東北本線与野・さいたま新都心間
赤岩Bo改築工事#2

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JR線の上空へ新橋を送り出す

 いよいよ本格的に新橋の建設が始まった。
 2007年10月、ステップ5。線路の中ほどに「ベント」を建造した。「ベント」の施工が、この現場で最も困難な工事であった。作業はすべて夜間、終電と始発の間のわずか1時間しかない。この厳しい時間の制約を見越して、かなり早めに工事に着手したが、1日の作業量が思いのほか少なかった。施工中もJR線は毎日営業しているため、線路やダイヤに影響を及ぼすことのないよう、慎重かつ着実に工事を進めた。「ベント」の施工には約1年を要した。この間、昼間は線路東側のヤードで「手延機」を組み立てた。「手延機」は先端を細くし、次第に太くして、「手延機」の後ろに新橋を付けた。
 2007年12月、ステップ6。線路の中央部に完成した「ベント」を経て、東側の橋脚まで「手延機」を送り出した。
 2007年12月、ステップ7。西側ヤードで新橋の地組み立てが始まった。完成後はアーチ部分がライトアップされるため、送り出す前に照明設備も取り付けた。
 ステップ8で、2回に分けて新橋を送り出す。送り出しを2回に分けた理由は、ヤードが狭いため、橋全体を一気に送り出すことが困難だったからである。
 第1回の送り出しは2008年3月11日、線路の中間地点の「ベント」まで。深夜2時15分から3時過ぎまでのわずかな時間に、東側のヤードで地組み立てした新橋が送り出された。 夜風の冷たい深夜にもかかわらず、作業開始時間を待ちきれないかのように周辺住民が現場に集まり、ビデオカメラを構えたり、三脚にカメラを据え付けたりして、工事の開始を待った。 終電が通り過ぎるのを待って、送り出しが始まった。新橋が動き出すと、シャッター音が響いた。何度か送り出し機を調整しながら作業が進む。工事関係者も周辺住民も、固唾を呑んで工事の様子を見守った。新橋の先端が線路上の中央まで送り出されると、間もなく始発の貨物電車が通過した。深夜の作業時間の厳しさが、ひしひしと伝わってきた。
 第2回の送り出しは4月16日。この日も数回の微調整を経て、新橋が東側の所定の位置である橋台に到達。線路の上空にアーチが出現した。周りの風景が一変し、新橋への期待が高まった。
 新橋は予定の高さより1.3mほど高い位置で送り出し、5月から6月に1.3m降下させて、所定の位置に設置する。

送り出し作業の動力部分

着実に施工したベント

JR与野作業所
土木課長
藤岡重信

私は、日々の打ち合わせや詳細な施工計画など、工事全般を担当しています。一番大変なのは、線路内の工事の切り回しです。線路内の施工時間は夜間のみで、実質1時間ほどしかありません。その時間をできる限り有効に使わなければならないからです。雪でダイヤが乱れて、終電と始発の間隔がなくなったため、工事ができなかった日もありました。それでも工期を守れるよう、綿密に施工計画を立てています。特に、線路内のべントの基礎工事については、2~3週間かけて施工計画を立てました。期日どおりに施工できると、楽しいし、うれしいです。

 電車の安全運行を妨げることのないよう、線路内での作業は、毎日、終電から始発までのわずか1時間ほどに限られている。したがって、旧橋の撤去も、新橋の施工も、深夜の約1時間を有効に活用して作業を進め、線路の点検をして始発電車が安全に走れるようにしなければならない。
 JR線の運行を妨げないようにするための対策は、ほかにもある。現場周辺には高層ビルがあるので、ビル風や強風による資材などの飛散が懸念される。そのようなことのないよう、資材は養生を徹底し、現場の点検を強化して、通常の現場で見られるような掲示物を禁止した。
 このような点が鉄道工事の特徴である。線路上での作業時間が短い分、昼間、作業ヤードで橋を地組み立てするなど工夫して、十分に段取りを整えて施工している。
 また、安全管理の取り組みとしては、協力会社の作業員への安全教育や新規参入者教育を行い、作業ルールを徹底している。
 環境の面では、近接しているマンションに、週間計画工程などを持参して、作業工程や騒音・振動が起きる日時などを説明し、協力を仰いでいる。
 2009年春、この橋が完成すると、クルマも歩行者も安心して通行できるようになり、安全性も高まり、線路の東西がよりスムーズにつながることが期待されている。

送り出し作業の前に入念に
さび防止処理を施される白く美しい
単弦ローゼ橋のアーチ

JR与野作業所

所長 椎名 均

 現場では、職員にも、協力会社にも「安全と品質の徹底」を呼びかけています。通常の労災のほか、電車の安全運行を妨げることのないよう、細心の注意を払って日々の作業に取り組んでいます。些細なことではありますが、毎日の清掃と資材の整理整頓を心がけ、現場の環境を整備することが、「安全と品質の確保」につながる、と考えています。
 また、現場周辺のみみなさまにご協力いただき、とても助かっています。新橋が完成すると、地域の方々がJR線の東西を安全に行き来できるようになります。地元のみなさまに望まれている橋を建設し、お役に立てることを、とてもうれしく思っています。

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