ファンタジー営業部
GRAN TURISMO 4編
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1陸地にタンカーを浮かべる
◇ ◆ ◇ ファンタジー営業部、報告と討議 ◇ ◆ ◇
C主任 で、その後本当に路面性状調査車の前に横になったんですか?
B主任 するかいな。やってもええと思うてたけど、MA部長も本音のところでは真面目やし。
D職員 しかし、ようやく舗装というサーキットのコアに検討が及びましたからね、いよいよ今回はグランドスタンド、やりましょうよ!
A部長 そう思ったんだが、建築設計部さん今、別の大型物件で手が離せないらしいんだ。ちょっと待って欲しいと言うんだな。
B主任 こっちかて大型物件でっせ。いや超大型物件ですがな。
A部長 受注が決まったマンションのオプション対応1)に時間取られてるらしいんだ。
C主任 あれは手間ですからね。元建築設計部員としては待ってあげたいところです。
B主任 ほな、何やりましょか。もうグランドスタンドぐらいしかないんとちゃいます?
D職員 それだったら、あの、僕もてぎでM支配人にご案内いただいて感動したのは、ゴミ処理施設2)だったんです。何十万人のお客様を集めて、そのゴミまでちゃんと処理しようという姿勢は素晴らしいなって。だからあれはどうですか?
C主任 あれを観たときは僕もそう思った。その通りなんだけど、グランバレーは全てにおいて既存のサーキットを超える機能を目標としたでしょ。ゴミ処理施設をあれ以上凄くする方法が思いつかなくてね。
A部長 そこなんだがね、昔「前田推奨オプション」の話をした3)の覚えてるかい?建築設計部の手が空かないなら、先にそれをやりたいと思うんだ。ちょうどゴミ処理の話だから。
D職員 ということは現状のゴミ処理施設のパワーアップ強化型が存在するんですね!
B主任 普通に改良版とか言えんか、そこのアニメファン。
A部長 D君風に言えばランドタンカー式最終処分場・ダブルハル強化型。
B主任 やはり、アニメおたくと鉄道オタクは何か通じるものがあるらしい・・・。
C主任 ダブルハルとかタンカーって、あの海で石油を運ぶ船ですか?
A部長 そう。それによってサーキットに人間以外のお客さんを呼ぶんだ。
B主任 ほな動物でっか・・・なんか部長がムツゴロウさんみたいに見えてきましたわ。
◇ ◆ ◇ B主任、C主任で飯田橋アネックス2Fの土木技術部、
建設環境Grを訪問 ◇ ◆ ◇
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※1)オプション対応: 
最近のマンションではお客様の多様化に併せ、玄関・什器・クロス・フローリングなどの色や材質を幾つかのパターンから選べる物件が多く、そのシステムをオプションと呼んでいる。お客様にお喜び頂けるので施工会社としてやりがいがある反面、気を使う新たな要因の一つである。
※2)ゴミ処理施設:
ここでD職員はもてぎで見たごみ焼却炉と処分場をひとまとめにこう呼んでいるが、本来、処理場と処分場は異なるものであり、本章では以降、処分場(廃棄物を処理後、安定化まで保管するところ)の話を中心に進めていくことをご了解いただきたい。
※3)「前田推奨オプション」の話:
Part04始めの方。
C主任 結局、A部長が最後まで教えてくれなかったんですよ。
B主任 グランバレーの検討ではずっとこんな感じですわ。揚水式発電所の時もそうやし。
O部長 新しいモノを考えるって楽しいし、自身で考えついたモノって愛着あるからね。仕方ないよ。
C主任 ネットで調べたらダブルハルは二重底でしたし、やっぱり何かタンカーに関係あるんですね?
O部長 そう。でもまずは、そもそもゴミ処分場の必要機能や最終目的とは何かから始めないといけないようだな。C主任はツインリンクもてぎの最終処分場、見てきたんだって?
C主任 ええ。遮水シートも施工済で素晴らしいものでした。
O部長 遮水シートに感動したと?
C主任 ええ、汚染物質あるいはそれを含む汚染水が地下浸透しなくてすむから素晴らしいなと。
O部長 それだけでしたか?
B主任 部長〜。2時間サスペンスやないんですから、ちゃっちゃっと行きましょう。
O部長 たまには優越感、感じさせてよ〜。
C主任 最終目的は別にあるっていうことですね。
O部長 廃棄物を早く「安定化」させ、廃棄物処分場を極力短期間に「廃止」することが最終処分場の最終目的さ。
C主任 廃棄物の「安定化」とはおそらく「無害化」ということですね?
 
