町屋駅前南地区第一種市街地
再開発ビル(仮称)新築工事#2

 解体工事の特徴は、敷地内の個別店舗で営業していた地権者が、大型店舗跡地に建てる仮設店舗で工事期間中に営業を継続することである。
 現場では、地権者の引越し、既存建物の解体、再開発ビルの杭打ち、仮設店舗の建設と引越しが、めまぐるしく進められた。解体工事で最も多くの時間を要したのは、大型店舗赤札堂の解体である。赤札堂は杭構造の鉄筋コンクリート造だったため、地下に打ち込まれた直径110cm・長さ30m・重さ100tの鉄筋コンクリート杭を一本一本引き抜いた。敷地内に居住者がいる中で、大型重機を使い、細心の注意を払いながら作業を進めた。超軟弱地盤での杭抜き作業は難航した。
 工程の調整、品質管理、安全管理など工事管理全般を担当している工事副所長の松山芳尚は「解体と新築工事の同時進行は、この現場が初めてです。半年間、現場には目いっぱい重機が入り、ひしめくように作業を進めていました。非常に密度の濃い工事でした」と語った。
 再開発ビルは、低層部に大規模店舗赤札堂を含む商業施設、高層部には301戸の共同住宅を有する建物である。
 さらに、1~2階の低層部と3~28階との間に免震ピットを備え、中間免震装置を設置した。超高層ビルの中間免震構造は、日本初の試みである。施工計画と施工図の作成業務を担当している工務係の増田浩行は、低層階と高層階の間の中間免震構造も担当した。「本物件のような再開発建物での中間免震装置の施工は日本で初めてなので、施工実験を含めた検討を行ったうえで施工しました」と増田。
 この建物はPCa積層工法で施工し、当初は1フロア8~9日、5階以上は1フロアを6日で施工している。

町屋再開発作業所

工務係 増田浩行

町屋再開発作業所

工事副所長 松山芳尚

日本初の地下鉄ホームダイレクト接続 マンション・店舗と 地下鉄のホームを直結 町屋再開発土木作業所
土木主任 
小泉伸之

 現場は、東京メトロ千代田線と京成電鉄本線の間に位置するため、両社と施工計画を検討。地下工事の影響の大きい東京メトロ千代田線側には、近接工事対応策として常時自動計測を実施して、地下鉄の安全運行を確保した。
 さらに、東京メトロ千代田線町屋駅は建物の前面道路真下に位置するため、建物の地下2階に連絡通路を設け、東京メトロの管理する連絡エレベーターをビル内に設置して、建物内から町屋駅ホームにダイレクトに接続することになった。これも日本初の試みである。
 町屋駅への連絡路を担当している土木主任の小泉伸之は「初めて建築の現場に入って、土木と建築の仕事の違いに驚かされました。この建物の特色である駅への連絡部分を担当できたことを誇りに思い、建築担当者と一緒にいいものを造りたいと思っています」と語った。
 この現場には、中間免震構造、高強度コンクリートの採用、PCa積層工法の採用、地下鉄近接工事、深層地盤改良など、さまざまな要素が詰まっている。楕円形の形状を美しく仕上げるために、PCaの製作会社であるフジミ工研と綿密な打ち合わせを重ね、設計会社や前田建設の構造担当者と相談しながら仕事を進めている。「この建物でいろいろな技術を経験できたこと、社内の人たちに相談して助けてもらい、自分の幅を広げることができたことが、大きな収穫です」と小高。
 8月中旬以降に、駐車場として使用していた部分に一気に躯体を造り、仮設店舗を引越す。さらに、現場事務所を近くのビルに移して、現在使用しているプレハブの事務所を解体する。「マークスタワー」は、町屋の未来を象徴するように聳え立ち、期待と注目を集めて、平成18年3月の竣工を目指している。

 

町屋再開発プロジェクト部長 町屋再開発作業所

所長 川島要一

私はこの現場で「できなかったことの言い訳をしないこと」「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)を実行して成長すること」「不言実行は認めない。有言実行を評価する」と言っています。私自身も有言実行で、週に1~2度は、朝礼のあと、現場で働く作業員全員に声をかけて、一人ひとりと話しています。それによって、実際に建物を建てる人々の意欲を高め、不具合の発生しない高品質の建物を完成させたいと思っています。

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