2023年09月11日「自動装薬システム」を山岳トンネル工事現場にて実証
~切羽とドリルジャンボ操縦席間を無人にした装薬作業は業界初~

<概 要>
インフロニア・ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、社長:岐部一誠)グループの前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治、以下「前田建設工業」)と株式会社前田製作所(本社:長野県長野市、社長:塩入正章)は、古河ロックドリル株式会社(本社:東京都千代田区、社長:山口正己、以下「古河ロックドリル」)、アスラテック株式会社(本社:東京都港区、社長:酒谷正人、以下「アスラテック」)、カヤク・ジャパン株式会社(本社:東京都墨田区、社長:谷口弘幸、以下「カヤク・ジャパン」)、ブレインビジョン株式会社(本社:東京都板橋区、社長:市川道教)の協力で開発を進めている発破装薬時の自動化技術「自動装薬システム※1」を実際のトンネル工事現場に適用して実証試験を行いました。(写真-1)


写真-1 無人の切羽で装薬作業を行う様子

 

<背 景>
一般的な装薬方法は、5名程度の作業員が切羽直下に立入り、数多くの装薬孔に火薬類(親ダイ、増ダイ、込物の順)を人力で装薬します。このような装薬作業中に切羽から落下した岩石が作業員に激突する、切羽肌落ちによる重篤災害が後を絶ちません。
切羽肌落ち災害は山岳トンネル特有の労働災害であり、統計上、鋼製支保工建込みや装薬作業中の被災事例が最も多いのが現状です(全体の約8割)。厚生労働省が策定した「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン(2018年1月改定)」においては、機械化による事故防止対策が要望されています。そこで、前田建設工業は切羽に作業員が立入ることなく、運転席からオペレータ1名の操作のみで装薬が可能な「自動装薬システム」を開発し、2022年に同社のICI総合センター(茨城県取手市)に建設した模擬トンネル(2022年1月竣工)にて実証試験を実施し、本システムの基本性能を確認しました。
今回は本システムを実際のトンネル工事現場に適用し、装薬~発破までを行った実証試験です。切羽とドリルジャンボ操縦席間、約15mの範囲を完全に無人にした状態で自動装薬を行った実証試験は業界初となります。

 

<実証試験>
本システムの主な構成は図-1の通りとなっており、下記のフローで自動装薬が実行されます。
1.全自動ドリルジャンボ(「ROBOROCK」:古河ロックドリル製)の削孔データ(座標、角度、深さ)を元に、指定した孔にブームを自動制御してセット
2.孔位置検出システムにより、装薬孔の中心座標を特定
※削孔データによるブーム自動制御の場合、上下左右に50mm程度の誤差が出ることが分かっているため、孔位置検出システムを開発して本システムに実装
3.位置合わせ機構が親ダイ供給装置から親ダイをピックアップし、特定した孔位置の中心座標に自動的に位置合わせを実施
4.送り出し機構にて、削孔長に合わせて設定されたストローク分、装薬孔に挿入
5.装薬パイプからエアブローを送り込み、親ダイを孔内に残置すると共に湧水を排出
6.増ダイ供給機構(ランデックス装填機を自動制御したもの)から装薬パイプを通じて粒状爆薬(ランデックス)を孔内に密装填
※これらはアスラテックの「V-Sido」により制御を行っています
 


図-1 自動装薬システムの主な構成

 


本現場実証で確認できた成果は以下の通りです。
【孔位置検出システム】
・    実際のトンネル工事現場環境において孔位置の検出ができることを確認(写真-2)
【位置合わせ機構】
・    孔位置検出システムで特定した座標に位置合わせできることを確認(写真-3)
【送出し機構】
・    ストロークを制御し、エアブローによって孔奥へ親ダイを装薬できることを確認
【増ダイ供給機構】
・    粒状爆薬を装薬パイプから孔内に装填し、密装填ができることを確認(写真-4)
【自動装薬親ダイ用先端コーン】
・数ミリの孔ズレにも追従し、孔荒れにも引っ掛かることなくスムーズに装薬できることを確認
【システム全体】
・    各機構の連携により自動で装薬孔(φ45mm,L=1.5m)に親ダイおよび増ダイを装薬(写真-4)でき、その後、実際に発破するところまでを実切羽において確認
 


写真-2 孔位置検出システムによる検出

 


写真-3 位置合わせ機構による位置合わせ

 


写真-4 実切羽において親ダイおよび増ダイ(粒状爆薬)を装薬

 

<今後の予定>
この度、前田建設工業の山岳トンネル工事現場にて実証試験を実施し、実際の現場環境における本システムの基本性能を確認しました。今後、本システムの完成度を向上させ、専用機の開発を進めるとともに、実用化に向けた技術開発を推進していきます。前田建設工業は、自社開発した全自動鋼製支保工建込ロボット技術※2と本技術、また共同開発として取り組んでいる吹付ナビゲーションシステム※3や古河ロックドリルの保有技術BOLTINGER※4を組合せることにより、切羽周辺における作業の自動化を実現し、社会的課題である切羽肌落ち災害撲滅と技能労働者不足に対処すべく生産性向上に引き続き取り組んでまいります。

※1 2022年9月12日発表:https://www.maeda.co.jp/news/2022/09/12/5360.html
※2 2022年9月6日発表:https://www.maeda.co.jp/news/2022/09/06/5338.html
※3 技術概要:https://fts-ltd.jp/news/hercules-navigator/
※4 技術概要:http://www.furukawarockdrill.co.jp/products/drilljumbo/pdf/B22RL-J2303-F5.pdf

 

<用語の説明>
・    ドリルジャンボ:発破削孔やロックボルト削孔が可能なトンネル専用の削岩機
・    ガイドセル:ドリルジャンボのアーム部
・    装薬 :火薬類を装填すること
・    親ダイ:発破孔最奥に装填される雷管を取り付けた起爆用爆薬
・    増ダイ:親ダイに続いて装填される爆薬
・    込物 :増ダイに続いて装填する粘土や砂
・    V-Sido:アスラテックが展開するロボット制御システム
・    ランデックス:カヤク・ジャパンが展開する水孔でも起爆可能な粒状含水爆薬
・    ROBOROCK:古河ロックドリルが展開する全自動ドリルジャンボ

 

<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp
 

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