O部長 いや、安定化と無害化は違うんだよ。処分場でいう安定化とは、ゴミの上に降った雨水はゴミの中を通って集められ、水処理施設できれいにしてから放流されるけど、このゴミの中を通った雨水が水処理しなくても流せる状態になることなんだ。すなわち、有害物質が溶出しなくなることを言うんだよ。だから処分場の中にはまだ有害なものが残っているんだ。専門用語では「溶出しないけど含有している」って言うんだよ。このようにゴミは処分場の中で安定化してゆくものと、何かに吸着させたり、固化させたりして、前もって安定化させたものを処分場にいれるものがあるんだよ。
 
 
B主任 そうなんでっか。具体的にはどないなことしますの?・・・いや、そもそも処分場ってどないなものが運ばれますのかいな?
O部長 そうか、そこから始めなければな。まず最終処分場は一般廃棄物用と産業廃棄物用の二つに分けられる。当社で実績の多いのは一般廃棄物処分場だよ。今回作ろうとしている産業廃棄物処分場については技術的に簡単な順に「安定型」「管理型」「遮断型(←非常に特殊。日本にも数件しかない)」と分かれてる。
C主任 私がもてぎで見学させて頂いたゴミ処分場はどれにあたりますかね。
O部長 遮水工があるということは浸出水に対策しているから「管理型」の産業廃棄物処分場だろうね。
B主任 じゃあ我々が目指すのは「より進んだ管理型」っちゅうわけでっか。
O部長 そうだね。でウチはだな、特に遮水工に工夫が出来るんだ。一般的にはC主任がもてぎで見たような遮水シートやアスファルトフェーシングなどが使われたりするんだけど、それを鋼板でするんだ。
C主任 ずいぶんとオーバースペックなような気もしますね。
   
水色部分が鉄の板です   図版提供:鋼板遮水システム研究会
(C) 前田建設 All rights reserved
   
O部長 これまで実績の多かった遮水シートには傷が入りやすいという欠点があるんだ。鋭利な廃棄物が動いたりしてね。廃棄物をハンドリングする重機自身も原因になったりするし。だから電気を通しそれを測定することで漏水箇所を特定するシステムを建設各社持ってたりする。
B主任 ウチにもあるやないですか。
O部長 そう。だから鋼板遮水も漏水検知システムや補修手間などライフサイクルコストで見れば、決して過剰ではないということさ。それとさ・・・ここでようやくだけど、近年のタンカー、油とか運ぶでかい奴、あれがどうなってるかと言えば・・・。
B主任 車や鉄道に詳しい人間なら身近な所でおるんですけどな。
C主任 それがダブルハルというわけですね。
O部長 そう二重底になっているんだよ。タンカーの衝突・座礁による海洋の油汚染対策でね、義務付けられてるんだけど、これを最終処分場にも適用するのさ。
C主任 いよいよ念入りですねえ。
B主任 それはさすがに過剰でっしゃろ?
O部長 いや、管理型の最終処分場はそもそも二重遮水が義務付けられているんだよ。ここで思い出してほしいのが、さっきの漏水検知システムだね。本物のタンカー同様、二重底の「間」を人間が通れるほどの空間に設定できれば・・・。
C主任 ああそうか。目視で確実に点検できるばかりか・・・
B主任 廃棄物を移動させる手間も無く、簡単に補修ができますな!
O部長 そういう事。だからイニシャルコストは掛かるんだけど、ここグランバレーを最高の持続的サーキットとするなら、是非これやりたいんだよね。
B主任 ・・・どうも今回は2時間サスペンス風な会話になってまうわ。
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2杜氏、グランバレーに現る
B主任 よーう鋼板遮水の凄さはわかりましたわ。でもでっせ、雨が降ったら錆びませんやろか。廃棄物のお茶漬け状態やから汚染水も相当で、防錆処理も効かんとちゃいますか。
O部長 まず防錆の問題だが、これは各種検討により問題ないことを検証している。それ以上にだ、私はグランバレーに持ち込む鋼板遮水はクローズド型にしようと考えている。
C主任 クローズド型?
Closed=ま、屋根かけるって事でんな
(C) 前田建設 All rights reserved
   
