調達に関する取り組み
方針・考え方とマネジメント
当社では、インフロニアで定めている「インフロニアグループサステナビリティ調達方針」および「インフロニアグループサステナビリティ調達ガイドライン」に則り、直接的、または間接的な取引先と、互いの立場を尊重し良きパートナーとしての関係を構築し、サプライチェーン全体でのサステナビリティの実現と付加価値創出をめざしています。
建設事業で調達する製品は大量かつ多種多様であり、グローバル化により原料の採取地や加工場所も国内外の多岐にわたります。そこで調達分野の方針として「公正で自由な競争と適正な取引に努める」を掲げています。これは、地球環境や地域に与える影響の大きさを勘案し、価格や品質だけでなく、環境課題や社会からの要請への取り組みも選定の項目とすることにより、バリューチェーンでの環境や社会に関する課題解決に向けた価値創出の取り組みを行うためです。調達に関する段階としては下図のようなものがあります。株主や社員はもちろん、建設物のユーザー、原料採取や工場、建設現場で働かれている方、近隣地域の方などに加え、温暖化や生物多様性、循環・サーキュラーエコノミーなどに関連する地球や、未来もステークホルダーととらえているのが当社の特徴です。
特に当社が重要と考える製品、サービスは、「供用・維持管理」での貢献から再生可能エネルギー製品、「原料の採取と輸送」での影響の大きさから木材製品、同じく「原料の採取と輸送」「工場」「流通・運搬」の影響の大きさから第三者認証製品があげられます。当社が年間に調達している製品やサービスは3,238億円(2023年度)あり、この分野で取り組むことにより、市場のシフトチェンジに貢献していきます。また当社は建設現場の施工に協力いただく、協力会社のうち、主要な約600社と「前友会」を組織しています。前友会では、総会の他、定期的に安全環境部会を開催し、安全活動に関する活動方針の策定などを行っています。さらに全国12支部でも支部総会、安全大会等の開催、安全環境部会の運営など自主的な安全管理を行うとともに、当社との意見交換を行うことによりS(安全)だけでなく、Q(品質)、D(工程)、M(モラル)、E(環境)の向上に努めています。
2023年度は約500社から1,269億円の製品やサービスを調達しました。

調達規程に基づくサプライヤー管理の体制やしくみ
企業行動憲章の宣言のもと、調達業務に関する具体的な内容やマネジメント体制を「調達規程」として2008年に定め活動を行っています。公正な取引先選定の確認のため、一定金額以上の取り引きは、事業本部から独立した調達部を設立し、配置された20名がチェックを行った後、経営層の決裁を受けています。また、取り引き内容を記載するデータベースを構築し、調達部が管理を行い、とりまとめた後、経営層へ報告しています。既存の取引先には、取引終了時に土木外注査定データベースを使用し、「品質」や「工程」「安全」だけでなく、「環境への取り組み」についても評価を行っています。新規の取引先には、新規取引時に提出していただく「取引参加申込書」の評価事項に、「人権・労働・競争への取り組み」「社会貢献への取り組み」「環境への取り組み」「情報安全への取り組み」などを組み込み、各プロセスにおける課題解決に向け、活動を推進しています。
同様に取引先継続評価にも「人権・労働・競争への取り組み」「社会貢献への取り組み」「環境への取り組み」「情報安全への取り組み」を組み込んでおり、2023年度は143社のサプライヤーに対して継続評価を実施しました。
調達部員が主要サプライヤーの工場検査に赴き、品質や人権、労働、社会貢献、環境などへの取り組みの現地、現物を確認しています。またその際には、工場長などサプライヤーの現場責任者の方に直接、グリーン調達の方針(EPD認証製品の推進等)を伝えています。

