2006年2月から5月にかけて、計画地の地質のボーリング調査を重ねた。風車を建設する位置は、風の状況、地盤の条件、用地の確保などの諸条件が整わなければならない。この条件を満たすために、10基のうち8基の設置位置を変更した。このとき、地質のボーリング調査で前田建設の山岳土木の実力が発揮された。
珠洲風力作業所工事係の石井裕介は「能登半島の土は柔らかい粘性土なので、建設用の仮設道路も建設用地も、雨が降ると粘りが出て、晴れが続くとカチカチに固まってしまいます。そこで、重量に耐えられるよう、仮設道路や風車の建設用地に、鉄板を敷きました。鉄板の総重量は1700t。これは風車10基分とほぼ同じ重量にあたります」と語った。
工事は風に左右されるため、現場では毎日天気予報を確認し、風の影響を受けにくい早朝から作業を始め、風が強くなるまでに作業を完了させている。
風車のタワーは、120本のボルトでしっかり基礎に固定する。ボルト穴の寸法にゆとりがないので、施工精度が要求される。タワーを据え付けるとき、現場の空気が張り詰める。基礎の精度を高め、安全性を確保することには、前田建設が長年取り組んできた送電線の鉄塔の基礎を建設する技術が活かされている。
風車のブレード(羽)は、山の斜面に延ばすことで、周辺の樹木の伐採を最低限にして、3本のブレードを地組みする。650tと120tのトラッククレーンで水平に持ち上げ、120tクレーンをゆるめながら、650tクレーンでY字状に吊り、ナセルに取り付ける。こうして、尾根という極めて狭隘な土地を有効活用し、風車を設置する施工法を確立した。
隣接地の樹木の伐採を最低限に抑えることは、自然への配慮であると同時に、樹木の補償費の縮減にも繋がる。この点においても、山岳土木の経験を活かした前田建設でなければできない工法として評価されている。 |