エルモ社耐震改修工事#2

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本店・支店・現場の連携で

 受注後、まず前田建設本店リニューアル事業部で耐震補強計画を主とした基本設計を行い、その後、エルモ社様のご要望による「コンプライアンスの確保」をコンセプトとして、建築設計部中部設計グループが実施設計・監理と内装の設計を担当。リニューアル部分を現行建築基準法に適合させるべく検討を重ねた結果、西工場は全面改装し、本社工場は必要に応じて改修するという方針を立てた。手をかければ使える建物なので、使えるものは大切に使い、廃材を極力少なくすることにも取り組んだ。
 改修工事では、お客様が営業を継続している状態で施工する「営業しながら施工」を実施。お客様のセキュリティを重視して、夜間作業をせず、基本的に営業時間内に施工することを決定。そのために、お客様には特に工事中の振動や騒音にご理解をいただき、当社はお客様用の安全通路と作業用の資材搬入通路を確保し、安全に作業効率を上げることをご提案した。

西工場は、建物・設備の全面改修で

 西工場は、3階に部品を搬入し、2階の工場で製造し、1階に製品を保管し搬出するという新たな流れを作るよう改修した。
 2008年7月に着工。まず14カ所に耐震壁を新設し、建物全体の内装・外装を改修。屋上は、コンプライアンスを確保するために、倉庫の一部を撤去し、グリーンの防水シートに張り替え、くつろぎの場にした。
 設備については使えるものは有効活用することとし、空調機器は部屋ごとに制御できる空冷ヒートポンプによる個別空調方式に変更。工場エリアには全熱交換型ユニットを採用。照明設備はプルスイッチ付き高効率型照明器具に変更するなど、設備機器の変更により省エネルギーを図っている。さらにお客様からのご提案により、組立ラインの変更に対応できる「可動式電源コンセント」を設置し、生産作業効率の向上も図った。
 西工場棟は2008年12月から稼動している。

本社棟は、耐震補強と必要に応じた改修で

 本社棟は構造的に5棟の建物から成る。改修工事は、工場・事務所の営業を継続しながら、75カ所に耐震壁を、19カ所に耐震ブレースを新設し、耐震補強に重点を置いて施工する。
 2009年1月より、本格的に本社棟の工事に着手した。
 北別館は、地階の電気・機械室は解体せずに残し、1階以上を解体して平置き駐車場にする。お客様と近隣のみなさまにご理解をいただき、振動や騒音に配慮して工事を進め、3月末日に解体を完了した。
 本社棟の南館は築50年。長い歴史を経て、改修のたびに生産ラインが変わったことどにより、設備も複雑に入り組み、図面も非常に少ないという厳しい条件でスタートした。
 「営業しながら施工」をするには、24時間停止できない設備もある。そこで、休日を利用して設備を調査し、安全を確保したうえで工事に取り掛かった。
 本社棟の内装の改修は極力控えてコストを抑え、その一方で既存のサッシを磨いて使うなど、使える建材は使い、できる限り廃材を出さないよう工夫した。
 この現場で、築50年の建物も、適切に改修することでさらに寿命を延ばせることがわかり、改修の役割や必要性を再確認することができた。

WEBカメラの活用

北別館を解体する際、地階の目視しにくい機械の裏側にWEBカメラを設置。毎日、現場 事務所でモニターを見て、壁のクラック発生状況を確認した。

 

耐震壁の施工

大空間を補強するためにバランスよく「RC耐震壁」を増設。耐震ブレースの「見える 耐震補強」に対して、表面仕上げをすると耐震壁であることがわかりにくいので「隠す耐震補強」と言えるだろう。

 
 

躯体調査器具

「営業しながら施工」をするためには、電気を止めることができない。そこで「X線透過調査」や「ハンディーサーチ」を活用し、壁・床・天井に埋め込まれている配線を把握することにより、お客様の営業に支障なく設備工事を進めている。

 

松杭調査

本社棟南館の基礎に使われている松杭の掘削調査を実施。その結果、松杭は地中で適度な湿潤状態にあったため、耐久性に問題なく、今後も使用できることが明らかになった。

 

前田建設工業株式会社
中部支店 エルモR作業所

工事課長 徳山孝広

本社棟の管理責任者・元方・安全責任者として解体工事と施工を担当し、できるだけ良い建物にするよう心がけています。お客様には工事に伴う騒音や振動などについてご理解いただき、営業の段階から信頼関係を築くことができてよかったと思います。この現場で耐震改修の施工法を身につけることができたことは、私にとって大きな収穫です。

前田建設工業株式会社
中部支店 建築部
建築施工チーム 建築設備チーム

マネージャー 交田量彦

設計の段階から設備のご提案をしました。特に、西工場の可動式生産ラインに対応した可動式コンセントは、1区画だけ試作して使いやすさを検証したうえで施工しました。また、床・壁・天井を施工する際は事前に配線の位置を確認し、配線の施工は届出制にするなどして、電気を止めることのないよう工夫を重ねて「営業しながら施工」を実現しました。

前田建設工業株式会社
中部支店 建築部 建築施工チーム

リーダー 長岡慶治郎

新築工事の場合は、お客様の生の声をお聞きできるのは引渡しのときだけです。この現場は「営業しながら施工」なので、施工中にお客様から直接ご要望をお聞きして、その都度、目的に応じたご提案ができます。たとえば壁の厚みや収納棚の位置など、細かな点までお客様と話し合うことにより、できるだけ使いやすく仕上げるよう努めています。

豊実作業所 エルモR作業所

所 長 平井 喜代文

お客様のご協力を得て

 このような大規模耐震改修工事は、中部支店では初めてです。そこで、着工前に所長クラスを含めた部会のメンバーが定期的に当作業所に集まり、現場を見ながら検討を重ね、全体仮設計画や工事の進め方などについて検討したうえで、着工しました。
 お客様には、設計の段階から改修工事の日程表や「営業しながら施工」のための職場移動計画などを作成していただき、施工中の騒音や振動にもご理解をいただきました。
 おかげさまで、ほぼ工期通りに進捗しております。

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