また、建設業界では、現在、就労者の高齢化と入職者の減少、事業継承の困難さといった要因から、著しい担い手不足という課題を抱えています。
この解決に向け、当社は建設技能者の処遇改善に努めています。
当社は(一社)日本建設業連合会の「労務費見積り尊重宣言」に基づき、令和2年1月16日より見積書の提出依頼にあたり労務費を明示することを要請し、これをもとに建設技能者への適正賃金の支払いが行われるように指導・推進しています。
※EPD認証製品:Environmental Product Declaration の略で、環境製品宣言と訳します。
製品がライフサイクルで与える環境影響を情報開示し、第三者認証を受けたものを指します。
MAEDAグリーン調達規則に基づく目標設定と実績
2012年に「MAEDAグリーン調達規則」に定め、抜粋版を「MAEDAグリーン調達ガイドライン」として社外に公表し、取引先に「環境数値データの収集」「環境管理規格等取得の推奨」「優良業者の社内表彰制度への推薦」を要請しています。グリーン調達集計品目をEPD認証製品など30品目選定し、採用を推進して実績を集計しています(マテリアルフロー)。
実績
再生可能エネルギーは事業の上流や下流にも関わる事業者としても取り組んでいます。建材はサプライヤーを通じて購入しており、当社が原材料の採取に直接関わることはありませんが、木材等の製品では原材料の抽出地情報の収集や、環境に配慮した土地の利用の有無の確認などをサプライヤーに行っています。また「原材料の採取」や「加工」「流通・運搬」の環境負荷低減に関しては、第三者認証製品の取り組みを通じて、ライフサイクルでの環境負荷の把握に努めています。
2023年度は調達部員が国内外にあるサプライヤーの工場33箇所のモニタリングを行いました。品質や生産量などはもちろん、環境や人権、労働などへの取り組みの視点で実施しています。
グリーン調達率
グリーン調達集計30品目のうち、11品目について、数値目標を掲げています。目標値55%以上に対して2023年度のグリーン調達率は54%でした。
温室効果ガス(スコープ3)
バリューチェーンでの温室効果ガス排出量を算定・報告するために、スコープ3の算出を行っています(下図参照)。調達に関するものとしては「カテゴリー1:購入した製品・サービス」、「カテゴリー4:輸送、配送(上流)」があります。2023年度の「購入した製品・サービス」の排出量は666千t-CO2、「輸送、配送(上流)」は3.5千t-CO2となりました。

再生可能エネルギー製品
低炭素(脱炭素)社会に向け、再生可能エネルギーのコストダウンが課題になっています。そこで、全国展開している建設会社としての強みと、事業主として再生可能エネルギー事業を手掛けているノウハウを活用し、太陽光発電や風力発電の集中購買と海外製品を含めた適正な競争を促進しています。価格だけでなく、完成後の発電効率など、事業全体の視点で取り組んでいます。2023年度は5.6kW分の製品を調達し、再生可能エネルギーの増加に貢献しました。

木材製品(国産、間伐材、リサイクル製品)
自然共生社会に向け、森林を適切に利用しながら維持することが求められており、木材の建設材料としての拡大が望まれています。当社では国産材、間伐材採用を推進しています。合法性の確認のために、輸入木材の原料採取地や、法令の解釈や遵守への取り組みのヒアリングを行いました。また、発注者からの合法性木材に対するヒアリングにも対応しております。2023年度は15㎥の国産木材を調達しました。
循環型社会に向け、集合住宅などの床材などに使われるパーティクルボード(木質系廃棄物などをリサイクルした製品)の調達先と木材廃棄物の委託処理先を関東地域では1社に集約しています。2023年度はパーチクルボード約28t購入に対し調達した2,130%にあたる595tをこの取引先と行いました。つまり、自社で調達した製品の主原料の全てを自社から排出した廃棄物のリサイクルでまかなったことになります。
第三者認証製品(EPD、Cradle to Cradle)
EPD(Environmental Product Declaration);環境製品宣言とは、製品の一生涯の環境影響がどうなっているかを算定し、第三者が認証した製品を言います。2023年度はEP認証を取得した製品を全体で54億円分調達しました。
Cradle to Cradle認証製品は、製品の安全性はもとより、材料・水・エネルギー資源を無駄なく効率よく使用し、生産・使用・使用後にゴミが生み出されない、自然の循環にそった持続的で再生可能な循環生産社会の実現を目指す国際認証システムです。
ICI※ラボエクスチェンジ棟でのLEED認証への取り組み
特集でご報告しているICIラボで調達の取り組みを行いました。
「ICIラボ」を構成する4つの施設のうちのひとつ「エクスチェンジ棟」は、BELS認証制度(建築物省エネルギー性能表示制度)の「☆☆☆☆☆」、かつ『 ZEB 』という最高ランクの第三者認証(2018年3月)や、CASBEE(建築環境総合性能システム)においても最高となるSランクの評価認証(2018年9月)を取得、さらに国際的な建築の環境性能評価システム「LEED V4 BD+C New Construction」の最高評価となるプラチナ認証を、設計、施工、調達および技術研究所(現・ICI総合センター)のメンバーが連携し、国内第一号で取得しました。
調達に関連するLEED V4のクレジットとしては、「Building Product Disclosure and Optimization - Environmental Product Declarations:建材の情報開示と最適化-製品の環境情報の明示」があります。ライフサイクルでの環境情報を開示している製品を推奨する意図があります。EPD認証製品を5社20製品以上、建築物に採用するとクレジットが取得できるというものです。EPD認証製品を調査した結果、日本で購入できる製品は20製品に満たず、クレジットの取得が難しいことが分かりました。そこで、当社はEPD認証製品を自社のグリーン調達品に選定し、取引のある建材メーカー50社以上と協議を重ね、EPDの新規取得を依頼しました。その結果、11社が協力を表明し、19製品が新たにEPD認証を取得しました(下図赤枠製品参照)。既存で取得していた7社10製品を加え、18社29製品(コストベースでは、採用製品額の18%)のEPD認証製品をICIラボエクスチェンジ棟では採用しています。
※ICI:Incubation(孵化)×Cultivation(育成)×Innovation(革新)

