2022年09月12日山岳トンネル自動化技術 「自動装薬システム」 を開発(特許出願中)~発破装薬における切羽立入作業ゼロの実現へ~

<概 要>
 インフロニア・ホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、社長:岐部一誠)グループの前田建設工業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:前田操治、以下「前田建設工業」)と株式会社前田製作所(本社:長野県長野市、社長:塩入正章)は、アスラテック株式会社(本社:東京都港区、社長:酒谷正人、以下「アスラテック」)、カヤク・ジャパン株式会社(本社:東京都墨田区、社長:横山真一郎、以下「カヤク・ジャパン」)、古河ロックドリル株式会社(本社:東京都千代田区、社長:荻野正浩、以下「古河ロックドリル」)の協力で、発破装薬時の自動化技術「自動装薬システム」を開発しました。
 この度、前田建設工業のICI総合センター(茨城県取手市)に建設した模擬トンネル(2022年1月竣工、写真-1)にて実証試験を実施し(写真2~3)、本システムの基本性能を確認しました。
 


写真1 ICI総合センター模擬トンネル全景

 

<背 景>
 一般的な装薬方法は、5名程度の作業員が切羽直下に立入り、数多くの装薬孔に火薬類(親ダイ、増ダイ、込物の順)を人力で装薬します。このような装薬作業中に切羽から落下した岩石が作業員に激突する、切羽肌落ちによる重篤災害が後を絶ちません。
 切羽肌落ち災害は山岳トンネル特有の労働災害であり、統計上、鋼製支保工建込みや装薬作業中の被災事例が最も多いのが現状です(全体の約8割)。厚生労働省が策定した「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン(2018年1月改定)」においては、機械化による事故防止対策が要望されています。そこで、前田建設工業は切羽に作業員が立入ることなく、装薬可能な「自動装薬システム」を開発しました。
 


写真2 ICI総合センター模擬トンネル内 ドリルジャンボ配備状況


写真3  ICI総合センター模擬トンネル内 実証試験状況

 

<詳 細>
 本システムは、ドリルジャンボのガイドセルに搭載し、①親ダイ供給機構、②位置合わせ機構、③送出し機構、④増ダイ供給機構で構成しました(図1、写真4)。上記機構自体の動作や各機構の連携動作については、アスラテックの「V-Sido」により制御を行いました(写真5)。親ダイは紙巻含水爆薬と導火管付き雷管(非電気式雷管)の組合せとし、先端コーン(位置合わせ誤差・孔荒れ対策)と紙管(収納・把持機能)に内包してカートリッジ化しました(写真6)。増ダイは粒状爆薬(写真7)にすることで、エア圧送による機械装填を可能とし、密装填効果により込物の省略を可能にしました。
 


図1 自動装薬システム


写真4 ④増ダイ供給機構(従来機を自動制御)


写真5「V-Sido」による制御画面


写真6 自動装薬用親ダイ


写真7 粒状爆薬例(「ランデックス」:カヤク・ジャパン製)
 

<実証試験>
 本システムを搭載したドリルジャンボを模擬トンネル内に配備し、一連動作の実証試験を実施しました(写真8)。


写真8 一連動作の実証試験状況
 

実証試験の結果は以下の通りです。
 

【親ダイ供給機構】
 ・50本の親ダイ(1~10段×5本)を供給可能(3ブーム×50本=150本供給可能)
【位置合わせ機構】
 ・センサーやカメラで装薬孔φ45mmを認識し、パイプ位置合わせや角度合わせが可能
【送出し機構】
 ・親ダイ供給機構から自動装薬用親ダイの取出し、および、孔奥への親ダイ装薬が可能
【増ダイ供給機構】
 ・含水爆薬やANFO爆薬を想定した粒状爆薬を装薬孔内に隙間なく装薬が可能
【システム全体】
 ・各機構の連携により自動で装薬孔(φ45mm,L=1.0~2.0m)に親ダイ・増ダイを装薬可能

 

<効 果>
 全自動ドリルジャンボ(「ROBOROCK」:古河ロックドリル製)と本システムを搭載した自動装薬機をデータ連携することで、運転席からオペレータ1名の操作のみで削孔から装薬の自動化を実現します。これにより、作業員が切羽に立入ることなく装薬作業をすることが可能となり、発破作業の安全性向上および生産性向上が期待できます。
 

 この度、前田建設工業のICI総合センターに建設した模擬トンネルにて実証試験を実施し、本システムの基本性能を確認しました。今後、本システムを現場に導入し、現場適用・検証を進めるとともに、全自動化の技術開発を推進します。前田建設工業は、自社開発した全自動鋼製支保工建込ロボット技術※1と本技術を組合せることにより、社会的課題である切羽肌落ち災害僕滅と技能労働者不足に対処すべく生産性向上に引き続き取り組んでまいります。

 

※1 2022年9月6日発表:https://www.maeda.co.jp/news/2022/09/06/5338.html 

 

・ドリルジャンボ:発破削孔やロックボルト削孔が可能なトンネル専用の削岩機
・ガイドセル:ドリルジャンボのアーム部
・装薬:火薬類を装填すること
・親ダイ:発破孔最奥に装填される雷管を取り付けた起爆用爆薬
・増ダイ:親ダイに続いて装填される爆薬
・込物:増ダイに続いて装填する粘土や砂
・V-Sido:アスラテックが展開するロボット制御システム
・ランデックス:カヤク・ジャパンが展開する水孔でも起爆可能な粒状含水爆薬
・ROBOROCK:古河ロックドリルが展開する全自動ドリルジャンボ

 

<問い合わせ先>
前田建設工業株式会社
経営革新本部 広報部
E-Mail:maeda-release@jcity.maeda.co.jp

 

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