多摩プロジェクト新築工事#2

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温室 傾斜した独創的な意匠を 造り上げる

 温室は傾斜した形状のため、地盤レベルと建物との関係を把握することが難しい。また、A棟との取り合いにも工夫が必要とされたので、何度も検討を重ね工事を進めた。
 温室1の鉄骨は、A棟の本体の躯体と取り合っている。したがって、本来ならばA棟の足場を解体してから温室1を施工するのが通常だが、限られた工期では、その手順を踏む時間がない。そこで、工期を短縮するために、A棟の足場の間に温室の鉄骨を差し込むかたちで施工した。
 温室2は、A棟と温室1に接しているため、温室1と同時に建設した。
 観葉植物を栽培する部分の床は、すべてコンクリートを打設。胡蝶蘭を栽培する部分の床は、鉢を置く位置には土を入れ、栽培する人が作業のために歩く通路にはコンクリートを打設した。
 床下のピットでは、設備工事が進んでいる。栽培に適した温度・湿度をコントロールするために、最先端の設備を完備する。
 この温室はtgs「多摩ファーム」となり、地元の障がいのある人々が胡蝶蘭や観葉植物の栽培に携わることになっている。

多摩CSK作業所 工事主任 鶴谷 学

A棟・B棟・温室が同時進行していくなかで、施工誤差をゆるさない納まりが多く、業者と密に打合わせしながら、顧客の求める品質を確保するよう努めました。次の工程を把握し、先を読んで段取りをするのですが、想定外のことに直面することもありました。特にA棟外観のアクセントになっているモニュメントの円形柱は、3本とも径が異なり、角度、向きも違うため、施工が大変でした。この現場では精度を確保する重要性を改めて実感しました。

A棟とつながる温室1

施工が進む温室1の内部

胡蝶蘭 白大輪

B棟 建物と外構が織り成す 静と動のコラボレーション

 研修、集会、シンクタンク施設として使われるB棟はパティオ(中庭)をはさんで2棟で構成され、用途の異なる空間が集積されている。外観には、杉板の型枠を使い、美しい木目を転写した打放しコンクリートが、和の趣を醸し出している。
 地下1階は、赤い塗り壁が映える大胆な吹き抜けの空間に、階段が伸びている。2階には、本格的な数寄屋造りの茶室、囲炉裏コーナー、ギャラリーなどがある。屋上には、畑とそば打ちコーナーがある。2棟の間には竹を植え、建物の間を吹き抜ける風が竹を揺らし、光を和らげる日本庭園となっている。
 外構は、自然との共鳴を追求している京都造形芸術大学教授・日本庭園研究センター所長の尼崎博正氏が監修している。棚田や畑のある農園を中心に置き、石・水・樹木を配置する。外周には、桜、松、栗、柿、菜の花などを植える。こうして、青空の下で田畑に親しむ里山を造る。竣工後すぐに田植えをし、秋には収穫する予定だという。将来的には、ホタルの棲む環境をつくる計画も練られている。
 多摩プロジェクトは、2007年6月にオープンし、ここに生まれた新しい環境は、地元とともに発展する。

多摩CSK作業所 副所長 松山芳尚

低層・複数棟・傾斜地施工・切土盛土を含む大規模外構の物件を、1年間という短期間で施工するために、労務の集中を極力避ける工程計画・外構工事の早期着手・省力化工法の積極的採用に努めました。また、意匠的に納まりが難しく、設計との図面打合わせを朝8時まで続けたこともありました。職員全員の努力の結果、キーデートを厳守し、計画通り竣工にこぎつけることができたと思います。

多摩CSK作業所 所長 児玉哲也

 建物の形状の難しさ、短い工期という課題をクリアするために、話し合いを重ね、現場の意見をすくい上げながら工事を進めてきました。本・支店や構造設計の協力を得て、全社で建設にあたり、施工後は厳しく検査をし、意匠の持ち味を生かすよう努めています。
 徐々に姿を現す建物を見ながら、自分たちの力を発揮してよくまとめられた、前田建設の素晴らしい実績になるだろう、と思っています。職員一人ひとりが、この現場に誇りを持ち、ここでの経験を生かして、第一線で活躍してほしいと願っています。

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