B主任 なるほど、理屈はわかります。屋根架けりゃ完璧でんな。しかし解らんのはこれ、安定化に問題ありまっしゃろ?屋根架けてしまえば太陽光は届かず、風も抜けず、暗くジメジメしてカビ生えそうでっせ。なかなか安定化せんとちゃいますの?
O部長 逆、逆、逆。その環境が良いんだよ。安定化ってどうやって行っているかまだ解ってないね。
B主任 殺菌といえばお日様でしょう。あるいは燃せばいい思うてます。洗ってもええかな。
O部長 それは洗濯とか住宅を長持ちさせるコツとか、そういうレベルでしょう。廃棄物の安定化はまず土壌菌だよ。バクテリア。有機系廃棄物はこれだな。
C主任 それならクローズドは良さそうですね。
O部長 クローズド処分場の原点は単純に、廃棄物を表に出さないようレジャー施設や公園の下に地下ないし覆工をかけるイメージで無人の処分場を作りたいという要求から始まったんだ。景観を乱さないし、臭気も押さえ込める。上部空間を有効利用できるしね。ところがそれ以上に大きなメリットがあるんだな。それは廃棄物に当たる雨=水の量を自由にコントロールできることなんだな。さっき、安定化は菌だと言ったけど、一方で洗濯のような水による洗い出しも確かに安定化の方法なんだ。
B主任 なんや、合ってたやないですか。
O部長 そうだ。しかし台風や大雨の時など必要以上の水が処分場の中に流れ込むから、それに対応した水処理施設の能力は相当大きくなってしまう。イコール初期コストが大きくなってしまう。自然の降雨は洗い出し効果に適してるんだけどね。
C主任 そのあたりは部分屋根とか開閉式屋根とか、色々工夫できそうですね。また屋根がつくことでドーム球場と同様に温度管理も可能なわけですね。
   
O部長 それも有利だね。温度も高い確率で安定化に影響していると思うね。水の話に戻れば、廃棄物の中を水が通過する際に集中してしまうと洗い出しの効果が限られてしまうよね。菌による安定化でも上手くない。つまり水道(みずみち)5)を作らないのも重要だ。だから自然界と同様、雨のごとく上から散布するのでなく、廃棄物の中にパイプを通しわざわざ分散散布する方法の開発も進んでいるところだよ。
 
※4)みずみち:
文字通り水の流れる道。建設会社的には地表面や土中における水の流れるルート=みずみちが集中すると、そこが脆くなるのでよくない。
B主任 その土壌菌いうのは水さえあれば育つんでっか。
O部長 空気が必要だね。好気性の菌というんだ。それから養分も必要だよ。そして汚泥や土壌を「耕す」とより一層効果的だね。本当にね、バックホウとかでね。
C主任 もはや農業ですね。
B主任 酒作りと一緒や。
O部長 菌、湿度、そして土の返し具合。まさに酒造りだね。杜氏)6の感覚が必要なわけだ。
B主任 これ、施工実績はあるんでっか?
O部長 一軒あるよ。ただしダブルハルではないけどね。鋼板とアスファルトコンクリートの二重遮水構造だよ。
 
※5)杜氏(とうじ):
酒つくりの職人、特に酒造会社での醸造に関する責任者を指す事が多い。
 
ずいぶんと処分場のイメージが変わります
(C) 前田建設 All rights reserved
   
B主任 廃棄物の安定化が確認できたらどうなりますの?
O部長 単純に言えばそのまま処分場を廃止さ。処分場は一刻も早い閉鎖・廃止が目標だからね。ただクローズド処分場で安定化させ、また別の場所に運ぶと言う選択もあるかも知れないが。
C主任 先程、有機系廃棄物なら土壌菌という話でしたが、他にはその土壌菌は使えないのですか?
O部長 土壌の油汚染には適用できる。これまた洗うという方法もあるけどね。どのような土壌菌および管理を行うか、鋭意研究中だよ。在来種という従来からその土にいる菌では限界があるので外来種の菌を用いて行おうとする動きもある。
B主任 これまたクローズドが有利そうでんな。
O部長 そうね。圃場を用意して、菌の状態を鑑みながら場合によっては水で薄めながら撒いて分解を促す。そういう分解牧場が必要だから、これまたいろいろコントロールできたほうがいいだろうね。どうだい、レースにつきものの油関係廃棄物も、全部内部処理できるわけだ。
B主任 分解できないゴミも色々ありますけどな、それはどないなります?
O部長 処分場を幾つか区切って保管するのがいいだろうね。無機廃棄物、有機廃棄物、粗大ゴミ・破砕残渣などに分けてさ。それから焼却灰はダイオキシンの影響で分別管理が必要だし、それから煤塵はキレート処理(専用溶液洗浄)の上、セメント固化し保管するしかないからね。区切って保管しておけば、将来そのゴミが宝の山になるかもしれない。
C主任 グランバレーからはクラッシュした車の残骸も含めゴミは一切外に出さないばかりか、将来は資源採掘場になる可能性も持たせるわけですね。まさに真の循環型理想系・・・。
O部長 君達も映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、タイムマシンの燃料がプルトニウムから何に変わったか、見たことあるだろ。あれと同じことが起きるかもしれない。
C主任 この情熱をお客様がわかってくれればいいですね。
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3人間以外のお客様!?
B主任 ほなO部長は具体的にグランバレーの何処へ鋼板遮水クローズド処分場をつくりまっか?
O部長 目をつけているのは2つある。まずはここ。
え、確かに屋根っぽいですが、まさか、ここ?
(C)2004 Sony Computer Entertainment Inc.
   
