東京都勝島ポンプ所流入管渠工事について、発注者である地方共同法人 日本下水道事業団 関東北陸総合事務所 施工管理課 主幹 有留孝之氏は次のように語った。
「日本下水道事業団は、東京都から本事業を受託し施工しています。本事業は2002年(平成14年)から始まり、約10年の歳月をかけて取り組んでいる大規模な下水道整備事業です。
本事業の目的は、品川区内を流れる『立会川流域の浸水対策』と『勝島運河の水質改善』です。近年の著しい都市化により汚水が増加し、また雨水が地下に浸透しない町並みにより雨水の流出量も増大しています。
このため、雨水排水能力を増強すると共に、既設ポンプ所の放流先変更等を行い、浸水対策と勝島運河の水質改善を図るというものです。
この流入管渠は『第二立会川幹線』と『浜川幹線』という2つの雨水幹線を収容した特殊な下水道トンネルで、総合評価方式により前田JVと契約しました。
また、この下水道は、泥水式シールド機でトンネルを施工したあと、上下の規定断面に合わせ水路を構築するという大変珍しい構造になっています。下段には約3㎞先から勾配にしたがって流れる第二立会川流域の水を流し、上段には浜川ポンプ所流域に集まる水をポンプで汲み上げてから流します。二つの流域の水を一緒にすると、浜川流域の低地部に水があふれてしまうので、上下の背割りになっています。
この事業による品川区内の浸水対策と、勝島運河の水質を改善することにより、安全な街づくりと水辺空間の憩いを創設できるものと信じています。
私は、約2年前東京地区の担当になり、前田JVの仕事ぶりを見てきましたが、様々な職種の方が集まる大規模作業場の人たちは、みなプロ意識を持っていると思いました。それは、各所で前田JVの職員のみなさんから協力会社の職長さんに、きちんと意思を伝えており、作業場全体がきっちりと統制管理されている様子が随所でみられるからです。
前田JVには、この事業の重要性をよく理解したうえで、工夫を重ねて品質向上に努め、日本でも世界でも例のない大断面・急曲線のシールドトンネルの施工に取り組んでいただいています。
これまでの一次覆工工事は、シールド掘進が主で機械の性能に頼る部分が多かったのですが、二次覆工では作業員による単調な作業が約3年にわたって続きます。前田JVの厳しい社内安全基準・安全管理にしたがって、無事故・無災害を継続し、我々の要求に応えていただきたいと思います。そして、都民のみなさまのために高品質・高規格の優れた施設をお引き渡ししたいと思っています」。
現在、工事は二次覆工が着々と進んでいる。
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集中豪雨による浸水状況
1時間に75mmという集中豪雨により、23区で床上・床下浸水が500軒を超えた。上流で降った雨が、晴れてから下流に流れ込んだことにより、犠牲者が出た。
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勝島運河の水質汚濁
昭和50年代に公園が造られたことにより、勝島運河は堰き止められ、平和島までパイプでつながれた。運河の水は潮の満ち引きでしか動かないので、水質が悪化している。 |
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