(仮称)東根市立神町小学校分離校
整備等事業#2

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700項目の要求に応えた先進の小学校

 前田建設は、さくらんぼ東根学校PFIサービス㈱を組織し、プロジェクト・マネジメント業務と建設業務を担当。設計監理は地元で実績のある㈱秦・伊藤設計が担当した。小学校に学童保育所と地域開放エリアを併設し、要求水準書で提示された700項目の要求をすべてクリアしたうえで、地域防災拠点としての機能を持った建物を提案し、採用された。
 小学校、学童保育所、地域開放エリアは、エキスパンションで縁を切り、3棟の建物として建設。小学校は建物の向きを南西に少し振って採光をコントロールし、学年ごとにエリアを分けている。変化に富んだ形状に丸窓や丸柱を配し、鮮やかな色彩をアクセントにした。プールは昇降口と学童保育所の屋上に設置し、地域開放エリアとしては体育館と多目的ホール(おおもりホール)を設けた。学校専用エリアとは動線を分離し、防犯性に配慮した。
 前田建設は構造と設備を提案し、安全性とメンテナンス性に優れた建物の建設に取り組んだ。

「建物品質NO .1」躯体工事の品質と 安全性を追求

 着工は2009年11月26日。地盤改良工事に始まり、基礎躯体工事は冬季であったため、型枠内に雪が積もらないように日々のシート養生をし、コンクリート打設後にはブルーシートで躯体全体を覆い、ジェットヒーターを用いて採暖養生を行った。上部躯体は構造スリット()が多いため、コンクリート打設は入念な打設計画を基に、主任以下総出の体制で打設指示を行い、構造スリット、ジャンカ等()の不具合を防止した。山形は盆地なので夏は非常に暑いため、コンクリートの初期養生としてブルーシートを敷設し、融雪用ホースを用いて常時湿潤状態としてクラックを防止した。
 躯体工事自主検査では、1部材1シートによる全数配筋検査および躯体寸法検査を実施。監理者においても配筋のみならず、構造スリット、型枠精度、コンクリートの打設状況を専任技術者として検査を実施。検査頻度は週1~2回行い、発注者により安心していただけるよう努めた

細部まで徹底して維持管理しやすい建物を実現

 躯体工事は2010年8月に上棟。躯体工事の上棟を目前に控えた2010年7月から外部仕上げ、8月からは内装工事に着手した。
 外部仕上げは漏水対策に力を注いだ。24時間の水張り試験を行い、3棟を結ぶエキスパンションの部分にはゴムシートによる樋を追加で設置、屋上には躯体から側溝を計画して排水を確実に行えるようにした。防水の仕様においては15年間の維持管理を配慮した仕様を設計段階から盛込み、さらに細かい端部の納まりを徹底して施工した。
 また、内部の塗装には全て水性塗料を使用し、建材の選定にも十分配慮して、シックスクール症候群の発生を防いだ。また早期施工により乾燥期間を長く取れるよう計画し、健康的な空間を造った。
 年明けからの積雪による施工困難を想定し、2010年12月には工事の約95%を完了させ、2011年1月からは各種検査期間、そして2月からはPFI事業としての準備期間および4月の開校に向けた学校側の準備期間とし、3月31日に引渡しを完了した。

※「構造スリット」とは、RC造の建築物の柱のせん断破壊を防止するため、柱と壁の縁を切るための細い開口。
※「ジャンカ」とは、コンクリートの締固め不足やセメントと砂利の分離、型枠下端からのセメントペーストの漏れにより、空隙ができ強度が下がり脆くなる状態。

