用の施工計画書を作成し、工場に出向いて精度を出すための交渉にあたった。鋼管は熱で伸び縮みする。朝夕の気温の違いでも寸法が変わる。温度による寸法の違いをシミュレーションした上で、測定の場所、時間、方法を決めるために、設計者との話し合いを重ねた。
 屋根は、鉄骨の骨組みの上にパネルを張り、その上にステンレスを貼る2重構造である。海に近いという立地条件を考慮して、屋根材には耐候性・耐塩性の高いフェライト系ステンレスのシームレス工法を採用。メンテナンスフリーにするために、丁寧に作業が進んでいる。
 建物内部の天井を無足場工法で施工するために、キールトラスの間に設備工事やメンテナンス用の通路を設け、すべての設備資材を屋根に運び上げ、屋根から設備工事を進めている。
 ドーム周囲の鉄柱は、1本1本違う角度で立てるため、通常の平面図では表すことができない。そこで押川は、前田建設が開発した3D-CADを駆使して施工にあたった。2階の周囲には、サッシュとガラスカーテンウォールを採用。観客席の前に三河湾が広がり、特に夕日の眺めが素晴らしい。

美しいコンクリートをまとう

 建物の壁面の大部分に、高度な技術を要する打放しコンクリートが採用された。そのため、コンリートを打設する前には工程や役割についての綿密な打ち合わせをする。コンクリートを送り込むホースの先端には、前田建設が開発したM-Yミキサを使用して、骨材をまんべんなく行き渡らせて、頑丈なコンクリートに仕上がるよう工夫し、コンクリートの打設には、職員全員が立ち会う。その結果、壁面は実に美しい仕上がりを見せている。
 この現場のもう1つの特長は、建設会社による自主管理が義務付けられていることである。監理責任者である若宮が、都市再生機構の設計・施工の監理内容に基づいて現場を監理し、その結果を記録する。
 工場生産のユニットはすべてのサイズが違うため、設計図の作成からユニット生産まで一貫した管理体制をとり、生産工場で全数検査を行う。このような都市再生機構が監理する建物での自主管理形態受注は、この現場が初めてである。

 斉藤は「完成した建物に愛着をもってもらえるように、地元の協力会社に施
工をお願いしています。みんなの気持ちが1つになることで、いい建物ができる
のです。メインプールの可動床が完成し、天井のネットや足場を撤去して、みなさまに喜んでいただける日を楽しみにしています」と完成への抱負を語った。
 このプール棟は、自然採光、太陽熱発電装置、雨水利用で省資源・省エネルギー化を図り、残土を利用した緑化推進で地球環境にも配慮している。
 建物内部から天井を見上げると、ドーム形の屋根を支えるキールトラスは動物の体を支える強靭な背骨、サブトラスは大切な臓器を守る肋骨のように見える。
 完成は2005年12月。この建物が市民のスポーツの場として親しまれ、水泳やアイススケートの競技会場として多くの人々の歓声に包まれる日が待ち遠しい。

豊橋スポーツ公園作業所
副所長(監理責任者)

若宮俊和

豊橋スポーツ公園作業所

所長(現場代理人) 岡崎 厚志


 職員には、現場に行き、現物を見て、現実を知る三現主義を徹底し、私は第三者の目で現場を見るようにしています。この建物で一番重要なのは仮設工事です。この現場の最大の特長は、大空間の天井を無足場で施工したことです。また、プールの施工には私の秋田県立総合プールでの経験を生かして、品質管理を実施し、プールの公認検査合格はもとよりクレームゼロを目標に、責任持って施工しています。

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