O部長 これだけ大きな屋根になるものは、グランバレーに他にない。
C主任 座ってる下が最終処分場・・・お客さん気になりませんかね?
O部長 今、さっき最終処分場のメリットを話したばかりだろう?匂いや見た目は大丈夫だ。上部空間の有効利用から考えてもここしかない。
B主任 も一つは?
O部長 地下だ。N部長に聞いたのだが揚水式発電所をオプション化するんだろ?
C主任 ええ、そうするつもりです。
O部長 それなら発電所の横にでもついでに空間作っておいてよ。さまざまな作業坑もあるから、廃棄物の搬入も簡単だし。もし発電所を施主さんが作らない場合は、あのトンネルを利用する。
B主任 え、トンネルて、コースの?
O部長 そう。無粋な坑口を新たに作るとグランバレーの美しい景観を汚すから、コースのトンネルから新たなトンネルを掘り、そこを鋼板遮水を施工してクローズド処分場にする。
C主任 じゃあもし揚水式発電所が受注されたら当然、作業坑も既存のトンネルから延ばせばいいわけですね。
O部長 その通り。
B主任 なるほど、そうしましょ。収まりが美しいですわ。
      (しばし沈黙)
C主任 ・・・で、部長。A部長の言っていた人間以外のお客さんってなんだったんでしょうね。
O部長 あれ、まだわかんないか?もう出てきてるじゃない。
B主任 ・・・そうかな、思うてましたけど、やはり廃棄物でっか。
O部長 このサーキットは近くに新宿規模の都市があると言うじゃないか。だったら廃棄物処理は大変なビジネスになる。彼ら(=廃棄物)はレースに興味はないが、レースの騒音に全く不満を言わずにサーキットに定住してくれる数少ないお客さんでもあるんだよ。だからこそ、きっちりした安定化ができる最高の処分場が必要で、ぜひ今回のお施主さんには選択して欲しいんだ。持続的な社会の構築にも寄与できるんだ。どこかに捨てなければならないのは事実だからね。
B主任 処理費ってそんなにかかってますか?
O部長 おいおい君らしくもない。残土処分費くらい知ってるだろう。そのオーダーだけ思い出してみろよ。ましてもっと厄介なものも受け入れるわけだからね。
C主任 3あたり一万円としても・・・なるほど凄い収入だ。
O部長 A部長はグランバレーの経済的持続を集客だけに求めるのはリスクが高いと、かなり悩んでいたようで、遂にこんなアイデア持ってきたよ。
B主任 よし!これで経済面のリスクヘッジができたことやし、これで複合化に走らず、モータースポーツの魅力を集中して追及できますわ!
   

こうしてグランドスタンド下が廃棄物処分場になるかもしれなくなったGrand Valley Speedway。その採否はお施主さんにお任せするとして、ようやく次回より本来の使命、モータースポーツファンのための、魅力アップを実現するグランドスタンド等主要設備の検討に入ります。果たして前田建設はどのような施設を提案していくのか。

次回ファンタジー営業部 GT4編 「Part 08・・・・・・」は、誠に恐縮ですが、担当者都合により来月は本編更新をお休みさせていただき、久しぶりに「番外編この人に聞く」をお届けいたします。12月27日(火)公開予定。

“The Drive of Their Dreams”
   


(c)2004 Sony Computer Entertainment Inc.
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