東北支店 建築部
建築営業グループ
建築営業チーム チーム長

さくらんぼ東根学校
PFIサービス株式会社
プロジェクトマネージャー

丹野 仁史

約6年前に土木営業として山形に赴任したとき、東根市様は消防署のPFI事業の最中で、消防署、給食センター、小学校の順でPFI事業に取り組む計画だと聞いていました。その3年後に建築営業に異動して、大森小学校のPFI事業の担当になりました。当社のPFI担当と話し合って入札に参画した結果、前田建設としては4例目、東北支店では初めてのPFI案件としてこのプロジェクトを受注しました。設計・施工から維持管理まで一貫した体制を構築するために、プロジェクトマネージャーを配置することを提案したことが、ポイントが高かったと思われます。
15年後に「前田建設に発注してよかった」と思っていただけるよう建物管理に取り組んでいきたいと思っています。

東根PFI作業所 建築主任

伊東 浩弥

2000年入社 神奈川県出身

入社してからずっと東北支店勤務ですが学校、博物館、工場、マンション、店舗等大小さまざまな用途の建設に携わる事が出来、ここで16現場目となります。この現場は平面的に広く、用途の異なる建物を3棟同時に施工している状態なので細部にわたる管理が大変でした。躯体工事では構造スリットの施工には細心の注意を払い、打継ぎ位置、打設計画には何度も打合せを重ねました。体育館はRC造、上部SRC造、屋根S造という構造で施工手順、仮設計画はとても面白味がありました。内部で使用し移動式足場は少し工夫したローリングタワーのようなものですが、非常に役立ちました。目の前でものづくりをしている「建築」はとてもおもしろい仕事です。日頃から厳しい環境で仕事をしていますが、「仕事を楽しむ」ということを3人のOJTにも伝えられればと思います。

東根PFI作業所 建築係

北川 佳史

2006年入社 千葉県出身

大学、アウトレット、工場、商業施設の建設を経験し、この現場に赴任しました。以前の現場では私が一番若かったのですが、この現場では私より年上は所長・副所長・主任の3人だけで、後輩が5人となり、これまでの業務から一転し、施工図や製作図のチェックなど、工務の仕事が主となりました。一番難しかったのは、屋上プールです。建物の漏水によるクレームは大きな問題となるため、屋上へプールがあるというハードルの高い計画を、社内だけでなく協力会社とも検討を重ね、施工を行いました。以前は与えられた施工図通りの工事を行うことが職務でしたが、図面チェック・作図する業務は、設計の意図を読み取り、また施工手順をイメージし、反映することが重要となります。今後は、そのような観点を磨きすべての図面を見られるようになって、現場のすべてがわかる人間になりたいと思います。

東根PFI作業所 設備係

佐藤 優太

2007年入社 秋田県出身

設備担当者は、設計と現場を2~3年ごとに経験することになっています。私は、自分が設計したものが現場でどう施工されるかを見るために、本店設計部からこの現場に赴任しました。入社3年目なので、このように大きな物件も、学校の設備設計も初めてなので、意匠設計との調整が大変でした。例えば、格子天井なので配管を黒にして目立たないようにするなど工夫して、設備をきれいに納めて、打ち合わせどおりに仕上げることを目指しています。また、当社からの提案として、給水の配管と電気の配線を、当初計画されていた地下から天井に移動したことで、スムーズに施工できました。小学校建設という素晴らしい環境を与えていただいて、よかったと思っています。

東根PFI作業所 建築係

土田 康太

2010年入社 新潟県出身

新入社員研修後、この現場に配属され、安全看板の製作と設置、コンクリート打設などを担当しています。安全看板を設置するということは、作業前に現場での危険箇所を認識することだと学びました。コンクリートの打設は一発勝負なので、打設日までの段取りがとても大切だと実感しました。打設を経験して、建物は多くの人が協力して作り上げているということを実感し、本当に感動しました。入社の動機は、私が大学生活を通して大事にしたいと感じたことが、当社の社是「誠実、意欲、技術」そのものだったからです。現場を経験して社是の意味を実感し、先輩が後輩を育てようとしてくれていることを強く感じています。