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今後の展開
ウクライナ情勢などによる物価高騰の対応課題も抱えておりますが、2024年度も引き続き、2020年4月1日に改定された当社の企業行動憲章にある「脱炭素社会とサーキュラーエコノミーの実現に貢献します」を受け、またISOの規格化も検討されており、社内外からの要請であるサーキュラーエコノミーの実現に向け、廃材と資源の境を超える可能性をサプライヤーと共に探っていきます。
また、総合インフラサービス企業として、単に技術の実装だけでなく、プラットフォームリーダーとしての貢献の可能性も探っていきます。




矢崎エナジーシステム㈱
電線:設備電材
電線が廃棄処理されたときに環境に与える影響を抑え、鉛やハロゲンを含まず、耐燃性を有し、リサイクルし易い材料で構成されたEM電線です


㈱川島織物セルコン
カーペット:床仕上材
床からECOとして、開発・製造・施工・回収・再生まで一貫した循環システムによるエコプロジェクトを実施。廃PVC(ポリ塩化ビニル)リサイクル循環システム「e-RECYCLED」の実現により、回収された廃PVCをタイルカーペット・PVCタイルとも再資源化し、リサイクルバッキングとして使用、エネルギーもCO2排出量も大幅に削減しています


吉野石膏㈱
石膏ボード:壁、天井等下地材
石膏ボードの原材料のうち大部分は再資源の活用であり、資源循環型製品の優等生です。原料石膏の7割近くが、他産業の生産工程で排出された硫黄分を回収した副産石膏であり、それに一度製品化した石膏ボードを市場から回収・再原料化したリサイクルボードを加えると、平成26(2014)年度の実績では、原料の63%が再資源化品です。更に、年間約20万t使用している石膏ボード用原紙は、段ボールや新聞等の回収古紙をほぼ100%使用しています


大日本塗料㈱
パウダーフロンSELA:外装塗料
粉体塗料の特長であるVOC削減などの環境対応や経済性、合理化・省力化はそのままに、LCC削減を図る長期耐久性など外装建材向けとして必要項目全てにおいて優れています。特に耐候性は、1コートで塗膜上層にふっ素樹脂のクリヤー層が形成されるため、従来の熱硬化形ふっ素樹脂粉体塗料を上回るだけでなく、ふっ素樹脂クリヤーを塗装した2コート仕様と同等レベルになる可能性があります


AGCコーテック㈱
水性フッ素樹脂塗料ボンフロン:外装塗料
ボンフロンは、フッ素樹脂ルミフロンの高い耐候性により長期間にわたって下地を保護し、塗装の美しさを保ちます。その優れた耐久性は実験室レベルの検証だけでなく、1983年の発売以来の施工実績で実証されています。塗装が長持ちするので従来の塗料に比べ塗り替え回数の大幅な削減が可能になり、維持管理のための生涯費用(ライフサイクルコスト)の低減が実現します


