多摩プロジェクト新築工事#1

TOP Report#1 Report#2
一大拠点構想 建物と外構が調和した人々が集う環境をつくる

 多摩プロジェクト新築工事について、発注者である株式会社CSKホールディングス グループ総務部長の大和信一郎氏は、こう語った。
 「私共はITの強みを活かしたサービスプロバイダー企業グループを目指しています。
 この度CSKグループの研究開発と社会貢献活動を拡充するために、多摩プロジェクトを計画しました。
 社会貢献活動として、1992年に障がい者雇用を目的とした、東京都・多摩市・CSKホールディングスによる第三セクターtgs(東京グリーンシステムズ)を設立し、『障がい者とともに、地域とともに、自然とともに、社員とともに』というスローガンのもとで、フラワービジネスを展開しています。多摩プロジェクトの温室で1万5000鉢、すでに栽培を始めている千葉県印西市で5000鉢、合計年間2万鉢の胡蝶蘭を栽培し、市場への出荷や品評会に出品する計画です。
 建物は、株式会社CSK-ISの研究活動の拠点や研修の場として活用します。また、CSKグループの社会貢献活動である、ワークショップという新しい学びのスタイルを通してこどもたちの『未来を切り開く力』を育む“CAMP”も行う予定です。
 建物の設計はシェマ・アーキテクツの蔵島ニ三先生に、外構と庭園の設計は京都造形芸術大学教授の尼崎博正先生に依頼しました。田畑や水辺をつくり、5年くらいかけて少しずつ日本庭園に進化させ、日本の原風景をつくります。
 環境への配慮としては、屋上に太陽光発電を導入しました。
 私共は、これまで前田建設さんとともに新しい事業に取り組んできました。多摩プロジェクトも、多彩な用途の建物と庭のコラボレーションという新たな事業です。ぜひとも成功させたいので、期待しています」
 2007年6月、多摩センターの丘に新しい建物と環境が生まれた。

株式会社CSKホールディングス
グループ総務部 部長

大和信一郎

A棟 RC造とS造を駆使して大空間を造る

 着工は2006年5月。A棟、温室、B棟を同時に建設する。建物の用途も構造も違うため、全く別の3つの現場が共存するような形で建設が始まった。
 2006年11月末に建方を完了。12月から足場を外し、2007年4月後半から社内検査をし、5月末の竣工・引渡しを目指した。
 A棟は、地下2階・地上2階。1階床までがRC造・その上はS造という構造の建物を、急斜面に建設する難工事だ。平地なら基礎から建設を始めればよいが、傾斜地という特殊な立地で、工期も厳しい。そこで、工事の手順を考え、まず丘の頂上の傾斜地を崩して平らな面を造り、次に上の段を掘削して山留めをし、丘の上と下から工事を進めた。
 A棟と温室は、CSK・東京都・多摩市が共同出資したtgsの建物である。中庭にはシンボルツリーを植え、車椅子用のスロープを完備した。1・2階には一般の人々も利用できる中央に大きな吹抜けのあるレストランがある。1階には他に温室で栽培された胡蝶蘭や観葉植物を販売する店舗や、梱包用のスペースやオフィスがある。東側・西側ともに大きな跳ね出しがあるが、西側は下から丸柱で支え、東側はブレースで上から吊る形をとっている。ガラスカーテンウォールの向こうには、多摩センターの風景が広がり、赤い塗り壁が社員がくつろぐ和室のアクセントになっている。
 内装はシンプルな意匠を活かすよう、シャープさを徹底的に追求。スピーカーを天井のパンチングメタルパネルの中に納め、照明器具の周囲の5mmの隙間をすっきりと仕上げるなど、細部まで慎重かつ丁寧に作り上げている。大空間にはアンダーフロア空調を導入し、ダクトを床下に設置。外壁のステンレス製パンチングパネルは、S造部分とRC部分の貼り方が違うが、違和感のないよう美しく仕上げた。
 A棟の工程を厳守し、屋上に設置された太陽光発電についての補助金を受け取った。

床を支える丸柱

レストラン完成イメージ

多摩CSK作業所 設備主任

露木貴史

意匠的に特化した建物なので、限られたスペースに設備機器が納まるよう工夫しました。アンダーフロア空調は、居住域の温度と気流が均一になるよう、コンピュータで温度・気流分布をシミュレーションして床吹出し口の配置・選定をしました。環境に配慮した取り組みとしては、苑池、水田、温室に利用するために、井戸を掘削しました。竣工に向けて厳しく点検し、ご要望にお応えできるよう努めています。

▼次のページへ