東根PFI作業所 事務係

松本 和也

2007年入社 埼玉県出身

東北支店の総務を経て、アウトレット建設現場で初めて現場事務を担当。昼間は現場で図面チェックなどを経験し、わからないことは自分で調べたり、東北支店の人に電話で相談して理解していきました。常駐の現場はここで3現場目。それ以外は、支店での業務と5~6現場を兼務していました。現場に常駐すると1日に1度は現場を回るので、何がどう作られているかわかりますし、発注者様や設計事務所さん、作業員さんとコミュニケーションをとりながら、建設業の仕事を実感できます。近隣の方から「あの山が3回雪化粧したら、ここに雪が積もるよ」と聞いたらジェットヒーターを準備するというように、現場をバックアップすることにやりがいを感じています。

床コンクリート打設

確かな技術を持つ土間コンクリート施工業者を選定し、入念なレベル管理とタンピングを行いコンクリートを打設。レベル管理は職員がオートレベルを用いて立会い。また打設後の精度確認も行い、±5mmの精度を確保した。

鉄骨梁の躯体打ち込み

体育館のRF梁(外周RC梁、内側S梁)にて型枠組立て時に鉄骨建て方を同時に施工し、互いの精度を調整。鉄骨はサポートで仮支持し、大型クレーンによる建方揚重費の削減をした。

天井配管・配線

設備のメイン配管と電気の配線を天井に設置することにより、安全性・作業性・メンテナンス性を向上させ、コストダウンにつなげた。

プールの断熱処理

プールの下階には居室があるため、防水対策は十分に実施。プールの外側に発砲ウレタンを吹付け、ピット内への結露の発生を防止した。

RD(リサイクルドレーナー)工法

敷地は元々畑として利用されており、表層部の土質はシルトを多く含み水はけが悪い。そこでグランド排水性能向上のため設計変更にて、この工法を採用。暗渠(φ50mm有孔管+疎水材)と補助暗渠(疎水材)を格子状に設置した。疎水材には宮城県松島などで廃棄物として問題になっているカキ殻を加工して再利用。環境対策にも役立っている。

外構工事の先行着手

基礎躯体埋め戻し時に、外構埋設物や側溝・擁壁といった構造物に着手。仕上がり路盤まで完了後、外部足場を組み立てた。本設駐車場も先行施工し、敷地を有効に活用した。

手作りタイヤ洗浄機

敷地内に地盤を掘り下げたタイヤ洗浄用プールを作り、工事車両のタイヤを洗浄。低コストで場内外のクリーンレベルを確保した。

TPMs(※)による「品質開示」(※)

図面や定例会議の資料などのスピーディーなやり取りで、文書管理を簡素化し、紙の使用量も削減。発注者や設計事務所、協力会社との情報共有化を図っている。

※TPMs(トータル・プロセス・マネージメント・システム)。前田建設の登録商標。
※「品質開示」とは、工事の関係者に対して図書などの情報をWeb上にアップして「可視化」すること。

最上川さくら回廊事業

最上川を中心に美しい桜並木づくりをめざす山形新聞と山形放送の事業。2011年春に大森小学校で6年生になる児童98人が集まり、16本の桜(ソメイヨシノ)を植樹した。

東根PFI作業所

所 長

須崎太朗

積極的に仕事を任せて
職員を育て、
品質を確保しました。

職員の平均年齢が29歳という若い現場ですが、現場代理人の経験者が多いので、どんどん仕事を任せています。その結果、各自が責任感を持って取り組み、入社間もない若手職員も後を追うように指導を受け現場に一体感が生まれました。
平面的に広い現場でしたが、一人一人が現場全体を把握できるように、各工種毎に進捗状況図を作成し、工程、製作品の納期管理、施工手順、安全設備が一目でわかるように工夫することで品質、安全、環境、工程、コストの施工管理を向上させ若手職員の管理能力の育成に努めました。
15年間の維持管理を配慮し、躯体の品質から細部の納まりに至るまで、こだわりを持って施工したので、自信を持ってお引渡しできました。

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