センクシア㈱
OAフロア:床下地材
ウッドコア素材で軽量のため、「躯体への負担を軽減」「物流・施工効率が向上」します。内部パーティクルボードに100%再生木材を使用した地球に優しいエコ商品です。「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」等の国産木材の使用によるCO2排出削減に対応可能(オプション)廃棄時に分別によるリサイクル可能です


㈱LIXIL
シーガルステップ:外壁システム
自然の風を利用して建物に風を取り入れる換気システムで、電力を使わない効果的な換気で室内環境の向上とともに省エネと環境保全に有効です


東芝エレベーター㈱
エレベーター:昇降設備
標準形マシンルームレスエレベーター「SPACEL-GRⅡ」の住宅用タイプ(13人乗り、速度45m/分、3階床停止)でEPDを取得。省エネ性能、環境性能に優れています


日本板硝子㈱
ガラス:外壁・内壁材
外壁に採用したのは、Low-E複層硝子です。Low Emissivity(ロー・エミシビティー)の略で、『低放射』という意味です。通常のガラスよりも断熱性能が高く、少ないエネルギーでの空調に貢献します


東京鉄鋼㈱
ネジ鉄筋:構造材
「ネジテツコン」は、専用の「継手(つぎて)」を使うことで、ガス圧接せず機械的に鉄筋同士を接合できるという特長を持っています。そのため、専門の職人以外でも簡単に作業ができます。鉄スクラップが主原料のリサイクル製品である電炉鋼材です


東京製鐵㈱
H鋼:構造材
「低炭素社会」「循環型社会」の実現を柱とし、低炭素・循環型鋼材である電炉鋼材の供給を通じて日本のCO2排出量の大幅な削減、貴重な鉄スクラップの国内での更なる有効利用を通じて資源効率性向上を図り、「2050年のあるべき社会」を実現するというビジョンを掲げています。鉄スクラップが主原料のリサイクル製品である電炉鋼材です


池上産業㈱
アコヤウッド:外構材
銅などの金属を含む薬剤を注入した防腐処理木材に代わる、環境と人に優しく水質を害さない防腐木材として、”木材のアセチル化処理”という技術で長期使用が可能になった木材です。原料の開示認証であるC2C認証も取得しています


東京ボード工業㈱
パーティクルボード:床下地材
かつては合板工場や製材所から発生する副産物を原材料に使用していましたが木質廃棄物を使用するにあたっての課題、異物の混入・接着不良・品質の不安定…これらをすべて解決しほぼ100%木質系廃棄物を原料としたリサイクル製品です


Shaw
カーペット:床仕上材
EcoWorxバッキングや、Eco SolutionQナイロンなどの耐久素材を使用することで、繰り返しリサイクル可能な美しいカーペットの製造が可能になります。環境問題解決への取り組みにより、米国環境保護庁のPresidential Green Chemistry Award を受賞しています


Inter Face
カーペット:床仕上材
ミッション・ゼロという、インターフェイスの地球環境に与える負荷をゼロにするという約束を掲げています。使用済みカーペットの回収・リサイクルプログラム」を構築。これは、インターフェイスのタイルカーペットを購入した顧客に対し、以前に使っていたタイルカーペットを回収し、再生原料としてリサイクルするプログラムです。このプログラムにより、顧客は産廃として埋め立て廃棄するか、リサイクルするかを選ぶことができるようになりました


FORBO
リノリウム:床仕上材
フォルボのリノリウム床材:マーモリウムは亜麻仁油を始め天然ロジン、木粉など天然の材料から製造されており、その工程においても安全なクリーンエネルギーが使用されています。廃棄時に埋めれば土に還る生物分解性があります。マーモリウムの製造時、約43%はリサイクル材を使用しています


千代田ウーテ㈱
アクアパネル:壁材
無機材料から製造され、水やカビに強いAQUAPANEL®Cement Board Indoorは、本物の軽量製品です。曲がった壁にも優れた柔軟性を持ち、取り扱いが簡単で設置が簡単です。安全に使用でき、衛生的で、持続可能な材料から製造されています


㈱オカムラ
椅子:オフィス家具
EPD認証を取得している提携先の海外製品を採用しています