大保脇ダム本体建設工事#2

Construction REPORT 15
Construction REPORT 03

 この脇ダムは、高さ66m、堤体積182万m3の中央コア型ロックフィルダム。利水放流設備は本ダムに設置されるので、コンクリート構造物の一切無い、水をせき止めることに徹したダムである。
 フィルダムの最大の特徴は現場にある材料をできるだけ使って、経済性を高めることである。この脇ダムでも材料のほとんどを周辺の山から採取している。
 現場では重機や45t積みダンプが休み無く働いていて、作業が続いている。自然相手の作業なので、降雨による思わぬ法面変状や、採取する材料の性質に変化などがあるので、常に細心の注意をしながら作業が進められている。
 沖縄独特の粘土質の赤土は、フィルダムのコアに用い、ダムの水をせき止める役割を担う。コア部が地山にぶつかる着岩面は、堤体盛立前にセメントミルクを注入し、強度の一様化と遮水性の改良を行う。そして、着岩面の岩盤を刷毛で丁寧に掃除した後、粘土を水で溶いたものを塗り、その上に細かい粘土を載せて小さい溝までふさいでいく。さらに、この着岩部と、1層30cmで施工する標準部との間を10cmずつ3回に分けて締め固める。こうして、水が漏れることのないよう地山とダムを一体化させる。コアの外側には、コアの粘土が流れ出さないように細かい岩石を使ったフィルターが施工される。そのさらに外側には良質な岩石が配置され、コア部をしっかり支える。 最上流部には岩石が積み上げられて表面を保護し、下流側は余った土石で保護し緑化される。
  このような施工を繰り返し、2006年10月の盛立完了を目指している。


拡大図

大保脇ダム作業所

土木課長  岩田 龍明

ダム工事総括管理技術者


脇ダムの盛立と原石山の掘削を担当しています。ダムの施工では運搬が大動脈ですから、毎日、綿密な打ち合わせをして安全管理に務め、道路計画を立ててダンプや重機をムダなく動かして、作業効率を高めることが大切です。原石山から必要な材料が出ない場合は、それに応じて作業計画を立て直して対処しています。

大保脇ダム作業所 関根 智之

原石山の掘削、法面の測量、品質管理を担当し、毎朝、作業前に原石山を観測し、データを解析した上で作業を進めています。原石山に伸縮計を設置して、高さ8mの一法面が1時間に2mm以上変化したら警報が鳴るよう設定して法面の変状を管理しています。

CO2対策工 マングローブ植樹計画 塩屋湾の岸をマングローブの森に

 沢処理工、脇ダムの施工前に、既存の沢をせき止め、調整池として赤土の流出を防ぎ、高い塀を造って民家への騒音対策を講じた。
 さらに、ダム建設と同時に、約8万本の植樹を行ない、1800tの二酸化炭素を固定化する計画にも取り組んでおり、その一環としてマングローブの植樹が行なわれた。
 マングローブの植樹の場所としては、大宜味村白浜地区の海岸沿いが選ばれた。道路改良工事をする前にはマングローブが茂っていたという場所である。現在でも大保川下流域には、小規模ながらマングローブの群生が残っている。琉球大学農学部の中須賀教授によると、30年前までは大保川に10~15mのマングローブが自生していたという。
 過去にマングローブが自生していた場所であり、植栽にも適しているとの見解を得て、白浜地区沿岸部の地下水や淡水の流入が見られる条件の良い場所を見極めて、植栽許可を申請。4400gへの植栽が認められた。
 まず、大保川などに自生しているマングローブ(オヒルギ、メヒルギ)の胎生種子を採取。地元の人々がその種子をビニールポットで栽培した。成長した苗木はボランティアの手で植栽し、地元の人々とともに生き、やがて30年前の景観が蘇る。
 
 大保ダムに水が満たされるのは2009年。ヤンバルの森に生まれる新しい水源が、沖縄の人々の暮らしを、さらに潤していく。

大保脇ダム作業所

事務  茅島 正岳


今年4月に入社して、この現場に配属されました。現在は労災保険を担当し、現場の安全パトロールに出ることもあります。まず事務の基礎を築いて、1級土木施工管理技士の資格を取得して、現場で事務の仕事を続けたいと思っています。

 

大保脇ダム作業所

所長 土屋 正雄 ダム工事総括管理技術者

 私は今年8月にこの現場に着任しました。着工時からしっかり施工していますから、現場のことは安心して職員に任せ、良い雰囲気の中で施工を進めていきたいと考えています。それには、無事故で良いものを造ることが大事です。私はダム一筋に仕事を続けてきましたから、「ダムは水を貯めたときに真価を発揮する」ことを職員に伝えています。

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